
前回は、下痢・嘔吐が続いているときには、水分を飲ませることによってむしろ脱水を助長しかねないというお話をいたしました。そして、飲ませなければ、脱水になるまでに時間をかせげると申し上げました。でも、ずっと飲まないでいたらいつかは脱水になってしまいます。そこで今回は、もう少し積極的に脱水を予防する手だてについて考えてみましょう。
ただし、下痢・嘔吐が始まった初日には「飲まない・食べない」が最良だと思ってください。脱水予防は2日目から考えてください。
その前に、前回冬の胃腸風邪には色々な病名があると申し上げました。それぞれ病気の特徴や原因をもとに名付けられたものなのでそれなりに理由はあるのですが、保育園や幼稚園、学校などに提出する治癒証明書の病名の欄に様々な病名が入り乱れていてわかりにくいという声が挙がり、江戸川区医師会ではこの冬から病名を「感染性胃腸炎」で統一しようということになりました。英語圏の国ではInfectious Enterocolitis(まさに感染性胃腸炎という意味)という呼び名でほぼ統一されていますので、まあ妥当な病名だと言えるでしょう。
さてそれでは本題に入りましょう。
「下痢や嘔吐があるときには水分を補給する」。これはまったく正しい○。ただ、皆さんが接する情報にはたいてい「下痢や嘔吐があるときには水分を十分補給する」と書いてありませんか?この「十分」がくせ者なんです。この言葉に惑わされて皆さんついつい飲ませすぎになってしまうんですね。もちろん飲んでも吐いたり下痢したりしなければ十分に越したことはないのですが、感染性胃腸炎のときには飲めば飲むほど吐いたり下痢したりということになりがちです。それに食欲もなくて飲ませたいのに飲みたがらないということもあります。そこで私は「下痢や嘔吐があるときには脱水にならない最低限の水分を補給する」と説明しています。
では脱水にならない最低限の水分というのはどの程度のものなのでしょうか?
体重10kgのお子さんが仮に下痢も嘔吐もない状態で、ひどく汗をかくこともないとします。その場合、このお子さんが脱水にならない最低限の水分というのは24時間(1日)で約400mlなんです。単純に考えれば、体重(kg)×40=1日の最低水分量(ml)ということです。これを一度に飲ませてしまったら吐いたりしてしまいます。1回に飲む量をなるべく少なくしてなるべく回数を多く飲ませるのがコツです。
たとえば、「この子を脱水にしないために1日や2日は徹夜してもいい」と決心してくださるならば、1時間毎に17mlの水分を取れば24時間で400mlを達成できます。17mlといえばほんの一口

ま、これは極端な例なので、ここまでやらなくてもいいですが「1回に飲む量をなるべく少なくしてなるべく回数を多く飲ませる」ことを心がけてください。
もちろんこの数字はからだから出て行く水分(下痢・嘔吐)が全くない場合の数字ですから、吐いたり下痢をして水分が失われたときはその分を上乗せしなければなりません。そのとき気をつけなくてはいけないのは、下痢便や吐物のすべてが水分ではないということです。大雑把になりますが、下痢便や吐物の約80%が水分だと考えて1日の水分量を計算しなおしてください。