2013年12月02日

感染性胃腸炎の治療(3)

dav.jpg曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを示す漢字には(肉づき)のつくものが多いから。

脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
あなたはいくつ書けますか?




 前回のノロウイルスに続いて今回はロタウイルスによる感染性胃腸炎のお話です。

 このシリーズの第1回でもお話しいたしましたが、ロタウイルスワクチンが国内でも承認されています。ワクチンについては、このシリーズの最後にまとめてお話ししようと思います。まずは、ロタウイルスに感染してしまったときにどうするかということについてご理解いただきたいと思います。

 ロタウイルスによる感染性胃腸炎は白色便性下痢症とも呼ばれるように、下痢便の色が白くなり、ひどいときには米のとぎ汁のようになるのが特徴です。日本ではほとんど冬の病気で、乳幼児冬季下痢症とも呼ばれます。下痢便の色に特徴があるので「下痢症」という名が付けられていますが、嘔吐もともない小さな赤ちゃんがかかると脱水になりやすい病気です。

 感染力がとても強く、小児科の病棟などで一人でもロタウイルスの胃腸炎が発生すると、数日の内に病棟全体に広がってしまうことがあります。

 特効薬といわれるような治療法もありませんし、下痢や嘔吐を鎮めるクスリもほとんど効きません。1週間ぐらい症状が続いて自然に治ります。この1週間の間、どうやって脱水にならずに持ちこたえるかが治療の中心になります。「飲まない・食べない」が基本であることは今まで力説してきた通りなのですが、ロタウイルスに感染したお子さんは発病して2〜3日たつと食欲が出てきて、飲まない食べないを1週間も続けることは困難ですし、ノロウイルスと違って、飲まなくても食べなくても下痢・嘔吐が続くので、入院して点滴をしなければならないことも少なくありません。

 逆に、脱水にさえならなければ、1週間後には自然に治る病気なので、ロタウイルスの対処法は医者の間でも2通りに別れています。一つは基本に忠実に、飲み物・食べ物をギリギリのところまで制限して、下痢・嘔吐の回数を最小に抑え、脱水になるのを少しでも遅らせるようにしながら回復を待つという方法。もう一つは、飲まなくても食べなくても下痢・嘔吐は続くし、本人が食べたがってしょうがないのなら、好きなように飲み食いさせてしまおうという考え方。どちらも、それで脱水になってしまったらしかたがないから点滴をしましょうという点では同じです。

 で、私はどちらの一味かというと、ロタウイルスだという診断がついたら、初日は基本通り「絶飲食(飲まず食わず)」を実行していただきますが、それ以降食欲があるなら好きなように飲み食いさせてしまおうという一派です。「オイオイオイ、今まで言ってきたことと正反対じゃないか!?」と思われるかもしれませんが、今まで「下痢・嘔吐には断食を!」と申し上げたのは、それによって回復が早まるからです。事実ほとんどのウイルス性胃腸炎は断食によって回復が早くなります。でもロタウイルスは別です。

 どんなに我慢しても、どんなに自由にしても、治るまでの日数は変わりませんし、脱水になる危険性も変わらないのです。これは長年の私の経験です。しかも本人がすごく食べ物・飲み物をほしがっているとなったら、我慢させるだけかわいそうだと思うのです。

 我慢するのは早く回復するというメリットがあるからで、我慢させても結果がちっとも変わらない(なんのメリットもない)のなら、我慢させるだけかわいそうだと思いませんか?

 ロタウイルスは、便さえお持ちになれば30分以内に結果がわかる簡単な検査キットがあり、診断は比較的容易です。ですからこども診療所では、ロタウイルスという診断がついたお子さんにはクスリも出さず、「明日から好きなものを自由に飲み食いしていいですよ」と申し上げています。「ただし、それで脱水になっちゃったら点滴ですよ」とも付け加えます。そして毎日、あるいは1日おきに様子を見せていただくために来院していただきます。さいわいなことにこの方法で点滴しなければならなくなるお子さんはこども診療所では年に一人いるかいないかです。

 しかし、自由に飲み食いする方法がいいという医者は少数派です。ほとんどの医者は下痢止めや吐き気止めを処方して、「固形物はやめて水分だけを少しずつこまめに飲ませてください」と指導しています。そしてこの方法のほうが基本に忠実であることは私も認めています。でも、この方法に回復を早めるというメリットがあまりないのなら、自由に飲み食いできるほうがお子さんは楽ではないかと考えているのです。

 最後に繰り返しますが、自由飲食法はロタウイルスの場合だけです。他のウイルスによる胃腸炎に対しては、「心を鬼にして」断食させてください。





posted by YABOO!JAPAN at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所医学講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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