2015年06月11日

育児講座9「早期教育 パート1」

oxfam.jpg 育児講座とはいっても決して堅苦しいものではありません。また、直接育児に役立つような知識というわけでもありません。世間でまかり通っている育児の情報に「ホントかいね?」と疑問を投げかけ、ちょっとした考え方の変化で育児が楽しくなるようなそんな記事を掲載しています。


第9回  「早期教育 パート1」

 古今東西、タイムマシンを題材にした物語というのは山ほどあって、いわばSFの定番商品みたいなものです。時間の流れを変えられたら、あるいは、時間の流れの中を過去・現在・未来と自由に泳ぐことができたらというのは、昔から人間が抱いて果たせない夢や欲望の一つです。

 特に未来というのは、こうなるだろうという予測や、こうするはずだという予定は立てられても、それが実現するという保証のない極めて不安定な代物です。それなのにたいていの人間が未来に夢を抱き、現在よりも良いものを期待するというのは、未来という言葉が可能性という言葉とオーバーラップするからでしょうか。

 「子どもは未来である」ということもよくいわれます。子どもは無限の可能性を秘めて生まれてくるという期待なのでしょうか。胎児や新生児にかなりの能力(可能性)がすでに備わっているということを、今や疑う人はいないでしょう。

 その能力を目覚めさせ引き出してあげることは能力の限界に挑んで夢をかなえてあげることだという、希望に満ちた前提のもとに早期教育は成り立っています。「いずれ成長すれば徐々にそなわってくる能力なんだから、早期教育によって本来ないはずの能力を付け加えなくても・・・」などと言ったら、言いがかりだと非難されるでしょう。

 ところで、日本人の子どもでも、イギリスやアメリカで生れて、そのままその国で成長すれば英語がペラペラになります。ドイツで生れ育てばドイツ語が、フランスでならフランス語が、というふうに、言葉に関していえば、日本人だから日本語しかしゃべれないというわけではありません。つまり、子どもの言葉の能力には無限の可能性が秘められているということがいえます。

 この無限の可能性はきっと言葉だけじゃないでしょう。いろいろな分野に子どもは無限の可能性を持って生れてくるに違いありません。だったら、その可能性をすべて、それが無理なら少しでも多く、それも無理ならせめて最も顕著なものを伸ばしてあげたいと願うのは、親としての人情というものです。

 事実、近代教育学というのは、「内的能力の全面開花」ということを謳い文句にして発展してきたものなのです。そうすることが教育者あるいは大人の子どもに対する責務であり、そうすることによって大人は子どもたちに素晴らしい未来を提供することができると信じて・・・。

 これは理想論としてはとてもすばらしいものです。でも現実には運用面での問題があって、「内的能力の全面開花」が、日本の一部の人々の間でいつの間にか「内的能力の早期開花」(早期教育)と取り違えられてしまったのです。もちろん「全面」という概念が全く消えたわけではなく、「少しでも早く能力を引き出して、また別の能力も引き出そう」という考え方で残っています。「少しでも早く、そしてなるべく多く」というわけです。

 なるほど、なるほど。そして子どもたちの未来は明るく開ける、そしてその未来は我々が提供したものだというわけですね。なかなか結構。

 だけど!

 近代教育学で言う「全面」というのは「全部一緒にバランスをとりながら」っていう意味なんですね。他の能力とのバランスも考えずに、一個一個の能力をどんなにたくさん引き出して花開かせてあげても、トータルな人間としての明るい未来はやってこないんですね。これが一つの間違いです。

 もう一つの間違いは、特別なことをしなければ教育じゃないっていう誤解ですね。学校へ行く、塾へ行く、何とか教室へ通う、こういうことが教育だって信じ込んでいる恐ろしさを是非考えてほしいと思うのです。

 こういうことって「引き出す」のじゃなくて、「付け加える」ことなんです。付け加えることが全部悪いとはいいません。私たち大人が子どもたちに付け加えることってけっこう沢山ありますからね。それが「文化」っていうものなんですから・・・。でも文化っていうのはいわゆる「教育の場」で伝えていくものじゃないんですね。そこんところをきちんと区別してほしいわけです。

 今回は、子どもの発達、あるいは広い意味での教育というものの中で、「引き出す」と「付け加える」という2つのキーワードを提示しました。

 早期教育と子どもの発達とは切り離して考えることはできませんからブログの中ですべてを語ることはできません。でも、この2つのキーワードをステップにして、次回また同じテーマで早期教育の別の側面を考えてみたいと思います。


posted by YABOO!JAPAN at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所育児講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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