2015年08月13日

育児講座12「トイレット・トレーニング」

oxfam.jpg 育児講座とはいっても決して堅苦しいものではありません。また、直接育児に役立つような知識というわけでもありません。世間でまかり通っている育児の情報に「ホントかいね?」と疑問を投げかけ、ちょっとした考え方の変化で育児が楽しくなるようなそんな記事を掲載しています。


第12回  「トイレット・トレーニング」

 トイレットトレーニングについては、この講座の第6回で、しつけかトレーニングかということでちょこっとだけ触れました。今回はこのことをもっと掘り下げて考えてみたいと思います。

 私たち団塊の世代がご幼少のみぎり(もう70年近く昔の話です)、当然おむつをさせられてたわけですが、その当時は1歳までにおむつをはずせなかったら母親失格だっていわれてたんですね。現代のトイレット・トレーニングでいわれる「3歳までにあるいはそれから」に比べたらびっくりものですが、もっとびっくりすることに、中央アフリカのウガンダっていう国では、生後2週間までに子どもの排泄のサインがわかるようにならなきゃ母親失格だっていわれてるんだそうです。

 ウガンダっていう国は赤道直下の国だから当然おむつなんかしてないんですが、生まれてしばらくすると母親は赤ちゃんの排泄のサインがわかってしまって、赤ちゃんが排泄しそうになるとさっとからだから赤ちゃんをはなすんだそうです。

 この話を聞いて、その当時出演してたテレビの育児番組で「あなたはいつ赤ちゃんのおむつはずしに成功しましたか」っていうアンケートをやってもらったら、なんと生後3週間っていうのがトップでしたね。なんでもその人の家には代々伝わる秘伝があるそうで、その方法でやるとあっというまにおむつがはずせるんだそうです。

 日本人だってやればできるじゃないか!

 私は感動しましたねえ。だって大人が勝手に発明して赤ちゃんに迷惑をかけているおむつなんですから、少しでも早くおむつから解放してあげるのが大人の義務だと思うんですよね。だってそうでしょう。あんな暑苦しいものを一日中からだに巻きつけられて、赤ちゃんがうれしいはずはありませんから。

 で、それ以来私は、何が何でもおむつは早くはずせっていうのを持論にしてるんですけど、それは現代のトイレット・トレーニングの主流からははずれてしまうわけです。

 というところで、トイレット・トレーニングとは何かっていうことを考えてみようと思うんですが、そもそもこの言葉自体子どもを馬鹿にした言葉だから、私は絶対「おむつはずし」っていう言葉にこだわるんです。

 おむつはずしには大きくわけて3つの方法があります。まず赤ちゃんの排泄のサインに気づいて大人の責任ですべてを処理しようとする方法(ウガンダ式)。次にある程度は赤ちゃんのサインを必要とするが、そうでなくてもおまるや便器にまたがらせると排泄をしてしまうように条件反射を利用する方法(旧日本方式)。そして最後が現代の主流、子どもがおしっことかうんちという単語を覚え、次いで尿意や便意を感じている様子が見られたらそれを上手に誘導してあげて自律的に排泄を促すといういわゆるトイレット・トレーニング。

 そしてこの順番におむつはずしの年齢はどんどん遅くなります。おむつはずしが遅くなるのは大人の怠慢だと思います。

 だけどトイレット・トレーニングの推進者たちはこう言うのです。
「赤ちゃんには生まれたときから人格があり、意志があります。それは最初から完成されたものではなく、発達によってより完全なものへと導かれていくのです。この発達の段階に合わせて子どもたちのお手伝いをしてあげることが大人に課せられた崇高な使命なのです。」

 「崇高な」ってのは私が皮肉って付け足した言葉ですけど、それを省いたとしても名文句ですね。感動ものですね。この理屈でいくと条件反射を利用して赤ちゃんのおむつはずしをするなんて、サーカスの動物を調教するならいざ知らず、人格と意志を持った赤ちゃんに対して失礼きわまりない行為ですってことになってしまいます。

 なら聞きますけど、赤ちゃんの人格も意志も無視しておむつなんてものを発明した大人って何なんですか?

 赤ちゃんの身にもなってごらんなさい。大人たちの美しい環境を守るという崇高な使命のために、大人たちがそれと気づいておむつを取り替えてくれるまで、おしっこやらうんちをからだにまとわなきゃならないなんてとてもたまったもんじゃありません。いっそおしっこもうんちも出たとたんにどこかへ流れてってくれたほうがどんなに気持ちいいかしれません。

 私がおむつはずしは早いにこしたことはないと主張する理由はそこにあるのです。

 とはいっても、世の中がすべてこの非人間的なトイレット・トレーニングにおおいつくされてしまっていますから、条件反射といったってどうやっていいかわからない。ましてや赤ちゃんの排泄のサインがどうなっているかなんて、まさに先祖代々伝わる秘伝でもなければわかりゃしません。

 そういえば、テレビ番組のアンケートでこの秘伝のことを教えてくれた方にどんな秘伝か訊くことができませんでした。私はテレビ局のスタジオにしか行きませんでしたが、秘伝の葉書は番組製作会社のデスクの上にあって、住所もお名前もわからなかったのです。もっとしつこくディレクターに頼めばよかったと、そのことが今でも悔やまれます。

 とにもかくにも現代ではトイレット・トレーニングの掟に従うしかないわけですが、だったらせめて、おむつを替えるときだけでもなるべく長く新鮮な空気にお尻をさらしてあげるとか、おしっこやうんちを示す言葉を発するようになったらなるべく早くトレーニングを始めるぐらいの配慮があってもいいんじゃないかと思うのです。

 今や世の中ほとんどの赤ちゃんが紙おむつをあてられています。おむつをはずす年齢が遅くなれば遅くなるほど、紙おむつのメーカーは儲かるわけです。おむつはずしを遅くしているトイレット・トレーニングを支える理論的研究は、小児科医や児童心理学者や発達心理学者などによって行われていますが、それらの中には紙おむつのメーカーがスポンサーになって行われた研究もたくさんあるのです。

 え?お前にはスポンサーがやってこなかったのでひがんでこんなことを書いてるんだろうって?そんなことはありませんよ!ったくう・・・。




posted by YABOO!JAPAN at 01:00| Comment(3) | TrackBack(0) | こども診療所育児講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。初めてこちらにお邪魔しました。
とても興味深く読ませていただいております。
我が家には7か月になった娘がいます。生まれた時に紙おむつでお尻が赤くなってしまい、それ以来24時間布おむつです。私の母の「いつまでもおむつしてたら赤ちゃんがかわいそうだ」という言葉に共感して、4か月位から少しずつトイレに連れて行ってました。夏になり、裸で過ごしたせいかだいぶタイミングをつかめるようになり8割位トイレで用を足せるようになってました。
しかし、その直後で私が体調を崩してしまい、1週間ほどおむつでしていました。すると最近トイレを再開したのですが、嫌がってトイレに入った瞬間泣き出すようになってしまいました。
あまり無理強いするのはかわいそうなので、嫌がったらすぐに切り上げていますが、タイミングをつかむのも下手になってしまいおしっこした後に気付く事がほとんどになってしまいました。
このような時はどのように対処したらいいのでしょう?
おまるなど、する場所や雰囲気を変えてみた方がいいのでしょうか。
長文、失礼いたしました。
これからも育児のブログ楽しみにしております。
Posted by たかこママ at 2008年09月03日 12:51
 たかこママさん、頑張れば日本人だって今でも1歳までにおむつがはずせるという力強いメッセージをありがとうございました。
 ちょっとの中断でも大きな後退になってしまったようですが、そんなときどうするかと訊かれましても、早期のおむつはずしはお母さんと赤ちゃん相互のカンと経験に頼る部分がほとんどなので、いいアイディアが浮かびませんが、もっと大きな子のおむつはずしの時でも、トイレを嫌がっている子はなかなかうまくいきません。
 トイレに何か工夫をして赤ちゃんがトイレに行くと楽しくなるようにしてみてはいかがでしょうか?
Posted by YABOO!JAPAN at 2008年09月03日 14:34
先生、アドバイスありがとうございました!
>おむつはずしはお母さんと赤ちゃん相互のカンと経験に頼る部分がほとんどなので
・・・この言葉でハッとしました。確かにトイレがうまくいっている時は私も特別難しく考えなくても何となくタイミングが分かったり、娘も私に合図をしてくれている様な気がしていたので遊んでいる途中でも、私が料理をしている途中でも「あ、トイレいこ。」みたいな感じだったのですが、最近は「今か、まだか」みたいに難しい顔をして
子供に接していたように思います。
大人よりずっと心を読むの上手な赤ちゃんの事、私のちょっとピリピリした雰囲気を感じていたに違いありません。
今でも出る寸前に表情が変って、決まって私の顔を見てくれる(気づくのがいつも遅いのですが)。後は私のおおらかさだと思いました!
布おむつを使っていると周りのお母さんにギョ!っとびっくりされ、トイレに連れて行っているというと「かわいそうじゃない?」と言われてしまった事があり、正直少し迷いがありました。
でも、「赤ちゃんだって早く外れた方がいいに決まってる」という最初の気持ちに自信を持って
もう1度頑張っていきます。
何だか心がすっとしました。
先生、ありがとうございました!!
もしきちんと外してあげることができたら、またコメントさせて下さい☆
Posted by たかこママ at 2008年09月03日 21:34
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