2014年10月29日

痛くない注射の秘密(予告編)

vaccine.jpg 曜日は「予防接種講座の日」。なぜなら予防接種に使うワクチンは液体()だから・・・。

 インフルエンザの予防接種は今が真っ盛りで、こども診療所でも毎日たくさんのお子さんが「こわいよ〜」、「いたいよ〜」と泣いています。

 針を刺すのですからある程度痛いのはしかたないのですが、私の予防注射が痛くないのは昔から有名です。ひとつ20年ほど昔の自慢話をさせてください。

 現在ではすべての予防接種がかかりつけ医のところで受ける個別接種になっていますが、20年前の頃はまだいくつかの予防接種は幼稚園や保育園、あるいは小中学校で集団接種として行われていました。

 私は当時勤めていた愛育病院の小児科部長という立場上、愛育幼稚園の園医も兼務していましたので、年に何回か園児達に予防注射をしていました。その頃私はすでに「痛くない注射」の極意をある程度極めていましたから、注射で泣く子はほとんどいませんでした。卒園式の感謝の言葉では「痛くない予防注射をありがとう」と、園児達からお褒めの言葉を頂戴しました。

 ある年の一学期、その春卒園して小学校に入った女の子から一通の手紙が届きました。多分ツベルクリン検査のことだと思いますが、「今度学校で予防注射があります。先生の予防注射は痛くないので、私は先生に来て注射してもらいたいです」と、目頭が熱くなるような内容でした。私は「先生は愛育幼稚園の先生だから愛育幼稚園の子にしか注射できません。もう小学生だし、先生の注射で頑張れたんだから、学校の先生の注射でも頑張れるはずです。」と返事を出しました。しばらくしてその子からまた手紙が届き、「先生の注射より痛くありませんでした。」だって・・・。

 ガクッもうやだ〜(悲しい顔)

 でもツベルクリン検査とワクチン注射じゃ、痛みが違って当たり前です。その子にしてみれば私以外にも痛くない注射をする医者がいると思えるようになったことを喜びました。

 自慢話の次は理科のお勉強です。

pascal_gojira_01.gif

(体重1000Kgの重さのゴジラが断面積Bのピストンの上に載り、Pの圧力で浮いているとする、この時の圧力Pは(1000 / B) である。
 同じPという圧力が断面積Aの容器側に伝えられ、このAの断面積がBの1/2とした場合Pは一定である為、ゴジラを押し上げる力は500Kgの力があればよいということになる。
 逆の見方をすれば、小さな断面積Aの油圧ジャッキで重たい物を持ち上げたい場合は伝達する相手側に断面積Bの大きな油圧ピストンを用意すればよいということになる。)

pascal.jpg 皆さんはてこの原理というのをご存じですね。小さな力で重いものを動かす方法の説明に使われます。上に示した油圧ジャッキの話は、てこの原理の圧力版ともいえるもので、パスカルの原理というのを応用しています。

 パスカルというのはあの「人間は一本の葦にすぎない。自然のうちで最もひ弱い葦にすぎない。しかし、それは考える葦である。」(パスカル「パンセ」より)で有名な哲学者・思想家です。でも彼は多方面に天才ぶりを発揮して、数学(幾何学にパスカルの定理というのがあります)や物理学でも素晴らしい業績を残しています。

 圧力に関するこのパスカルの原理は重工業など実際面で油圧ジャッキ、アクチュエーター、油圧フォーク・リフトなどに幅広く応用され、圧力に関しての基本的な原理となっています。その他にも圧力に関係する言葉としては、気圧をあらわすヘクトパスカルという単位にも彼の名前が使われています。

syringe2.jpg 注射の話とパスカルの原理と、いったい何の関係があるの?とお思いでしょうが、右の写真をご覧ください。いろんな注射器が並んでいますが、どれも皆ピストンなんですね。ピストンである注射器にも当然パスカルの原理は応用できるわけで、私はそこから痛くない注射を考え出したのです。

 今週は予告編です。痛くない注射の実践編は来週お送りします。お楽しみに!



posted by YABOO!JAPAN at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所予防接種講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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