2015年05月28日

育児講座 8 「マザーズコンプレックス」

oxfam.jpg 育児講座とはいっても決して堅苦しいものではありません。また、直接育児に役立つような知識というわけでもありません。世間でまかり通っている育児の情報に「ホントかいね?」と疑問を投げかけ、ちょっとした考え方の変化で育児が楽しくなるようなそんな記事を掲載しています。


第8回  「マザーズコンプレックス」

 マザーコンプレックス(マザコン)といえば、“母親に対する、息子の複雑な心理状態”をさす言葉だなんてことはいまさら言わずもがなですが、今日の話はマザコンではないんです。マザーズコンプレックスという話です。英語で書けば "mother's complex"、“母親に対する、息子の複雑な心理状態”という当たり前の見方ではなく、“(娘も含めた)子どもに対する、母親の複雑な心理状態”として考えてみます。マザーに対するコンプレックスではなく、マザー自身のコンプレックスという見方です。

 すべての親が、わが子に幸せになってほしいと願っています。できるだけのことをしてあげたいと念じています。それが親の愛というものです。ところで生まれたばかりの赤ちゃんはどうでしょうか?自分で幸せになりたいと願っているでしょうか?もちろんそんな高等な願いはまだ芽生えていません。でも少なくとも、生きたいという欲求は持っています。だから、誰にも教わらないのに生まれたとたんに自分で呼吸を始め、誰にも教わらないのに乳首をくわえればお乳を吸って、誰にも教わらないのに飲み込むことができるのです。

 この生きたいという欲求はやがて、心地よく生きたいという欲求に発達していきます。泣いたり、笑ったりするようになるのが、その証しです。そこから、幸せに生きたいという段階までは、もう時間の問題です。

 この子ども自身の“幸せに生きたい”という願いは、今、子育ての場でどこへ行ってしまったのでしょう。

 これこれこうすることが子どもの成長のためにいい、子どもの発達のためにいいという情報が世の中にいっぱいあふれています。それらの情報を知ることは決して悪いことだとは思いません。でもそれをすぐさま実行に移すとなると、話は別です。

 子どもは自分自身で“幸せに生きたい”というサインや要求を当然出してくるのです。いろいろな情報は、子どもが要求を出してから、その要求に沿って実行に移せばいいことだと思うのです。

 子どもの要求をすべて受け入れるのは、過保護だ、甘やかしだといわれるかもしれません。本当にそうでしょうか?

 要求が通ったら、子どもはとても嬉しいでしょう。心安らぐでしょう。心満たされるでしょう。何の代償もなく、全面的に受け入れられる経験は満足ということを教えてくれます。親はわが子の要求はすべて受け入れるつもりでいましょう。そのことが逆に自立心や自制心を引き出すことに気づきましょう。

 ただし、(ここからが大切です)要求されていないことをするのを一切やめましょう。要求されてもいないことをするのを、過保護ともいい、甘やかしともいうのです。子どもは要求が通ったときの感動を味わうことができません。要求のしかたを学ぶこともできません。いつしか人がやってくれるのを待つようになります。そのうち自分がいったい何を要求していいのかさえわからなくなってしまいます。

 それから、代償として要求を通すこともやめましょう。代償を払って要求が受け入れられても、子どもは満足を得ることができません。代償を払ったのだから当然、というわけです。

 「いい子にして診察終わったら、アイスクリーム買ってあげるからね」、診察室でよく聞く贈賄のテクニックです。こういう育てられ方をした人々が、永田町や霞ヶ関の界隈には大勢います。

 要求を受け入れることが大切なのではありません。子どもに満足感を与えることが大切なのです。それには無条件の受け入れが一番なのです。もちろん、すべてのことが要求通りに受け入れられるはずがありません。親は万能の神様ではないのです。

 受け入れ不可能なことは断固として拒むべきだと思います(でもできるだけのことはしてあげてくださいね)。要求が通らなければ、子どもは面白くありませんから、だだをこねたり、交渉のテクニックを使ったりするでしょう。そして最後に要求が貫徹すれば満足感が得られるし、要求が受け入れられなければ、次は別の交渉テクニックを使うかもしれませんし、要求のレベルを変えてくるかもしれません。

 そして前回の育児講座でお話しした「顔色をうかがう」という技術も獲得するかもしれません。

 こうやって、子どもは自分が欲しいものを見つけ、それを手に入れるために要求を自分でコントロールすることを身につけていくのです。

 これらのことを実現するためには、「待つこと」に慣れなければなりません。子どもの要求が出てくるまで待つのです。でも、人間誰でも待つのは苦手です。待っていると不安なのです。その不安が、子どもが要求してもいないことを親にさせてしまったり、“子どもに対する、母親の複雑な心理状態”に親を陥れてしまったりするのです。マザー自身のコンプレックスが、子どものマザーに対するコンプレックスを生み出しているのかもしれないのです。


posted by YABOO!JAPAN at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所育児講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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