2015年09月17日

育児講座15「集団保育」

oxfam.jpg 育児講座とはいっても決して堅苦しいものではありません。また、直接育児に役立つような知識というわけでもありません。世間でまかり通っている育児の情報に「ホントかいね?」と疑問を投げかけ、ちょっとした考え方の変化で育児が楽しくなるようなそんな記事を掲載しています。


   第15回  「集団保育」

 戦後生まれの私は、集団学童疎開とか、もっと悲惨な集団自決ということは知識として知っているだけです。子どものころに集団登校というのは経験しましたが、それが何のためだったかは忘れてしまいました。今、集団という言葉からは、「どこそこの国で誰それが武装集団に襲われた」というようなテロ行為を思い浮かべてしまいます。集団という言葉にネガティブなイメージを抱いてしまうのは私の偏見でしょうか?

 話は違いますが、集団という言葉を英語にするとき、グループという言葉とチームという言葉のどちらがふさわしいでしょう?どちらもほとんど日本語みたいなものですが、これもまた独断と偏見で、私自身はグループという言葉のほうがふさわしいと考えています。チームというのはきちんと組織化され、役割分担を決めて自分たちで運営していくもの、グループというのはそういったものがない、ただの人々の集まりという勝手な連想があるからです。
 
 この二つの偏見を重ね合わせると、集団という言葉から思い浮かぶのは群(むれ)という言葉です。そうです。あの動物の群です。
 
 動物にだってきちんと組織化され、役割分担を決めて自分たちで運営される群があると言われそうです。むしろ動物たちにはそのような群のほうが多いかもしれません。そのことはよく承知しているつもりですが、こればかりは私自身の独断と偏見なのでいたしかたありません。

 さてここで話はまた大きく変わります。

 人間は集団生活を営む動物だとよく言われます。動物となんら変わりはないと思うのですが、人間の場合にはこれを「群(むれ)」とは呼ばず、特別に「社会」と呼びます。子どもが集団生活になじんでいくことを社会性の発達と言います。社会性というのは人間として生きていく上ではとても大切なことです。社会性が発達することを決して悪いことだとは思いません。

 前置きがとても長くなりましたが、以上は集団という言葉に対する私の単なる思いこみにすぎません。こういう私が集団保育というものを考えるとどうなるでしょう?

 いわゆる「親離れ」というのは3歳頃から始まります。集団保育というのは親から離れなければできない、というより親から離れた子どもたちを集めるのが集団保育ですから、3歳前の集団保育というのは無理やり親離れをさせるということもできます。これはとても不自然なことです。無理やり親から引き離された子どもの心は傷つき、情緒は不安定になるでしょう。

 なんてなことを私が本気で言っているなんて、少なくともこのページを何度か読んだことのある読者の方だったら、決して思わないでしょう。

 確かに、3歳頃から親離れが始まるというのは本気ですが、そもそも親離れなんていう言葉自体がおかしいのです。私に言わせればこれは親離れではなくて、保護者離れなのです。子どもにとっては3歳までは保護者が絶対に必要なのですが、それはなにも親じゃなくてもいいのです。やさしく見守って、安全を確保し、危険から遠ざけてくれ、いざというときには逃げ込むことができ、そして食べ物をくれる「者」がいればいいのです。

 その「者」であるかどうかがわかり始めるのが人見知りです。自分の保護者としてふさわしいかどうかを認定するわけです。認定されていない人の前では危険を察知して泣くのです。生後間もなくから保育園に預けた子は人見知りをしないとよく言われます。もちろん個人差はありますが、人見知りをしない子は、多くの保護者に恵まれてほとんどの大人を保護者だと信じ切っているからとも言えるのです。ですから、保育園に行っていない子でも、安全に対して寛容な子はあまり人見知りをしないのです。

 3歳までの子どもには保護者さえいればよいとは言いましたが、もちろん、親子の情、親子の愛ということが昔から言われているのは十分承知していますし、そういうものが存在することも当然理解しています。でもそれは一つのコミュニティ全体が保護者として子どもたちを見守り、育てていこうという暗黙の合意があった時代の、その合意の中での親子だったと思うのです。

 現代のように子育ての責任が親だけに集中してしまうような時代には、親離れという言葉は親の責任や負担をますます増大させてしまうような気がします。

 家族といるときは親対子、集団でいるときは保護者対子ども。子どもをいとおしく思う気持ちが同じならば、子どもはどちらも大好きでしょう。どちらがいいかなんて、大人の勝手な思いこみなのです。



posted by YABOO!JAPAN at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所育児講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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