2014年09月10日

水痘ワクチンについて

inj.jpg 曜日は「予防接種講座の日」。なぜなら予防接種に使うワクチンは液体()だから・・・。


 水痘ワクチンが10月1日から定期接種化されること、そしてそれはどのように実施されるかという制度的なことについては、ホームページの「トピックス」で具体的に詳しくご説明いたしました。

 また、水痘(水ぼうそう)がどんな病気かというおさらいは、一昨日の医学講座でスタートいたしました。

 そこで今日は、水ぼうそうにかからないようにする水痘ワクチンについて勉強してみましょう。

    《水痘ワクチンって?》

水痘ワクチンは1974年に日本で開発された、日本で唯一の水ぼうそう予防のための生ワクチンです。このワクチンは岡クンという男の子が水ぼうそうにかかった時に採取されたウイルスを基に作られたので、「岡株」と呼ばれています。

岡株は水痘ワクチンを製造するのにふさわしい唯一の株としてWHOに承認されています。いま世界中で使われているすべての水痘ワクチンが岡株から作られています。

水痘ワクチンは1986年に製造販売の承認を受け、1987年から販売が開始されました。当初このワクチンは白血病や重症の腎臓病など、水ぼうそうにかかると生命の危険が大きい病気にかかっているリスクの高い小児を対象に接種が行われていました。

もともと重い病気のお子さんですから、ワクチン接種の副反応が重いともとの病気そのものが悪化しかねません。ですから、このワクチンは副反応の心配がほとんどない、現在我が国で使用されているワクチンの中で最も安全なワクチンと言っていいと思います。

その反面、免疫効果の持続という点では同じ生ワクチンである麻疹ワクチンや風疹ワクチンより少し劣ります。そのため、ワクチンを接種したのに水ぼうそうにかかってしまったということが時々見られます。

欧米各国では、遅くとも2000年代前半には水痘ワクチンは定期接種として導入されましたが、我が国ではずっと任意接種のままでした。10月1日からやっと定期接種に導入されることは再三お伝えしているところです。

    《水痘ワクチンの接種回数》

我が国より早く水痘ワクチンの定期接種を始めた欧米各国でも、当初接種回数は1回だけでした。しかし現在では2回接種が常識になっています。1回接種では発病を完全には防げないからです。

我が国では、水痘ワクチンの有効性と2回接種の必要性はかなり前から確認されていましたが、政策として現場に反映されることはありませんでした。しかもかなり高価なワクチンですから、医者のほうも「接種してもかかってしまうことがあります」とまでは言えても、「2回接種すればほぼ確実に発病を予防することができます」とは言いにくい面がありました。

我が国の調査では、水痘ワクチン1回接種後に水ぼうそうにかかってしまう方の割合は約15%と言われています。そして、症状的にはワクチン接種を受けなかった場合に比べて軽症で終わる場合が多いということもよく知られていました。

それで我々医者たちは「接種してもかかっちゃうかもしれないんだけど、軽く済むからまあ我慢してね」とか何とか言って1回接種を続けてきました。

欧米各国に比べて日本では予防接種によって病気そのものを撲滅してしまおうという発想が国民にも行政にもあまりなかったということが言えます。「ワクチンによって防げる病気からこども達を守ろう」という発想です。「守る」というのは極端に言えば「命を守る」ことで、「かかっても軽く済むなら…」というのが日本人的感覚だったこともあります。

今回の定期化にあたって、始めから2回接種でスタートすることは、世界の潮流とはいえ日本の予防接種行政もそれなりに進歩したと評価してもいいのではないでしょうか。

    《2回接種の間隔》

ところで、水痘ワクチンと同じ生ワクチンで、接種開始時期(1歳の誕生日から)も同じMR(麻疹風疹混合)ワクチンも2回接種です。でも、1回目の接種と2回目の接種の間隔は4〜5年となっています。水痘ワクチンの接種間隔は標準で6か月〜12か月(最低3か月)です。ずいぶん違いますね。

この大きな違いの理由はどこにあるのでしょうか?

数年前に高校生や大学生の間で麻疹(はしか)の大流行があったことはまだ記憶にあると思います。その時の高校生や大学生が子どもだったころ麻疹ワクチン(単独だった)の接種は1回だけでした。そしてその当時は「麻疹ワクチンは生ワクチンだから接種後体内でゆっくりと増殖するので免疫は一生持続する」と言われていました。

でも免疫が一生持続しないことは事実として突きつけられてしまったのですね。そこで、麻疹ワクチンを2回接種することになり、その間隔をどうするかが議論されました。でも、数年前の大流行の中心が10代後半以降の青少年だったということは、1回接種の後約10年程度は免疫があると考えてもいいということだと思います。そこで、麻疹単独ではないMRワクチンの2回目の接種は小学校入学前の1年間(5歳〜6歳)ということになりました。

一方、水痘ワクチンではどうかと言いますと、アメリカでは日本のMRワクチン(アメリカではおたふくかぜワクチンも入ったMMRワクチン)と同じように、水痘ワクチンの2回目の接種は4〜6歳で、これは1回目に獲得した免疫がなくならないうちに2回目の接種を行うという考え方です。

ところがドイツでは、1回目を1歳になってすぐ接種したら、2回目は1歳3か月から2歳未満の間に接種することになっています。間隔は最低4〜6週とされています。こちらは10月1日から実施される日本の定期接種の間隔に似ていますが、間隔は最低3か月としている日本よりももっと短いですね。

ドイツと日本の接種間隔が短い理由を説明します。

水痘ワクチンは、1回目の接種で体内に十分な免疫(抗体)が作られないことが他のワクチンよりやや高率であります。ワクチンを接種したのに水痘にかかってしまうことがあるのは、このことが大きな理由になっています。「免疫があるのにかかる」のではなく「免疫がないからかかる」という当たり前のことが起こってしまうのです。

しかもドイツでは水ぼうそう罹患のピークが1歳〜4歳と低いので、1回目の接種で十分な免疫が作れなかったこども達に早めに2回目の接種を行うことが必要になっています。2回目の接種を行うことで十分な免疫が作られ、発病をほぼ100%予防することができます。

日本では水ぼうそう罹患のピークは以前は4〜5歳でしたが、乳児保育の増加によって低年齢児の発病が増加しています。ですから事情はドイツに似ていて、1回目の接種で十分な免疫が作れなかったこども達に早めに2回目の接種を行うことで十分な免疫を与え、発病をほぼ100%予防しようという戦略です。

水痘ワクチンについてのお勉強、いかがでしたか?
水痘ワクチンの理解を深めていただけたものと思いますが、接種時期について疑問をお持ちの方も多いと思います。なぜなら、1歳というのは、MRワクチン、ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンの追加などと、ワクチンラッシュのときでもあります。

ましてや今年の定期接種化の時期はインフルエンザ予防接種の開始時期と重なっていますから、ますます複雑です。

そこで来週以降の予防接種講座では「予防接種:インフルと水痘どっちが先?」というお話と「1歳の誕生日からの予防接種スケジュール」というお話でいつもの交通整理をしてみたいと思います。どうぞお楽しみに。




posted by YABOO!JAPAN at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所予防接種講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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