2015年05月21日

育児講座7 「子守り娘の子守歌」

oxfam.jpg 育児講座とはいっても決して堅苦しいものではありません。また、直接育児に役立つような知識というわけでもありません。世間でまかり通っている育児の情報に「ホントかいね?」と疑問を投げかけ、ちょっとした考え方の変化で育児が楽しくなるようなそんな記事を掲載しています。


第7回 「子守り娘の子守歌」


 るんるんねんねこさっしゃりませ
  寝た子のかわいさ
  起きて泣く子の ネンコロロ
  つらにくさ ネンコロロ ネンコロロるんるん

 中国地方の子守歌を引き合いに出すまでもなく、子どもの寝顔というのはまさに天使のようです。逆にどんなにあやしてもなだめても、ギャーギャー泣かれたら、自分の子であってもにくらしくなるかもしれません。ましてや仕事として子守りをしなければならないとなったら、起きて泣く子の顔(面=つら)はにくらしく見えるに違いありません。

 西洋の子守り歌に比べると、日本の子守り歌には、「子守りの歌」と呼んだほうがふさわしいものが多いように思います。さらに、西洋では長調(明るい)で作られていることの多い子守り歌が日本では短調(暗い)で作られています

 貧しい農村の口減らしのために、年端もいかない娘が子守りとして町へ奉公に出る。まわりで同じ年格好の子どもたちが楽しそうに遊んでいるのを横目で見ながら、子どもをおぶって子守りをしながらふるさとの家族に思いをはせる。「お盆が来たらクニに帰れる。でもお盆が早く来ればまた早く町へ戻らなければならない。」(五木の子守り歌)とか、「お盆が過ぎてしまったらまたつらい子守りが待っている。雪も降るだろうし、子どもも泣くし。」(竹田の子守り歌)などは、子どもを寝かせる歌というよりは、子守り娘の恨み節という感じです。

 冒頭に掲げた中国地方の子守り歌も、決して我が子がにくいという歌ではありません。子守り娘が「お願いだから泣かないでおくれよ。そんなに泣いたらにくらしくなってしまうよ。」と嘆いている歌なのです。

 一方、江戸子守り歌というのは、「坊やのお守りはどこへ行った。あの山越えて里へ行った。」とあるように、子守り娘の里帰りの間、我が子の子守りをしてみたらとても大変なので、子守り娘よ早く帰っておいで。「でんでん太鼓と笙の笛」のおみやげを持って。という歌です。これもやっぱり「子守り歌」というより「子守りの歌」の部類です。

 日本の古くからの子守り歌に短調の曲が多いのは、この辺に原因があるのかもしれません。

 それではこのもの悲しい子守り歌を聞かされるほうの子どもはどうでしょう。子守り娘に同情して、いい子でねんねしたのでしょうか。いえいえそうではないでしょう。赤ちゃんは楽しいことだけが好きですから、毎日毎日こんなうらみがましい歌を聞かせられたらたまったものではありません。うんざりしてよけい泣いてしまったに違いありません。だからよけい「子守りはつらいよ。泣かずに寝ておくれよ。」という歌が広まっていったのだろうと思います。

 フルート奏者の吉川久子さんという方がいらっしゃいます。世界各地の子守り歌を集めてコンサートで演奏なさっている方ですが、吉川さんがおっしゃるには、男が歌う子守り歌には「お願いだから泣かずに寝ておくれ。寝てくれたら何でもあげちゃうよ。」という内容が多いのだそうです。その場しのぎの男の身勝手さがよくわかるという見方もできますが、「何でもあげちゃう」という決定権を男が持っている、つまり男中心社会における子守り歌ということもできます。

 悲しいことにしがない奉公人の子守り娘にはそんな決定権はみじんもありません。子守り娘には何にもあげるものがないのです。せめて里帰りのおみやげに「でんでん太鼓に笙の笛」を持ってくるぐらいのものなのです。

 とはいえ、現代社会では子守り娘はもういません。自分で我が子を寝かしつけなくてはなりません。なかなか眠ってくれなくて、時にはにくたらしく感じることもあるかもしれません。時にはぐちやうらみごとの一言もいいたいことがあるかもしれません。それでも「子守り娘の子守り歌」だけは歌わないで下さい。それを聞かされるほうの子どもの身になったら、歌うあなた以上にうんざりすることでしょう。

 「子守り娘の子守り歌」は、ちょっとしんみりしたくなった時にあなただけで聞きましょう。子どもに歌って聞かせる子守り歌はいつでも明るく夢の世界にいざなってくれるようなものにしましょう。それでもどうしても寝てくれないでぐちりたくなったら、歌ではなくて本人に面と向かって、「だいたいあんたはねえ…。」と、説教しましょう。あなたは奉公人ではなく、れっきとした親なのですから、誰はばかることなく我が子に説教することができるのです。

 「こんな小さな子にわかるはずが・・・。」
 いえいえ、説教というのは本気ですればけっこう通じるものなのです。



posted by YABOO!JAPAN at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所育児講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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