2016年03月03日

育児講座23「いい先生って?」

oxfam.jpg 育児講座とはいっても決して堅苦しいものではありません。また、直接育児に役立つような知識というわけでもありません。世間でまかり通っている育児の情報に「ホントかいね?」と疑問を投げかけ、ちょっとした考え方の変化で育児が楽しくなるようなそんな記事を掲載しています。


     第23回  「いい先生って?」

 「先生といわれるほどの馬鹿でなし」という言葉があります。確かに、「先生、先生」とおだてられてふんぞり返っているオバカサンな先生達が世の中にはいっぱいいます。私も医者のはしくれですから、先生と呼ばれます。40年以上も医者をやっていますと、診療所ではもちろん医療とは関係のない場でも先生と呼ばれますから、今ではもう先生と呼ばれることが当たり前と思いこんでしまって、たまに「先生」ではなく「さん」付けで呼ばれたりすると思わず「ムッ」としちゃったりしてよく反省しています。まさに「先生といわれるほどの馬鹿でなし」です。

 医者も先生ですが、学校の教師、習い事の師匠、議員さん達みんな先生です。中国では年配の人に対する敬称として「先生」と呼ぶそうで、読んで字のごとく「先に生まれた」という意味でしょうか。

 今でこそ診察室でお目にかかるお母さんよりは「先に生まれた」存在になりましたが、医者になりたてのころは私よりも「先に生まれた」お母さんが多くて、先生と呼ばれるのも気が引けたものです。先生と呼ばれるだけでも気が引けたようなありさまですから、いい先生かどうかなんていうのは夢のまた夢でした。それが今では「いい先生ってどんな先生?」と聞かれると「私みたいな先生」などと平気で答えるようになってしまったのですから歳月というのは人を変えるものだとつくづく感じます。

 さて今回は「いい先生(医者)」について考えてみましょう。それが「私みたいな先生」かどうかは読んだあとで皆さんが判断なさることです。

 無口で病気の説明も何もしてくれない、質問でもしようものなら「患者はそんなこと知らなくてもいい」と怒る先生と、こまごまと病気の説明から薬の飲ませ方、家庭での看護の仕方までくだけて話してくれる先生とどっちがいいかと聞かれたらまず誰でも説明をよくしてくれる先生がいいと答えるでしょう。ところがこの二人が外科の先生で、無口でおっかない先生は腕がよくて、やさしくて気さくな先生はちょっと頼りないとしたら、おっかなくても腕の立つ先生に手術してほしいと思うかも知れませんね。

 もちろんやさしくて気さくで腕も立てばそれにこしたことはないわけで、その先生がたとえ夜中でも気軽に診察してくれて、近所での評判もよく、世間でも有名だとなったら、それこそ百点満点のいい先生ということができるでしょう。

 こうやって客観的な医者の評価を重ねていけば、理想的ないい先生像ができるかもしれません。でもそれはあくまでも客観的な理想像であって、医者と患者さんの関係が人と人との個別的なつながりであることを考えれば、それだけでいい先生を定義することはできません。このような方法で作り上げられる「いい先生」というのは、「ダメな先生」に対する「イイ先生」であって、医者と患者さんの関係においては、「イヤな先生」に対する「イイ先生」も必要なのです。

 「イヤな先生」に対する「イイ先生」というのはどういうことかといいますと、一言でいえば「ウマが合う」ということです。

 「病気の説明や治療の説明を聞いても何となくしっくりこない、100%納得した気分になれない」というようなとき、きっとその医者と患者さんは「ウマが合わない」のです。医者が悪いのでもなく、患者さんが悪いわけでもないのです。一方、「病気の説明や治療の説明がスッキリと心の中に入ってくる」と感じたら「ウマが合う」と考えていいでしょう。

 不思議なことに「ウマが合う」医者とは話が弾み、納得はさらに深まり、信頼の気持ちもはぐくまれます。

 ウマが合うというのは、医者と患者さんの性格的なものだけとは限りません。病気の治療法についてもウマが合う・合わないがあるのです。病気の治療法というのは一つだけとは限らないのです。どんなに最新の、どんなに高度な治療法でも、ウマが合わなければ病気はよくならないのです。

 さらに、医者のほうがウマを合わせることも必要なことがあります。

 たとえば、医者が「このお薬は1日3回ずつ、必ず1週間飲み続けて下さい。」と説明したとき、それだけできっちりと1日3回1週週薬を飲む人もいれば、ついうっかりと飲み忘れるか、症状が消えてしまうと飲むのをやめてしまう人とか、1日3回で効くなら5回飲めばもっと効くだろうと勝手に判断してしまう人とかがいるのです。

 そのような場合、医者は相手の性格にまで踏み込んで、語気荒く断言したり、くどくどと説明したり、飲まなくてもいい薬のように思わせたり、いろいろな演技を要求されるのです。

 ですから、自分の前の人と同じ病気のはずなのに前の人とは全然違う説明を受ける、ということだってあるのです。それを「あの先生は人によって言うことが違うから信用できない」などと言ってはいけないのです。むしろ、そういう説明のしかたで、多くの人達に「あの先生とは何となくウマが合う」と思わせることのできる医者があなたにとって本当に「いい先生」なのです。

 「ウマが合うのがあなたの名医」と考えてくださいネ。「ホンマカイネexclamation&question


posted by YABOO!JAPAN at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所育児講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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