
昨年10月から水痘ワクチンが定期接種化され、1歳のお誕生日から接種すべきワクチンが1つ増えるました。
ところが、1歳から2歳の間というのは、元々接種すべきワクチンがたくさんありました。そこに水痘ワクチンを割り込ませるわけですから、スケジュールづくりにはけっこう頭を使わなければなりません。
そこで、予防接種講座恒例の交通整理をしてみようと思います。あくまでも交通整理ですから、このスケジュール通りでなければいけないというわけではありません。いつも申し上げている通りです。
《1歳からの予防接種》
1歳のお誕生日から接種可能なワクチン(定期接種のみ)は次の通りです。
■ MR1期(麻疹風疹混合)
2期(2回目は5・6歳で)
■ 水痘(水ぼうそう)1回目
3歳までに2回接種
■ 肺炎球菌追加
1歳から1歳3か月の間
■ ヒブ追加
3回目接種後7か月〜13か月
*任意接種(有料)になりますが、おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンも1歳のお誕生日から接種可能になります。
《MRを優先する接種スケジュール》
こども診療所では、MR1期ワクチン」の接種を最優先(1歳になったらなるべく早く)でお勧めしています。
そのような前提での接種スケジュールは次の中から選んでください。
1−1)まずMR1期ワクチンを接種
その4週間後に肺炎球菌ワクチン追加を接種
その1週間後にヒブワクチン追加を接種
その1週間後に水痘ワクチン1回目を接種
(すべてのワクチンを別々に接種する方法です)
1−2)まずMR1期ワクチンを接種
その4週間後に肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの追加を同時接種
その1週間後に水痘ワクチン1回目を接種
(肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンを同時に接種する方法です)
1−3)MR1期ワクチンと水痘ワクチン1回目を同時接種
その4週間後に肺炎球菌ワクチン追加を接種
その1週間後にヒブワクチン追加を接種
(MR1期ワクチンと水痘ワクチンを同時に接種する方法です)
1−4)MR1期ワクチンと水痘ワクチン1回目を同時接種
その4週間後に肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの追加を同時接種
(MR1期と水痘を同時に、そして肺炎球菌とヒブを同時に接種する方法です)
1−5)MR1期と水痘1回目と肺炎球菌とヒブの追加を同時接種
(すべてのワクチンを同時に接種する方法です)
《肺炎球菌とヒブを優先する接種スケジュール》
こども診療所ではMR1期の接種を最優先でお勧めしていますので、上記の1)〜5)の接種スケジュールがこども診療所の基本接種スケジュールとなりますが、肺炎球菌とヒブの追加を優先する接種スケジュールも不可能ではありません。
2−1)まず肺炎球菌ワクチン追加を接種
その1週間後にヒブワクチン追加を接種
その4週間後にMR1期ワクチンを接種
その4週間後に水痘ワクチン1回目を接種
(すべてのワクチンを別々に接種する方法です)
2−2)まず肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの追加を同時接種
その4週間後にMR1期ワクチンを接種
その4週間後に水痘ワクチン1回目を接種
(肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンを同時に接種する方法です)
2−3)まず肺炎球菌ワクチン追加を接種
その1週間後にヒブワクチン追加を接種
その4週間後にMR1期ワクチンと水痘ワクチン1回目を同時接種
(MR1期ワクチンと水痘ワクチンを同時に接種する方法です)
2−4)肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの追加を同時接種
その1週間後にMR1期ワクチンと水痘ワクチン1回目を同時接種
(肺炎球菌とヒブを同時に、そしてMR1期と水痘を同時に接種する方法です)
肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンは不活化ワクチンですので、接種後1週間でほかのワクチンを接種することができます。MRワクチンと水痘ワクチンは生ワクチンですので、接種後4週間はほかのワクチンを接種することができません。なるべく短期間で接種を済まそうという効率主義で考えれば不活化ワクチンを先に接種したほうがずっと効率的です。
でも、予防接種を効率だけで考えるのは危険です。
《こども診療所がMRワクチンを優先する理由》
肺炎球菌ワクチンやヒブワクチンや4種混合ワクチンは3回の接種が済んだあとそれぞれ一定の期間を置いて追加の接種を行うことになっています。
追加接種は以前に接種したワクチンの効果がなくなったから行うのではありません。まだ免疫効果が十分ある間に追加を接種して効果をより強くより長く効かせようとするものです。
ところが、MRワクチンに含まれる麻疹(はしか)の免疫は、生まれた時にはお母さんのおなかの中でで受け取った分で十分なのですが、生後6か月ごろからだんだん弱まって、1歳の誕生日を迎えるころにはすっかりなくなってしまいます。
麻疹(はしか)は現在日本のこどもたちを脅かす可能性のある病気としては最重症に分類される怖い病気です。
肺炎球菌やヒブ菌による感染症も怖い病気であることに変わりはありませんが、1歳になった時の予防接種の順序としては、まだまだ十分に免疫効果のある病気(肺炎球菌やヒブ菌)よりは、免疫のなくなってしまった病気(はしか)を優先するのは当然だと思いませんか?
でも、こうおっしゃる方もいらっしゃいます。
「不活化ワクチンの後は1週間で生ワクチンを接種できるのだから、肺炎球菌とヒブ菌を先にやってもいいんじゃないの?」
おっしゃる通りです。でも、その1週間の間にはしかにかからないという保証、私には絶対できません。
《接種スケジュールの選び方》
交通整理といいながらスケジュールの候補が9種類もあるのでは、どれを選べばいいのかわからないという方もいらっしゃるでしょう。
選び方のヒントを差し上げます。
9種類とはいっても、子ども診療所ででお勧めしているのはMR1期を優先する5種類だけですから、その中で考えることにしましょう。
こども診療所ではもともと同時接種は1日2種類までを基本としています。ご希望があれば3種類でも4種類でも接種は行いますが、こちらからお勧めすることはありません。ですからスケジュール1−5)はお勧めスケジュールからは外れることになります。
残り4種類は、すべて別々に接種するか、同時接種を組み合わせるかという選択になります。
別々に接種すると、通院回数は増えますが、副反応が出た時の原因ワクチンがわかりやすくなります。
同時接種を組み合わせると、通院回数は減りますが、ワクチンの種類が多くなればなるほど、副反応が出た時の原因ワクチンがわかりにくくなります。
どちらを優先するかが選択のポイントです。
《2歳になるまでに受けるその他の予防接種》
1歳になったらまずは今まで述べてきた4種類のワクチン接種を済ませましょう。
そのあとで2歳になるまでに接種するワクチンは次のようになります。
■ 水痘(水ぼうそう)ワクチン2回目
1回目の接種から6か月〜12か月の間
1回目の接種時期によって2歳を過ぎることがあります
3歳までに2回終了させます
■ 4種混合ワクチン追加
初回接種の3回目終了後1年〜1年6か月の間
3回目の終了時期によって2歳を過ぎることがあります
■ おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン
定期接種ではありませんので(任意接種)有料となります
1歳の誕生日から接種可能です
集団生活(保育園など)に入るお子さんは早めの接種をお勧めしますが
予定がなければ2歳過ぎの接種でもよいでしょう
2歳前のお子さんのおたふくかぜはとても少ないのです
(ないとはいいません)
おたふくかぜの接種は任意ですので
受けるかどうかはご自分でお決めください