2012年09月27日

同時接種は二種類まで

kanban600.jpgこのところ新しいワクチンがどんどん承認され、1歳未満の赤ちゃんでは予防接種ラッシュが起こっています。

過酷なスケジュールをこなすために同時接種が盛んに勧められています。特に「日本小児科学会」や「VPD*を知ってこどもを守ろうの会」のホームページでは「同時接種はワクチンの種類によらず同時に何本でも接種してかまわない」として、なるべく早く色々なワクチンの接種が行われるように働きかけています。
*VPD=Vaccine Preventable Diseases=ワクチンで予防可能な病気の略

しかしこの日本流の同時接種に問題がないわけではありません。それはその何本もの注射を一体どこに打つのか、同時接種の接種部位という問題です。


《同時接種の接種部位》

「予防接種(注射)は腕にする」というのはほとんど常識です。日本だけではありません。世界中ほとんどの国で予防注射は腕(肩から肘までの間=上腕)にするのが常識です。

ところが、ワクチンの種類が急速に増え出すと、赤ちゃんの小さな上腕だけではそんなに沢山の注射を打つことができなくなってきました。アメリカでは一時最大で7本の注射を同時に接種していたこともありました。とても腕だけではまかないきれないので太もも(大腿)も使うようになり、現在諸外国では接種部位として大腿も使用することがほぼ常識になっています。

一方日本ではどうかといいますと、予防接種の話になるとよく登場する言葉ですが、これまた厚生労働省の怠慢で、注射をしてもいい部位が公式には上腕伸側(肩から肘までの間のほぼ後ろ側)に今でも限られています。肩から肘までとはいっても、それらの部位のギリギリは危険とされていますので、小さなお子さんの上腕伸側というのは何本もの注射ができるほど広いエリアではありません。

日本では同時接種の場合お互いの接種部位は2.5cm以上離すように指導されています。お互いのワクチンが混ざり合わないようにするための、そして接種部位に副反応が出た場合にそれがどちらのワクチンによるものかをはっきりさせるための最低限の距離だとお考えください。最低限だとすれば接種部位は離れていれば離れているほどよい、安全だということになります。2本の注射なら両方の腕に、4本の注射なら両方の腕と両方の太ももに接種すれば安全この上ありません。5本以上だったら?それはまたあとの話です。

でも日本ではそれができない!

そこで日本小児科学会は昨年「大腿部への接種を勧める声明」を出し、厚生労働省に働きかける一方で、「上腕伸側」というのを「上腕外側」と表示して、上腕に2カ所(左右で4カ所)と大腿前外側(わりと広い範囲)をお勧めの接種部位として発表し、医療現場へも配布されるガイドラインにはその勧奨接種部位が掲載されています。

でも厚生労働省はまだそれを認めていない!

先々週江戸川区医師会で開催された「第2回不活化ポリオ講習会」の席上で私がこの接種部位について質問したときの答えも、「厚生審議会予防接種部会では今のところ大腿部への接種を認めていません」との答えでした。

ところで余談になりますが、最低限の2.5cmにはどの程度の医学的根拠があるのでしょうか?これはあくまでも私の想像なのですが、欧米の国々で「1インチ以上離しなさい」とされているのをそのままメートル法に置き換えただけではないかと思っています。1インチ=2.54センチメートルです。

欧米では同時に7種類ものワクチンの接種を行った時期がありました。両腕と両太ももを使っても打ち切れません。それでどうしても同じ腕や太ももに注射しなければならないときに使い慣れた1インチというのを持ち出したのではないかと想像しています。欧米でも医学的根拠はそれほど確固たるものではなかったと想像しています。1.5インチだと曖昧だし、2インチ離したら2か月の赤ちゃんの肩から肘の間に2本の注射を安全に接種するのは至難の業ですからね。(すべて想像です)


《予防接種健康被害と補償制度》

ここで話は大きく変わりますが、予防接種には多かれ少なかれ健康被害のリスクは常につきまといます。このブログでも再三再四申し上げていますが、病気の素(ウイルスや細菌)から作られるワクチンが体内で何も悪いことをせず免疫だけを作ってくれるなどと虫のいいことを考えるべきではないのです。

でも、健康被害なんかないほうがいいに決まっています。ですから、どのワクチンも副反応と呼ばれる範囲内で、一時的に被接種者に不利益なことが起きても、それが永続的な後遺症(健康被害)にならないよう、最大限の努力を注ぎ込んで作られているわけです。

それでも健康被害をゼロにすることはとても難しい。だからそのような事態のために健康被害の救済(治療)と将来にわたっての養護を補償しましょうというのが、予防接種健康被害救済制度です。

この制度には二つの種類があります。一つは定期接種として国が接種を勧奨しているワクチン(BCGやポリオワクチンやMRワクチンや日本脳炎ワクチンなど)によって生じた健康被害に対する救済制度で、国が責任を持ちます。もう一つは任意接種なのだけれど国が承認したワクチン(水痘ワクチンやヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンや子宮頸癌ワクチンなど)によって生じた健康被害に対する救済制度で、国とは別の独立行政法人が責任を持ちます。

国が承認していないワクチンの任意接種によって生じた健康被害はこのどちらからも補償を受けることはできません。不活化ポリオワクチンが承認される前の輸入単独不活化ワクチンがこれに該当します。

どちらの制度も申請すれば誰でも認めてもらえるわけではなく、審査機関が予防接種との因果関係を調べて、申請者の健康被害が予防接種と関係ありという結論が出たときのみ補償の対象となります。とても厳しい審査です。あまり厳しいので、この制度が始まった当初は「国を救済する制度」と悪口を言われました。最近はなるべく被害者の立場に立つように変わってきてはいますがそれでも厳しい審査であることに変わりはありません。

そういう厳しい審査の制度ですから、厚生労働省(国)が認めていない太もも(大腿)に注射をして何らかの健康被害が発生した場合、この制度に救済を申し立てても「上腕伸側に注射をしていれば何でもなかったのに国が認めていない大腿部に注射をしたことが原因かもしれない」と判断され、申請を却下されてしまう可能性があるのです。

今までは日本の予防接種は種類が少なく、上腕伸側だけ使っても問題なく接種が行われていましたから、大腿部への注射による健康被害の例というのがほとんどないため、あくまでも可能性としか言いようがないのですが、一応考慮には入れておかなくてはならない問題だと思います。

日本の予防接種はワクチンの承認が先行して、予防接種制度の整備がとても遅れているということはこのブログでも何度も申し上げているところですが、安全かつ確実な予防接種を目指すこども診療所としてはとても気になるところではあります。

大腿部への注射を勧めている日本小児科学会やVPDを知ってこどもを守ろうの会では、この辺のところをきちんと厚生労働省に確認してあるのかどうか、関係者に会う機会があったら一度尋ねてみようと思っています。


《こども診療所の対応》

ということで、こども診療所では、この問題がきちんと確認されるまで、大腿部への予防接種(注射)は原則として行わないことにいたしました。さらに、接種部位の距離を確実に確保するために同じ腕に2本の注射を打つことも行わないことにいたしました。

つまり、同時接種をご希望の場合、1日に接種できるのは2種類までということになります。

でも、世界中であまりにも常識になっていて、上腕部よりも大腿部への注射のほうが免疫の獲得率が高いと立証されているようなワクチン(たとえばB型肝炎ワクチン)は今までどおり大腿部への注射を続けます。

また、この記事の内容をご理解いただいた上でどうしてもという強いご希望があれば、大腿部への接種も含め、1日3種類以上のワクチンの同時接種も行います。

時代の流れに逆行しているとお感じの方もいらっしゃるかもしれませんが、いくら厚生労働省の怠慢でだとわかっていても「法は法」として守るべきだと思いますし(ソクラテスみたい!)、インフラの整備もせずにワクチン、ワクチンと騒ぎ立てる今の日本の専門家やメディアに対する警鐘のつもりもあります。

「予防接種はリスクを乗り越えて受けるもの」という免疫獲得の大前提を十分ご理解の上、こども診療所の方針にご賛同いただきたいと思います。





posted by YABOO!JAPAN at 10:56| Comment(1) | TrackBack(0) | こども診療所だより | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Posted by ブラジャー at 2013年07月25日 10:04
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