2016年03月21日

花粉症にワセリン????

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 花粉症のシーズンまっただ中、つらい症状でお悩みの方も多いと思います。近年花粉症の症状を訴えるお子さんも増えているように感じます。これらお子さんの花粉症がすべてアレルギー反応に基づいているかという点では、私は多少疑問をもっているのですが、それはまたあとで触れるとして、花粉症の予防に関して面白い記事を見つけましたのでご紹介したいと思います。

 花粉症対策として鼻の穴にワセリンを塗る方法の紹介です。まずはこちらの記事をご覧ください。(左の文の「記事」という文字をクリックするとリンクします)

 大変長い記事でしたが、お読みいただけましたでしょうか?

 「ウッソダロ!バカバカシイ!」と思われたあなた。普通はそう思いますよね。でも私は20年以上前に似たような経験をしたことがあるのです。

 その当時私は愛育病院に勤めていました。そこの小児科の看護婦さん(その当時は看護師という呼称はなかったんです)が、「鼻づまりの時に鼻の穴にレスタミン軟膏を塗るといいですよ」と教えてくれたのです。

 レスタミンというのは抗ヒスタミン薬で、蕁麻疹の治療や虫さされのかゆみ止めに使います。内服薬は鼻汁の分泌を抑えるので風邪薬としても使います。ただ、内服薬は眠くなるという欠点を持っていました。しかし鼻の穴に塗る(外用薬)のなら眠くなる心配はありません。しかも鼻の粘膜のむくみを取ってくれる作用も持っているとも思えます。さらに液体と違って長く鼻の粘膜にとどまってじわじわと吸収されますから、効果が持続するという利点もありそうです。

 とまあ、いいほうに考えたのですがそれでも半信半疑でいました。その内不覚にも風邪をひいてしまってひどい鼻づまりとなってしまいました。診察中に鼻汁はたれてくるしでダメモトと思って試してみました。そしたら不思議なほどよく効きましたねぇ。塗ってしばらくすると鼻はスースー鼻水ピタリで効果は抜群でした。しかも眠くもなりません。教えてくれた看護婦さんに感謝、感謝です。

 でもレスタミン軟膏のこのような使い方は健康保険では認められていませんし、まっとうな医学書にもこのような使い方の記載はありませんでしたから、患者さんにお勧めすることなくいつの間にかそのことを忘れていました。

 最近になってレスタミンとワセリンの違いはありますが似たような使い方の記事を見つけて、昔のことを思い出したという次第です。

 そこで早速ネタ元の「NHS choces」(クリックでリンク)にアクセスしてみました。確かにそのような記載がありました。原文は次の通りです。

 Rubbing a small amount of Vaseline (petroleum gel) inside your lower nostrils can help to prevent pollen from entering your nasal passages.

 日本語の記事にも和訳が載っていましたが、直訳しますと「あなたの下部鼻腔(訳者注:鼻の穴の入口に近い方)の内側に少量のワセリン(ペトロリアム ゲル)をこすりつけることがあなたの鼻の通り道に花粉が入るのを防ぐ一助になりえます」となります。

 NHSというのはイギリスの国民健康保険みたいなサービスを取り仕切るお役所で、日本の厚生労働省の一部門といえるれっきとした政府機関です。そのサイトに掲載されているのですからあながちでたらめとは言えないでしょう。

 私が経験したレスタミン軟膏と違うところは、レスタミンが抗ヒスタミン薬として作用を発揮するのに対して、ワセリンは花粉を吸着させることによって花粉の侵入を防ぐということのようです。ということは、鼻の粘膜に近いところから入ろうとする花粉は吸着できるけれど、鼻の穴のど真ん中を通る花粉は通過してしまうということですね。やはり直訳通り「花粉が入るのを防ぐ一助になりえます」程度の効果しか期待してはいけないのではないでしょうか?日本語の記事のタイトルのように「花粉症の救世主?」というのはちと言い過ぎのように思えます。

 ただ、純度の高いワセリン(日本での商品名はプロペト)は眼軟膏の基剤として使われています。目の粘膜に塗っても大丈夫なら鼻の粘膜でも大丈夫と言うことはできると思います。自分で試してみるのが一番なのでしょうが、私には花粉症の気がまったくありません。歳をとってからは人間が枯れてきて風邪をひいても鼻づまりや鼻汁に悩まされることも少なくなってきています。残念ながら自分で試す機会がないのです。

 プロペトはこども診療所でも使っていますが、花粉症対策として健康保険で処方することはできません。でも市販薬として購入することもできますから、一般的な予防法や治療法で今ひとつ効果が、という方は試してみて害になるものではないと思います。ワセリンのたぐいは一般的には保湿剤として広く使われていますから、乾燥肌の予防や治療にも使うことができます。


posted by YABOO!JAPAN at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所医学講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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