2015年10月01日

育児講座16「いい子ぶりっ子」

oxfam.jpg 育児講座とはいっても決して堅苦しいものではありません。また、直接育児に役立つような知識というわけでもありません。世間でまかり通っている育児の情報に「ホントかいね?」と疑問を投げかけ、ちょっとした考え方の変化で育児が楽しくなるようなそんな記事を掲載しています。


     第16回  「いい子ぶりっ子」

 初めて出会った赤ちゃんが男の子か女の子かわからないとき、私は女の子という前提で話を進めることにしています。というのは、もしその子が男の子だったとしても、「エーッ、ホントー?あんまりかわいいんで女の子だと思ってた」って言えば絶対にカドがたたないからです。これが逆になってしまうとなかなか言い訳の言葉が見つからないのです。皆さんもそんな経験ありませんか?うまい言い訳の言葉があったら教えてください。

 とにかく子どもをほめる言葉でもっともポピュラーで無難なのが「かわいい」という形容詞です。これに匹敵するぐらいポピュラーで無難なのが「いいこ」という名詞ですが、この「いいこ」は最近だんだんランクが下がってきています。

 今回はこの辺の事情を考えてみましょう。

 昔の童謡には「いいこ」とか「よいこ」という言葉がたくさん登場しました。「よい子が住んでるよい町は」とか、「まあるい目をしたいい子だよ」など、次から次に浮かんできます。

 この「いいこ」人気にかげりが見え始めたのはなんといっても、かなり昔の話で覚えている方も少ないとは思いますが、「ワンパクでもいい。たくましく育ってほしい。」という、例のハムのコマーシャルの頃からです。そして「いいこ」の凋落を決定的にした張本人は他でもないあの松田聖子です。

 「いい子ぶりっ子」という言葉がそれまでの「いいこ」を栄光の座から引きずり降ろしてしまったのです。

 確かに「いいこ」という言葉からは従順さとか、分別とかいったイメージが浮かんできます。「ワンパク」とか「たくましく」とかいうのとはちょっとかけはなれています。おおげさな言い方をすれば、「いいこ」は体制派、「ワンパク」は反体制派ということになるでしょう。ハムのコマーシャルが流れ始めた頃の社会情勢を考えれば、体制派よりも反体制派のほうが何となくカッコよかったかもしれません。

 一方、「いい子ぶりっ子」のほうは、体制派も反体制派もありません。日本人は「ぶりっ子」、つまり本当はそうじゃないのにさもそのようにふるまうことがきらいな、あるいはできない民族なのです。ですから、決して「いい子」がきらわれたわけではなくて、「ぶりっ子」のほうがきらわれたというのが正解なのです。松田聖子はきらわれませんでしたけど・・・。

 さてここで我が育児講座としましては、いつものへそまがりを発揮して、この「いい子ぶりっ子」、特に「ぶりっ子」を弁護しようというのであります。

 日本人は本当はそうじゃないのにさもそのようにふるまうことがきらいな、あるいはできない民族だといいましたが、それを説明するのには「本音と建前」という言葉が便利です。よく世間では、「本音は別のところにあるのだけれどそれは隠して建前で行動するというのが日本人の特性だ」と、特に外国人から指摘されます。もしその通りだとするなら、私の言っていることと全く逆になってしまい、「いい子ぶりっ子」も日本人の特性だということになってしまうかもしれません。。でもそれは大きな間違いです。

 外国人が「日本人の行動には本音と建て前がある」と指摘するというのは、「日本人には本音と建前がある」ことがばれてしまっているということなんですね。本音があることを徹底的に隠して行動するのが建前ですから、外国人にこう言われてしまうということはとりもなおさず、「日本人は本音をかくしておくことができない」、「いい子ぶりっ子はできない」ということなのです。

 もしこれを交渉ごとにあてはめるなら、本当は本音と建前があるとしても徹頭徹尾建前だけで交渉すべきなのに、ちょっと窮地に追い込まれると「いや、これはあくまでも建前で言ってる訳でして・・・」な〜んて正直に白状してしまうから、交渉がうまくいくはずはありません。相手にしてみれば、それじゃあ建前なんかどうでもいいから早く本音を出してくれということになります。要するに切り札のない交渉になってしまうわけです。日本の外交を見ているとよくわかるでしょう。

 外交だけではありません。国際化が当たり前になった現代では、どんな職業についていても国際的な仕事をせざるをえないような情勢になっています。そんなとき「本音と建前」を惜し気もなく振りかざしていたら、外国との交渉では押されっぱなしということになりかねません。これからの子どもたちに要求されるのは、「いい子ぶりっ子」のできる日本人になることなのです。それも中途半端な「いい子ぶりっ子」ではなく徹底的な「いい子ぶりっ子」です。
 
 「私たち日本人は徹底的に本音だけでおつき合いしています。」という建前を、最後の最後まで本音だと言い張れる、そしてそれを相手にも信じさせることのできるだけの強い「いい子ぶりっ子」になってもらわないと困るのです。「エーッ!ウッソ〜。ホントニ〜?ヤアダ〜。アタシッテ〜、ソンナノデキナ〜イ。」な〜んていうレベルの「いい子ぶりっ子」じゃ困るのです。

 さあ、今日から早速我が子の「いい子ぶりっ子」トレーニングを始めましょう。




posted by YABOO!JAPAN at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所育児講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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