水曜日は「予防接種講座の日」。なぜなら予防接種に使うワクチンは液体(
水)だから・・・。
こども診療所では今年も10月からほぼ年内いっぱいの予定でインフルエンザの予防接種を行います。
接種についての詳細は9月25日掲載の記事「2017-2018インフル予防接種」をお読みください。
このページは予防接種講座として「インフルエンザ予防接種」の理解を深めていただくためのものです。
《インフルエンザワクチンの組み合わせ》現在のインフルエンザワクチンはA型に対して2種類のウイルス株、B型に対しても2種類のウイルス株が使われています。
ウイルス株は生きたホンモノのウイルスです。これを培養によって大量に増殖させて弱毒化し、精製したものがワクチンとなります。ワクチンのもとになるので「株(かぶ)」と呼ばれています。
皆さんご存じのようにインフルエンザウイルスはどんどん変異を起こしますので、毎年その年の流行を予測して使用するウイルス株を決めます。
その年の秋以降に実際に流行を始めたウイルスをウイルス株にすれば効果はかなり確実になるのですが、それからワクチンを作ったのでは流行期に間に合いません。ですから予測でウイルス株を決めて製造を始めるのです。
そのため、昔はウイルス株の当たり外れがあるなんていわれていましたが、現在では医学や生物科学が進歩してインフルエンザの変異の流れがわかるようになっています。
しかし、インフルエンザウイルスの変異のスピードはウイルスの型によって違うので、あまり大きく変異しなさそうな型は前の年と同じウイルス株を使います。大きな変異が予想される型については、過去の流行時に採取され保存されていた莫大な種類のウイルスの中から予測される変異に一番近そうなウイルスをウイルス株とします。
今年のワクチン株は去年の組合せ(A型2+B型2)の中でA型のH1N1というタイプのウイルス株が変更になりました。(詳しくは次の文字列をクリックし
ホームページのトピックスをご覧下さい)
4種のウイルス株のうち3つが去年と同じなら去年のワクチンでも効くんじゃないかと思われるかもしれませんが、ワクチンの有効期間というのは次の年の流行期より前に期限が来てしまいます。ですから今年の流行に対しては今年のワクチンを使わないといけないのです。
《インフルエンザワクチンの接種量と接種回数》 ◎生後6か月以上3歳未満は0.25mLを2〜4週間隔で2回接種 ◎3歳以上13歳未満は0.5mLを2〜4週間隔で2回接種 ◎13歳以上のすべての年齢0.5mLを1回または2回接種
(13歳以上の2回接種は希望者のみで2回接種の場合間隔は1〜4週)ということになっていますが、皆さんすでにニュースなどでご存じと思いますが、今年のインフルエンザワクチンの供給量は去年の供給量を下回ることが予想されています。
その原因は後で述べますが、ワクチンの供給不足を起こさないために厚生労働省は13歳以上の方はなるべく1回接種でとどめてくれるよう要望しています。
インフルエンザの予防接種はなるべく多くの方に受けていただいて流行をなるべく小さくするのが目的ですから、こども診療所でも、厚生労働省の要望を考慮して13歳以上の方には原則1回接種をお勧めしようと思っています。
さて、ワクチンの供給不足が生じそうになった原因ですが、一つは、ワクチン製造会社のうちの1社の工場が熊本にあり、地震によって壊滅的な被害を受け、いまだに再建されていないということです。ワクチン製造会社というのは数が限られていますから、1社でも製造を停滞させてしまうと全体の供給量に大きな影響を与えてしまうのです。
昨年はその影響で、一人分のワクチンを工場で注射器に入れ、無菌状態で出荷するというプレフィルドワクチンがすべての製造会社で製造できない状態でした。プレフィルドワクチンは製造に手間がかかるためにそんなことをしていたら必要な時期までに必要なワクチンを出荷できないというのが理由でした。
もう一つは、ワクチン製造のためにウイルス株を培養・増殖させるのですが、今年のウイルス株は思ったより増殖が遅く、予定の時期までに予定の量まで達しなかったことです。ウイルス株は生きたウイルスですから、生き物相手では人間の思惑通りに事が運ばないことがあるということでしょう。
さて、次回の予防接種講座では、インフルエンザワクチンの効果や副反応についてお話ししようと思います。
posted by YABOO!JAPAN at 19:43|
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