
大好評(?)の「熱性けいれん」シリーズも今回が最終回です。今回は、そもそもダイアップを使うべきかどうか、ダイアップの本質に鋭く迫る話題騒然の問題作です。(誰も騒いでないって)
熱性けいれんの予防にダイアップが有効であるということはすべての医者が認めていますが、いざダイアップを使うとすればいつから使うかについては医者の間でも意見が分かれています。一回でも熱性けいれんを起こしたらすぐにダイアップを使い始めたほうがいいという医者もいますし、熱性けいれんを起こしたことのある子の中では一生に一度だけという子が最も多いのだから二回以上起こしてからで十分だという医者もいます。
我が子の熱性けいれんに遭遇した親御さんの心境を考えれば、二度とこんな目に遭いたくない(遭わせたくない)と言ってダイアップを使い始めるのも人情だと思います。二回以上起こしてからというのは現実的な考えだと思います。
まあ、この辺はどちらの立場を取る医者が正しいかという議論を後回しにしても、問題はいざ使い始めたらいつ使うのをやめられるかという質問に正確に答えられる医者がいないということです。たとえば1歳半過ぎからダイアップを常備して発熱時に使ってきたお子さんが、3歳になり、4歳になり、5歳になり、「もう3年近く熱性けいれんを起こしていないのだけれどダイアップをやめることができますか?」と訊かれても、ダイアップを使ってきたからけいれんを起こさなかったのか、それとも使わなくても起こさなくなったのか、自信を持って判断できる医者はいないでしょうし、また判断のための基準というものもないのです。以前のシーズンでお話ししたように、熱性けいれんは7歳を過ぎれば起こさないというのが一つの基準といえばいえますから、絶対安全な道を選ぶとしたら、先程の質問に対しては「7歳までは使いましょう」と答えざるを得ません。
それはそれで親御さんには不安の種になりかねません。そこで私は、私なりの基準として、「5歳になるまでは必ず使う。また、3歳以降2年以上けいれんがなければ恐る恐るダイアップの使用をやめてみる。ただし、やめるかどうかはご両親の判断による。やめてみて、万が一けいれんを起こしてしまったら7歳まで使用を続ける。」というやり方をお勧めしています。早い話がご両親に下駄を預けてしまうわけですが、こればっかりは誰にも正しい判断というのができないと思います。
順序が逆になりましたが、ダイアップの使い始めについて考えてみましょう。これも私の考えになりますが、「熱性けいれんを起こしたことのある子の中では一生に一度だけという子が最も多い」というのは事実ですから、一回起こしてすぐダイアップという考えには賛成しかねます(別に私に人情がないというわけではありませんよ)。二回目のけいれんのあとで親御さんとのご相談です。このシリーズでお話ししてきたようなことを申し上げて、最終的な判断は親御さんにしていただきます。ただ、「二度あることは三度」と言われるように、二回起こしたお子さんは三回起こす可能性が高くなることは付け加えます。
二回目のあとダイアップを使わないと決めた方でも、三回目を起こしたらダイアップの使用をこちらからお勧めします。いくら熱性けいれんは一時的なものであとになんの問題も残さないとはいえ、けいれんを起こしている間は、脳は酸欠状態に近くなっています。もちろんそれでどうこうなるというわけではありませんが、このような状態を何回も何回も続けることは、脳にとってあんまりいいことだとは思えません。それに、三回もけいれんを起こしたら、たいていの方は「次も起きるかも…」と思うはずです。
こうしてダイアップを使い始めた方には「5歳までは必ず使い続けましょう。・・・(上に戻る)」と説明いたします。
永らくご愛読ありがとうございました。これで熱性けいれんのお話はひとまずオシマイとさせていただきます。
確かに特効薬があるのは救いでが、使わないと決めるのは、なかなか勇気が要りそうデス
前シリーズ大変興味深く拝見させていただきました。
これからも楽しみにしています。
5歳までというのは私の考えです。年齢に関わりなく2年間けいれんがなければやめてみるという医者もいます。
やめたくなったらご相談、ケースバイケースということだと思います。