2014年09月15日

水ぼうそうのおさらい(2)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 先週に引き続き水痘(水ぼうそう)について復習してみようと思います。

    《水ぼうそうの診断》

cpox1.png 典型的な水疱を形成した時期の水ぼうそうの診断は比較的簡単です。一目でわかるという感じです(右の写真の乳首の下の方にある一番大きな発疹)。でも、発疹の起こり始めは、虫さされの直後や入浴後などに見られる赤い斑点などとそっくりで、水ぼうそうと断定できないこともあります(写真の左上の方や乳首のすぐ上の発疹)。そんなときは翌日もう一度来院していただくことで水ぼうそうと他の原因の発疹とを見分けることができます。
 とにかく見ることで診断がつく病気です。

 診断に困るケースについていくつか例を挙げておきます。

(1)保育園や幼稚園の先生が発疹を見つけ、「水ぼうそうかもしれないので医者にかかってください」と言われてすぐに受診した場合

 集団生活の場では感染症は目の敵にされます。それで園の先生、特に保育園の先生は我々小児科医より初期の発疹を見つけるのが得意です。しかも当たる確率も高いのです。でも、園の先生はいいですよね。「医者に行っておいで」と言えば、そのあと診断に責任を持たなくてもいいのですからね。
 ところが我々小児科医は、先程お話しした「虫さされの直後や入浴後などに見られる赤い斑点など」と区別をして診断をつけなければなりません。それができない時はしかたなく「明日またお出で下さい」となります。
 もちろん、保護者の方が発疹を見つけてすぐに来院されたときも同じことになります。

 翌日診察する時のポイントは、もちろん水疱ができているかどうかですが、もう一つ、発疹が増えているかどうかということも大切です。水ぼうそう以外でできた発疹は翌日までに増えることはほとんどありません。

(2)予防接種を受けたのにかかってしまった場合

 水痘ワクチンの1回接種だと約15%の方が接種を受けたのにかかってしまうということが起きます。でも、接種せずにかかった時より軽くなることが知られています。軽さの程度ですが、水疱を形成してくれれば診断はかなり容易になりますが、中には水疱にならないほど軽くなるケースがあるのです。また、初日に数個の発疹ができたきり、それ以上に発疹が増えないケースもあります。この場合、翌日お出でいただいても「う〜〜〜ん」とうなることになります。
 もしそれが本当に水ぼうそうであれば、感染力がありますから、園や学校はお休みしなければなりません。保護者の方の心情(お仕事などをお休みしなければならない)をお察しすると、そう簡単には「水ぼうそう」とも言えません。
 世の中にはそういう小児科医が多いらしく、接種後の水ぼうそうの子が園や学校で集団感染を引き起こすということがけっこうあるようです。

 10月1日から水痘ワクチンは定期接種で2回接種になります。皆さんが2回接種を受けて、「2回接種を受けているから水ぼうそうではありませんよ」と自信を持って言える日が少しでも早く来るように願っています。


    《水ぼうそうの治療》

 水ぼうそうは合併症など引き起こさなければ自然に治る病気です。自然治癒には7日から10日かかります。自然に治るとはいっても、発疹はかゆみを伴いますので、かゆみ止めの乳液状のクスリ(外用薬)や内服薬を使用することが多いです。水疱をかきこわすことで、水疱の中のウイルスが皮膚の別の所に発疹を起こすことの予防の他に、かきこわしから細菌が侵入して皮膚感染症を起こすのを防ぐためです。

 最近は抗ウイルス薬が使われます。ウイルスの発育を抑えて、発疹の数や発疹がかさぶたになるまでの時間を短縮することができます(軽症化)。どれくらい軽くなるかというと、私は「約30%オフ」と説明しています。
 例えば、仮に水疱が100個できるはずだったとすれば70個ぐらいになる、治るまでが1週間だったとすると4・5日になる、という具合です。
 
 日本では、水ぼうそうという診断がつくとほとんどの医者がこの手のクスリを処方しますが、欧米では重症の場合に厳密に限られています。
 でも、「少しでも軽く済んでほしい、少しでも早く治ってほしい」という親心を思って私も日本の医者として抗ウイルス薬を処方しています。かゆみ止めだけで行くか、抗ウイルス薬を飲むかご相談の上でご希望があればということにはしていますけど。

 合併症の治療はそれぞれの疾患によって違ってきますので、ここでは触れません。

 
    《水ぼうそうの予防》

 もっとも確実な水ぼうそう予防の方法は水痘ワクチンの2回接種です。

 はしか(麻疹)はかつて年間に500人以上の方が命を落とすという疾患でしたが、2回接種の定期化と接種キャンペーンのおかげで現在撲滅寸前の状態にまでこぎつけています。

 水ぼうそうは現在年間100万人位の方がかかって、約4000人の方が入院し、約20人の方が命を落とす(いずれも推定)という状況です。重症度こそはしかに比べれば軽いと言えますが、それでも100万人もの方が水ぼうそうにかかるということは、医療経済的に見ても決して軽視できない数字であると言えます。

 水痘ワクチン2回接種の普及によって、近い将来水ぼうそうが絶滅できるといいですね。

 水痘ワクチンについては、このブログの「こども診療所予防接種講座」をご覧ください。

 それ以外の予防についてお話ししましょう。それ以外というのは、「水ぼうそうの子(人)と接触してしまった、何とか発病を予防できないか?」という場合です。

(1)追っかけ免疫
 水ぼうそうの人と接触して72時間以内に水痘ワクチンを接種すれば、発病を抑えられるか、あるいは軽く済ますことができるということは、以前から言われていて、実際に接種を行っている医療機関もあります。医者の間ではこれを「追っかけ免疫」と呼んでいます。ウイルスが先に入ってしまったけれど、そのウイルスを追いかけるようにワクチンを接種するということです。

 この場合には任意接種ということになり有料です。任意接種の場合、接種料金は各医療機関が定めた金額になりますが、1万円近い金額に設定している医療機関が多いのではないかと思います。かなり高額なワクチンですので、それほど普及しているわけではありません。

(2)予防投薬
 水ぼうそうの潜伏期は約2週間です。そこで、発病の日の見当をつけて、水ぼうそうの人と接触したあと7日目ないし10日目から1週間、水ぼうそうの治療に使う抗ウイルス薬を、実際に治療に使う量の半分を飲んで発病を押さえ込もうという治療です。

 こちらも、保険診療ではありませんので、全額自費となります。抗ウイルス薬もそれなりに高価なクスリです。

 では、追っかけ免疫と予防投薬ではどちらがよいかというと、これにはさまざまな意見があります。

 追っかけ免疫は発病を完全に抑えられるという保証はありません。発病してしまえば水ぼうそうにかかった状態ですから、お休みしなければいけないことになります。うまく発病を抑えられれば、体内に水ぼうそうに対する免疫ができます。もちろん1回接種としての免疫です。

 過去に任意接種で水痘ワクチンを1回接種していた場合に、追っかけ免疫で2回接種と同じ効果が得られるかというと、それには条件があります。1回目の接種から4・5年以内だったら2回接種とほぼ同じと考えていいだろうと思います。それ以上間隔があいてしまったら、1回接種と同じに近いと考えたほうがいいと思います。

 一方、予防投薬の場合、ほぼ確実に発病を抑えることはできます。しかし、水ぼうそうに対する免疫はできません。大人の方はお子さんに比べれば水ぼうそうの人と接触する機会は格段に少ないですから、たとえ免疫はできなくても発病を確実に抑える方法を選ぶというのはかなり有力な考え方だと思います。

 そういう見方からすると、お子さんには「追っかけ免疫」を、大人の方には「予防投薬」を、という図式ができそうですが、そう簡単なものではないと思います。

 でも、水痘ワクチン2回接種が普及すればこういう心配もしなくて済むわけですから、「水痘ワクチン待望の定期接種化」というところです。

 それから実際に水ぼうそうにかかったことがある場合、お子さんでも大人の方でも、「追っかけ免疫」も「予防投薬」も必要ありません。



 「水ぼうそうのおさらい」第2回の今日は水ぼうそうの診断と治療、そして予防のお話でした。私の個人的な意見も入っていますので、日本全国どこの医者に行っても同じ対応とは言えないと思いますが、参考になさってください。

 「水ぼうそうのおさらい」は今回で終了です。ご覧いただきありがとうございました。


posted by YABOO!JAPAN at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所医学講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック