
先週は熱性けいれんが起こるメカニズムみたいなことをお話しました。今週は実際に熱性けいれんが起こるとどういう風になるか、そして、その時どのように対処すればよいかについてお話します。
一般的にけいれんには3つのパターンがあります。がたがたふるえるタイプと全身を硬直させつっぱってしまうタイプと意識だけがなくなるタイプです。熱性けいれんでは前の2つがほとんどで、意識だけがなくなるパターンはごくまれです。また、前の2つのタイプでも、けいれんを起こしている間は意識はありません。さらに、これもけいれん全般に言えることですが、けいれんを起こす直前にうめき声や叫び声を出したりすることが時々あります。熱性けいれんでもあります。
けいれんが起きているときの顔色は血の気が失せ、青白ないしは青紫色になります。唇の色も同様で青紫から赤紫色に変わります。目は閉じているか半開きで、視線の焦点が合わず、虚空を見つめているという感じになります。目をきょろきょろ動かすことは少なく、逆にどこだかわからない一点を凝視している感じに見えます。お子さんがどこか別の世界へ行ってしまったように感じるでしょう。
けいれんの持続時間はほとんどの場合数分以内、1分未満のことが多いのですが、初めて経験した方にはとても長く感じられます。時間を見る余裕がないのも事実です。ときに5分、10分、それ以上止まらないこともあり、私は5分以上止まらなかったら救急車を呼ぶようお話しています。家庭の医学などでは「10分以上止まらなかったら救急車を呼びましょう」と書いてあるものが多いのですが、救急車が家の前で待っているわけでもなく、到着までの時間を考えれば5分で呼んでいいと思います。
昔はけいれんによって舌を噛むといけないから割り箸にガーゼをくるんで歯の間に入れるよう指導されていましたが、けいれん中舌を噛むことはまずありません。それより無理やり歯をこじ開けて歯が折れてしまったり、折れた割り箸で口の中を傷つけたり、大人の方が指を噛まれたりのほうが多く、今では歯の間に何かを挟む必要はないといわれます。
それより大切なことは、(1)古い蛍光灯やテレビなど光がチラチラするものは消して、薄暗い白熱灯の部屋に静かに寝かせること、(2)衣服はゆるめて必ず顔を横向きに寝かせること、(3)熱を測る余裕はないと思いますが、からだにさわって熱感があるかどうかだけは確認しておくことなどです。
(1)は、光の点滅がけいれん(脳波の異常)を引き出すことはよく知られていて、脳波検査のときなどわざわざ光が点滅する電球を使って脳波異常が出るかどうかを調べるほどです。何年か前にテレビで「ピカチュー」を見ていた多くの子がけいれんを起こしたことはご記憶と思います。
(2)は、万が一吐いたときに吐物が気管に入るのを防ぐためです。けいれん中は本来持っている反射運動も正常に働かないので、吐物が気管に入ってもむせて吐き出すことができません。吸引性肺炎や最悪窒息を防ぐためには、顔を横向きにして、吐いたものが外に流れ出るようにしておかなければなりません。
(3)は、前回お話したように、熱性けいれんは熱が急激に上昇するときに起きやすく、けいれんの起こり始めにはそれほど高熱ではなく、けいれん中に急上昇することがありますので、けいれんが治まったあとの体温と比較するためで、絶対必要なわけではありません。
「家庭の医学」などには「けいれんを起こしているときは声をかけたり、からだをゆすったりせず、静かに寝かせておきましょう」などと書いてありますが、初めてけいれんをご覧になった親御さんがそんなに冷静になれるはずもなく、「○○ちゃんどうしたの

そうこうするうちにけいれんも治まって一安心。さてそれからどうするか?だいぶ長くなってしまいましたので次回にさせていただきます。
続きが早く読みたいです。
長女は1歳前後に3回熱性痙攣起こしました。それぞれ10分近く、その都度救急車のお世話になりました。7ヶ月の次女にも起きないか不安です・・・遺伝するんですよね・・・私も8歳までひきつけていたそうです・・・
シーズン3楽しみです
医者をやっていればけいれんはいやと言うほど遭遇しているとお思いでしょうが、けいれんのほとんどは熱性けいれん、熱性けいれんは数分以内に治まることが多い、となると医療機関に着いたときにはけいれんはすでに止まってしまっているということが多くなります。
30年以上小児科医をやっていますが、外来(夜間や救急も含めて)で実際に目の前で起こっているけいれんに遭遇したのは、熱性けいれんだけだと100回にも満たないだろうと思います。
ですから今でもけいれんの子を診ると、「だ、だれか、急いで医者を呼べ!」と言いたくなります。もっとも顔だけは「私にまっかせなさ〜い」みたいな顔してますけど…。