2017年06月19日

熱性けいれん -シーズン4-

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 熱性けいれんはその場限りのもので後遺症を残さないとは言っても、医者の私でさえ見るのがつらい状態ですから、できればけいれんを起こさせないようにしたいものです。

 熱性けいれんの予防には”ダイアップ”という坐薬を使います。万能ではありませんが正しく使えばかなりの効果が期待できます。今回はこの"ダイアップ"を中心とした熱性けいれんの予防についてお話します。

 ダイアップはジアゼパムというクスリの商品名で、ジアゼパムはもともとけいれんを止めるクスリとしてかなり古くから使われていました。内服薬と注射薬しかありませんでしたが、医療機関に到着した時点でけいれんが治まっていないケースではすぐにこのクスリが静脈注射されました。しかし、小さなお子さんがけいれんを起こしている最中に細い血管にキチンと針を入れるのはとても難しく、ダイアップが登場したときは「これでだいぶ楽になる」と思ったものです。

 このように当初治療薬として登場したダイアップが、しばらくすると熱性けいれんの予防に使われるようになりました。ジアゼパムには内服薬もありますが、内服だと効果が出るのに時間がかかり、急激な熱の上昇のときに間に合いません。しかし坐薬であれば効果は早く始まり、しかも注射と違って一般の方でも簡単に使うことができます。

 では、ダイアップが使われるようになる前の予防法はどんなものだったのでしょう。

 「熱性けいれんは熱があるときしか起きない。だったら熱を下げてしまえばよい。」というのが予防の基本でした。今から思えばずいぶん乱暴な理屈ですが、熱さまし(解熱剤)を使って熱を下げ、また熱が上がり始めたら再び熱さましを使う。という原始的な方法しかなかったのです。しかし、このような方法では、一旦下がった熱が再び急激に上昇したり、家族全員が寝てしまってから熱が上昇したりするとけいれんが起きるのをを止めることができませんでした。でも他に方法がなかったのです。

 ダイアップが予防の主流になってからは基本的な考え方は大きく変わりました。「熱があっても、また熱が急に上昇しても熱性けいれんを起こさせないぞ!」というのが基本です。ですからダイアップを使うときには原則として熱さまし(解熱剤)は使いません。

 また、ダイアップが主役ではあっても、チカチカする蛍光灯やテレビを避けるといった予防法も決して影が薄くなったわけではありません。

 こんなケースもあります。夜中にお子さんが急に熱を出し心配になった親御さんが自分の車にお子さんを乗せて夜間診療所に向かう途中でけいれんを起こしてしまうという例です。

 街路灯だけが灯っているような暗い夜道では、街路灯の真下を走るときは明るく、街路灯と街路灯の間では暗くなり、ちょうど光の点滅と同じ効果が生まれてしまいます。これがけいれんを引き起こしてしまうのです。夜間走行時夜車(セダン)にはお子さんの目にこの街路灯の明暗が入らないようにする注意も必要です。

 ずいぶんと長くなってしまいました。今回は熱性けいれん予防の一般論ということで、ダイアップの具体的な使い方はまた次回とさせていただきます。

 
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2017年06月12日

熱性けいれん -シーズン3-

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 さて、けいれんが治まりました。熱性けいれんはほとんどの場合数分以内、多くは1分程度で治まります。今回は治まったあとどうするかをお話しします。

 まず、けいれんが治まったときにかかりつけの医療機関が診療時間内だったらその日のうちに受診して熱性けいれん以外のけいれんではなかったことを確認してもらいましょう。夜間や休日だったら翌日の受診でもよいでしょう。

 熱性けいれんかどうかは次のような諸点で判断しますが、絶対的な基準というよりは目安程度と考えて、医療機関での判断に任せたほうがよいでしょう。

 熱性けいれんとは?
1)けいれんが起こったとき(あるいは直後に)発熱があること
2)年齢が7歳未満であること
3)けいれんの持続時間が数分以内であること
4)24時間内に一度しか起きていないこと
5)けいれん後に意識障害や麻痺などを残していないこと
6)家族や親族に熱性けいれんを起こした人がいること


 けいれんが治まったあとのお子さんの様子は次の2通りがあります。1つはそのままケロッとして何事もなかったかのように行動する、もう1つは眠ってしまう、です。眠ってしまった場合には起こす必要はありませんが、昏睡でないことを確認するために時々手の甲や足の甲をつねって手足が反応するかを確かめましょう。

 ケロッとしている子も眠ってしまった子(目覚めてから)も次のことを確認しましょう。
1)呼びかけに対して今まで通りの反応があるかどうか
2)今までできていたのに、けいれん後できなくなった運動や行動はないか
3)今までに見たこともないような運動や行動はないか
4)今まで左右同じようにできていたことに左右差が出ていないか


 けいれん後すぐに受診するのであればこれらの確認は医療機関でしてもらえばいいと思いますが、翌日受診の場合などは家庭での確認が必要だと思います。そしてもしこれらの中で1つでも当てはまるようであれば、翌日まで待たずに夜間(休日)診療所や救急病院を受診したほうがよいでしょう。

 前回お話ししたように光の点滅はけいれんを起こしやすくします。けいれんが治まったあとでも古いチカチカする蛍光灯やテレビを見せることは避けましょう。

 食欲があればまず水分を飲ませて吐かないことを確認し、そのあとで好みの食べ物を少量ずつ与えるようにしましょう。

 基本的に熱性けいれんであれば「治まったあとは正常」というのが原則ですから、「なんかおかしい???」と感じたら色々考えるよりもすぐに医療機関を受診するほうが安心だと思います。

 さていよいよ次回はシリーズ最高傑作、ではなかった、シリーズのまとめ「熱性けいれんの予防」についてお話しいたします。



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2017年06月05日

熱性けいれん −シーズン2−

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 先週は熱性けいれんが起こるメカニズムみたいなことをお話しました。今週は実際に熱性けいれんが起こるとどういう風になるか、そして、その時どのように対処すればよいかについてお話します。

 一般的にけいれんには3つのパターンがあります。がたがたふるえるタイプと全身を硬直させつっぱってしまうタイプと意識だけがなくなるタイプです。熱性けいれんでは前の2つがほとんどで、意識だけがなくなるパターンはごくまれです。また、前の2つのタイプでも、けいれんを起こしている間は意識はありません。さらに、これもけいれん全般に言えることですが、けいれんを起こす直前にうめき声や叫び声を出したりすることが時々あります。熱性けいれんでもあります。

 けいれんが起きているときの顔色は血の気が失せ、青白ないしは青紫色になります。唇の色も同様で青紫から赤紫色に変わります。目は閉じているか半開きで、視線の焦点が合わず、虚空を見つめているという感じになります。目をきょろきょろ動かすことは少なく、逆にどこだかわからない一点を凝視している感じに見えます。お子さんがどこか別の世界へ行ってしまったように感じるでしょう。

 けいれんの持続時間はほとんどの場合数分以内、1分未満のことが多いのですが、初めて経験した方にはとても長く感じられます。時間を見る余裕がないのも事実です。ときに5分、10分、それ以上止まらないこともあり、私は5分以上止まらなかったら救急車を呼ぶようお話しています。家庭の医学などでは「10分以上止まらなかったら救急車を呼びましょう」と書いてあるものが多いのですが、救急車が家の前で待っているわけでもなく、到着までの時間を考えれば5分で呼んでいいと思います。

 昔はけいれんによって舌を噛むといけないから割り箸にガーゼをくるんで歯の間に入れるよう指導されていましたが、けいれん中舌を噛むことはまずありません。それより無理やり歯をこじ開けて歯が折れてしまったり、折れた割り箸で口の中を傷つけたり、大人の方が指を噛まれたりのほうが多く、今では歯の間に何かを挟む必要はないといわれます。

 それより大切なことは、(1)古い蛍光灯やテレビなど光がチラチラするものは消して、薄暗い白熱灯の部屋に静かに寝かせること、(2)衣服はゆるめて必ず顔を横向きに寝かせること、(3)熱を測る余裕はないと思いますが、からだにさわって熱感があるかどうかだけは確認しておくことなどです。

 (1)は、光の点滅がけいれん(脳波の異常)を引き出すことはよく知られていて、脳波検査のときなどわざわざ光が点滅する電球を使って脳波異常が出るかどうかを調べるほどです。何年か前にテレビで「ピカチュー」を見ていた多くの子がけいれんを起こしたことはご記憶と思います。

 (2)は、万が一吐いたときに吐物が気管に入るのを防ぐためです。けいれん中は本来持っている反射運動も正常に働かないので、吐物が気管に入ってもむせて吐き出すことができません。吸引性肺炎や最悪窒息を防ぐためには、顔を横向きにして、吐いたものが外に流れ出るようにしておかなければなりません。

 (3)は、前回お話したように、熱性けいれんは熱が急激に上昇するときに起きやすく、けいれんの起こり始めにはそれほど高熱ではなく、けいれん中に急上昇することがありますので、けいれんが治まったあとの体温と比較するためで、絶対必要なわけではありません。

 「家庭の医学」などには「けいれんを起こしているときは声をかけたり、からだをゆすったりせず、静かに寝かせておきましょう」などと書いてありますが、初めてけいれんをご覧になった親御さんがそんなに冷静になれるはずもなく、「○○ちゃんどうしたのexclamation&questionと声をかけ、からだをゆするものです。これはやらないに越したことはありませんが、こうしてしまったからあとの経過がものすごく悪くなるわけではありません

 そうこうするうちにけいれんも治まって一安心。さてそれからどうするか?だいぶ長くなってしまいましたので次回にさせていただきます。
 


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2017年05月29日

熱性けいれん -シーズン1-

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 先々週のこども診療所医学講座で「熱が病気の直接の原因になることは小さな子の熱性けいれん以外にはありません。」と申し上げました。では熱性けいれんとはどのようなものなのでしょうか?そしてまた熱性けいれんというのは果たして病気なのでしょうか?

 今回はこの熱性けいれんを採り上げますが、今日はまず熱性けいれんがどのようにして起きるのかについてお話をいたします。

 人間の脳というのはたくさんの脳細胞でできています。それぞれの脳細胞はいくつかの他の脳細胞と連絡を取り合って、全体としては緻密なネットワークを形成して脳としての働きを維持しています。脳細胞の数やネットワークの緻密さは3歳過ぎには大人の80%程度が完成していると言われます。でも、このネットワークを上手に使う方法や、ネットワークに故障が起きないように調整する能力はまだまだ未熟です。

 この未熟な脳のネットワークに高熱が作用すると、ネットワークの一部が断線したりショートしてしまったりして故障を起こし、脳が異常な信号を発信してしまうことがあります。人間のからだの大部分は脳からの信号によって動いていますから、脳から異常な信号が届けばそれに合わせてからだのほうも異常な動き(運動)をしてしまいます。これが熱性けいれんです。脳に起こった故障は一時的なもので、短時間で修復されます。修復されたあとの脳は全く正常であとに異常や長期にわたる後遺症を残すことはありません。

 この「自動的に修復してあとに問題を残さない」という点が熱性けいれんの特徴で、細菌やウイルスあるいは細胞破壊物質などによって脳細胞そのものに異常が生じて起きるけいれんとは本質的に違います。熱性けいれんでは脳細胞に故障がおきるのではなく、脳細胞のネットワークに一時的に故障が生じるのです。

 熱性けいれんが起こりやすい年齢は1歳少し前から6歳頃までですが、3歳を過ぎると次第に起こしにくくなります。それは脳細胞のネットワークを上手に使う方法や、ネットワークに故障が起きないように調整する能力が次第に高まる(成熟していく)ためと考えられます。生後6ヶ月すぎぐらいまでの赤ちゃんは滅多に熱性けいれんを起こしません。それは故障を起こすほど脳細胞のネットワークができていないからです。また7歳過ぎてのけいれんはたとえ高熱があって熱性けいれんの特徴を備えていても、一応は脳そのものに何か問題(脳炎や髄膜炎、てんかんなど)がないかをチェックします。それは7歳すぎになれば脳のネットワーク故障を高熱から保護する働きがほぼ完成して熱性けいれんは起きないはずだと考えられるからです。

 熱性けいれんは高熱の時に起きると申し上げましたが、同じ高熱でも起きるときと起きないときがあります。理由の一つは、熱を出した原因となっている病気の違いです。たとえば、突発性発疹は熱性けいれんを起こしやすいウイルスとして知られています。このウイルスは脳を刺激しやすい特徴を持っています。一生に一度だけ熱性けいれんを起こしたというお子さんの半分以上はそのときの病気が突発性発疹だったという調査結果もあります。その他にはしかや水ぼうそうも熱性けいれんを起こしやすいウイルスですが、これらのウイルスは熱性けいれんだけでなく脳炎や髄膜炎を起こしやすいので注意が必要です。

 もう一つの理由は、熱の上がるスピードの違いです。仮に39℃で熱性けいれんが起きると仮定した場合、36.5℃の状態から半日ぐらいかけて徐々に熱が上がった場合と30分ぐらいであっという間に熱が上がった場合を比べると、急に熱が上がったときの方が圧倒的に熱性けいれんを起こしやすいのです。脳のネットワークに限らず、小さなお子さんのからだはすべて急激な変化に対応する機能が十分ではないからです。

 また、熱性けいれんを起こしたお子さんのご家族を、叔父・叔母・いとこぐらいの範囲で調べてみると、60%から70%ぐらいの割合でご家族のどなたかが熱性けいれんの経験をお持ちです。その点多少は遺伝的な要素もあると考えられています。

 今週は「熱性けいれんがなぜ起きるのか?」という点に絞ってお話をいたしました。次回は熱性けいれんそのものについて詳しくお話ししたいと思います。



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2017年05月22日

こどもの発熱 ー熱が続くと将来こどもが出来なくなる?-

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 前回の記事の中で「男の子の高熱が続くと将来こどもが出来なくなる」という迷信を2人の親御さんからうかがった、そういう迷信を聞いたのは長い医者生活の中でも初めての経験だった、ということを申し上げました。
 
 宿題にさせていただきましたので、早速調べてみました。

 まずは皆さんと同じようにインターネットで検索してみましたら、けっこう出てくるんですねぇ。出てくることは出てくるんですが、ほとんどすべてと言っていいほど対象は成人男子、つまり大人の男ですね。男の子ではどうなのかという記事は私が調べた範囲では見つかりませんでした。

 そこでまず成人男子の高熱と不妊について私の考えも交えて調査結果を報告します。

 男性の精子は睾丸(精巣)で作られます。(昔は睾丸というのが主流の呼び方でしたが、近年は精巣が主流になっています。そこでここではこれから精巣という呼び名で統一します。)精巣は女性の卵巣に相当する臓器ですが、女性の卵巣が体内にあるのに対して、精巣は体の外にあります。これにはちゃんとした理由があります。

 精巣は通常の体温よりもやや低い温度環境の中で活発に精子を作ります。だから体の外にあるのです。逆に言えば精巣は熱に弱いという見方も出来ます。ですから高熱の環境下に置かれると精子を作る能力が弱くなります。でもそれは高温の環境下で仕事を続けるとだんだん仕事の能率が落ちるのと同じで、環境が改善されれば仕事の能率も元通りよくなっていくものなのです。

 どれぐらいの時間があれば元通りの能率になるかは個人差があると思いますが、能率の落ちた精子工場(精巣)もやがては元通りに回復するもののようです。ですから一時的には妊娠の確率は下がるもののそれがずっと続くわけではなさそうです。

 一方、おたふくかぜによる男性不妊についてはどうかといいますと、大人になってからのおたふくかぜはこどものそれよりも重症化しやすく高熱に見舞われることもあると思います。ですが、高熱だけであれば一時的に精子の数や働きが落ちてもいずれは回復可能と言えます。

 不妊が心配されるのは、おたふくかぜウイルスが精巣に侵入して精巣炎を起こしたときです。前回高熱と脳障害のお話の中でも触れましたように、「脳の病気だから脳がやられる」のと同じで、「精巣の病気(精巣炎)だから精巣がやられる」わけです。でも実際にはその頻度はあまり高くはありません。

 それでは男の子の場合はどうかといいますと、男の子の精巣が精子工場として目覚めるのは6歳頃と考えられています。しかも始めのうちはそんなに活発に精子を作りませんから、精子の数がどうとか働きがどうとかを調べることは出来ません。ただ、大人と同じように考えれば、高熱だけであれば一時的に精子製造に影響が出るかもしれないがあくまでも一時的で回復可能ということだと思います。

 おたふくかぜに限らず、細菌やウイルスなどによって精巣炎が起こり、精子を作る細胞に永続的な問題が起きた場合には、その程度によって精子の数や働きに問題が生じる(男性不妊の)可能性はあるということだと思います。

 前回の記事では、高熱による男性不妊を迷信だと決めつけてしまいましたが、全くの迷信ではなかったようでした。その点お詫びいたしますが、「脳の病気だから脳がやられる」、「精巣の病気(精巣炎)だから精巣がやられる」という構図は同じものでした。



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2017年05月15日

こどもの発熱 ー熱が続くと脳をやられる?ー

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 「もう5日も熱が下がらないんです。こんなに熱が続いて脳をやられませんか?」
最近はやや少なくなりましたが、昭和の頃(その頃私はすでに医者だったんですexclamation×2)にはこのようにご心配なさる方がけっこういらっしゃいました。私の答はこうです。

 「熱は何か病気があるから出ているんです。つまり熱は病気の結果なんですね。熱が病気の直接の原因になることは小さな子の熱性けいれん以外にはありません。問題は熱を出している病気が何かということです。扁桃腺だということがわかっていれば、熱がたとえ1週間続いても扁桃腺は扁桃腺、脳の病気になることはありません。もちろん最初はウイルス性の風邪で熱が出ていたのだけれど、途中でそのウイルスが脳に侵入して脳炎などを引き起こすことはあります。でもそれは熱が続いたためではなく、ウイルスが脳に侵入したために起こった(脳の病気だから脳がやられる)ことなんですね。お宅のお子さん場合、病気は○○で脳の病気ではありません。ですから脳がやられる心配はありません。でも5日も熱が下がらないということは今飲んでいるクスリが効いていない可能性がありますから、クスリを替えてみましょう。」

 そして例によって聞かれもしないのにベラベラしゃべり始めます。「脳障害を起こすような病気には高熱をともなうものが多いんですね。主に中枢神経系の感染症といわれ細菌やウイルスが脳に侵入して脳炎・髄膜炎などを起こすものです。現代ではそれらの病気は原因や治療法がわかってきていますが、昔はこの手の病気はたいてい『熱病』と呼ばれていました。ですから、高熱=熱病=脳障害というふうに結びついてしまって、『熱が続くと脳をやられる』という迷信がはびこってしまったんです。」

 話はまだまだ続きます。「特に日本では、平清盛が熱病にかかり、長いこと高熱にさいなまれたあげく『気がふれて死んだ』というふうに伝えられていますから、よけいに『高熱が続くと脳をやられる』という迷信が根強いんだと思いますよ。平家の怨念は現代まで続いているんですね。怖いですね〜。」

 最初に示したような心配が減ってきたのは、若い人たちが「源平の戦い」なんてものにあまり興味を示さなくなってきたせいもあるのかもしれませんね。

 とまあ、皆さんが心配なさるのは脳のことだけだと思ったら、つい最近「熱が続くと将来こどもが出来なくなる」という迷信を2人の親御さんが心配なさっていました。大きくなってからおたふくかぜにかかると不妊になるという話はあながち迷信ではないのですが、私も40年以上小児科医をやっていますが、熱が続くとこどもが出来なくなるという迷信を聞いたのは長い医者生活の中でも初めての経験でした。

 平清盛にはちゃんとこどもがいましたから、「熱が続くとこどもが出来なくなる」というのは平家の怨念ではないですね。でもどうやってこのような迷信が生まれたのか私には見当もつきません。私に与えられた宿題だと思ってこれから調べてみます。


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2017年05月08日

こどもの発熱 ー坐薬と飲み薬どっちが効くの?ー

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 私は解熱剤をあまり処方しない医者ですが、それでもお母さんの不安や希望が強かったりすれば、熱さまし(解熱剤)を差し上げます。そのときに「熱さましというのは名前からいえば熱を下げるのが仕事のクスリですが、本当は熱のためにつらい思いをしているお子さんを一時的にでも楽にしてあげようというオクスリです。ですから、熱の数字が下がらなくても、それまで眠れなかった子が眠れるようになったら、熱さましは十分に仕事をしたとほめてあげてくださいね」と説明しています。

 そして、「熱さましには飲むクスリと坐薬があります。どちらにしますか?」と尋ねます。心の中ではお母さんから来る次の質問を予想しながら・・・。

 来ましたexclamation次の質問。「飲むのと坐薬、どっちがよく効きます?」。待ってましたと私の答。「口から飲んでもおしりから入れても薬の効き目は同じです。でも、坐薬のほうが飲み薬よりキモチ早く効き始めます。」「へ〜、どうしてexclamation&question」という質問も聞かず勝手にしゃべり続けます。「口から飲んだクスリは食道を通り胃を通って小腸に入ってから吸収されて効き始めます。だから効き始めるまでに時間がかかるんですね。その点坐薬ですと入ったところがすぐ直腸ですからその場で吸収される、つまりすぐ効き始めるということです。」さらに訊かれもしないのにしゃべり続けて「坐薬は飲み薬に比べてすぐに効くけど効き目はやや短いんです。100m競走ダッシュ(走り出すさま)とマラソンモバQの違いなんですね。」話題は陸上競技の話になっていきます。

 エ〜ッ!なんで陸上競技になっちゃうのがく〜(落胆した顔)exclamation&questionとお思いでしょうが、まあお聞きください。

 「100m競走のトップとビリのランナーのタイムはほとんど違いませんね。多くて1秒ぐらいですね。ところがマラソンレースのトップとビリのタイムを比べたら、ヘタしたら1時間以上も開いてしまうことがありますよね。坐薬はおしりから入ってすぐゴール(クスリの効き場所)、だから100m競走ダッシュ(走り出すさま)。飲み薬は口から入って食道・胃・十二指腸を経て小腸のゴールに入る長距離レース、だからマラソンモバQ。最初に吸収されたクスリ(トップ)と最後に吸収されるクスリ(ビリ)をランナーにたとえれば、坐薬は短時間で全部吸収されるけれど、飲んだクスリはトップからビリまで(全部吸収されるまで)時間がかかる。だから、同じ量のクスリであれば全体としての効果は同じだけれど、坐薬は短期決戦型、飲み薬は長期戦型と言えるんですね。でも口で言うほどはっきりはしませんけどね。」と、ここまで一気にしゃべって「さあ、坐薬と飲み薬のどちらにしますか?」

 この話を聞いたあとの選択では、坐薬を選ぶ方が3分の2ぐらいです。やはり皆さん熱でつらい思いをしているお子さんふらふらを少しでも早く楽にしてあげたいわーい(嬉しい顔)と願ってらっしゃるのですね黒ハート



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2017年05月01日

こどもの発熱 ー熱とお風呂ー

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

  お子さんが熱を出して診察にいらした方の多くは、帰り際に「熱があったらお風呂いい気分(温泉)はやめといたほうがいいですか?」とお訊きになります。日本では昔から「熱があったら風呂はだめ」が常識でした。ところが30年ほど前から「西洋では熱があると水風呂に入れる」という情報が入ってくると、熱とお風呂の関係が混乱し始めます。

 私はその頃まだ新米からやっと中堅の仲間入りしたぐらいの小児科医でしたが、やはり気になって色々調べました。その結果、病院などでは緊急に熱を下げるために水風呂を使うことはあっても、一般家庭ではそんなことはやっていないということがわかりました。日本でも緊急に熱を下げなければいけないときに、こどもの体中にアルコールを塗りたくってしまうことがあります。アルコールは揮発性ですからすぐに蒸発してしまい、そのときの気化熱がこどものからだから熱を奪ってゆき熱が下がるのです。熱を逃がすということですね。

pingushower.jpg それはともかく、熱があるときにお風呂に入ってもよいのかだめなのかの話に戻りましょう。「熱があったらお風呂はやめといたほうがいいですか?」というご質問に私は「熱があるときお風呂にはいること自体は絶対ダメというほどのことでもないけれど、本人がいやがるようなそぶりを見せたら絶対にやめておきましょう。また、湯船にはいるのは避けてシャワー程度にしたほうが無難です。どうしてかというと、日本のお風呂の温度は高すぎるんです。普通日本人がお風呂と感じるのは40℃以上なんですね。37〜38℃だととてもお風呂とは思えない。だから、たとえば39℃の熱がある子が日本のお風呂に入るとお湯の温度のほうが高いですから温められてよけい熱が上がって右斜め上しまうんです。西洋人みたいに37〜38℃のお風呂に入れば今度はお湯の温度のほうが低いですから冷やされて熱は下がります右斜め下が、日本人にとっては水風呂みたいなもんですから湯冷めしてよけい病気が重くなってしまうかもしれません。そういった意味で熱があるときはぬるめのシャワーぐらいにしておいたほうが無難だということなんです。

 西洋のお風呂の温度は37〜38℃、日本のお風呂は40℃以上。これは文化の違いですからそう簡単に切り替えられるものではありません。いくら生活が「欧米化」しても感覚的なことってすぐには変わらないんですね。



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2017年04月24日

こどもの発熱 ーガタガタ震えてても冷やすの?ー

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 「熱を下げるということは熱を逃がすことだ」と何度も何度もしつこくお話ししていますが、皆さんの実感としては「冷やす」という言葉のほうがしっくり来るようです。ですから最近の私は最初に「冷やす」という言葉を使ってそのあとで「逃がす」という言葉を使うようになりました。言葉はどうあれ実体は同じことなのです。

 ところで、熱があるときは冷やすということが段々浸透してくるようになると、次のような質問が出てきます。「急に熱が出てきて寒がってるんですけど、そういうときでも冷やしていいんですか?」

 確かに熱の上がり際には寒気や震えがきます。熱がゆっくりと上昇するときにはあまり見られませんが、急激に上昇するときによく見られます。このような寒気や震えを、前者は悪寒、後者は戦慄といいます。寒くてガタガタ震えることです。熱が上がりきると止まります。寒くてガタガタ震えている子の洋服をはぎ取るようなことは残酷に思えて、先ほどのような質問をなさるのだと思います。

 私の答はこうです。「理屈だけから言えば、熱があるんだから冷やしてかまわないということなんですけど、寒くてガタガタ震えている子にさらに寒い思いをさせるようなことは人情としてはできませんよね。この寒気や震えは熱が上がりつつあるときだけなので、温めようが冷やそうがどっちみち熱は上がるところまでは上がるわけです。ですから、お子さんが寒いと言っている間は寒気がなくなるぎりぎりのところまで温め、熱が上がりきってお子さんが暑いと言い出したらすぐに冷やし始めるということでいいんじゃないですか。」

 熱が出てきて寒気や震えが来ると、お子さんはきっと心細い思いをしていると思います。そんなとき少しでもぬくもりを感じることができれば、熱はどんどん上がるかもしれませんがお子さんの心も少しは安らぐのではないでしょうか。その意味では抱いて温めてあげるほうが効果は大きいと思います。



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2017年04月17日

こどもの発熱 ーからだは熱いけど手足が冷たいー

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「熱が39.2℃あるんでからだは熱いんですけど、手足が冷たくなってるんです。手袋とか靴下をしたほうがいいんでしょうか?」
赤ちゃんや年齢の低いお子さんではよくこういうことが起こります。私の答はこうです。「あまり冷たくてかわいそうだったら手袋とか靴下をしてもいいですけど、熱を下げてあげると手足は温かくなりますよ。」
質問なさった方は訳がわからず一瞬目が点になります。もちろん私はきちんとフォローします。

「熱が高くなると心臓の拍動は早くなるんです揺れるハート。そうすると手足が冷たくなるんですけど、そう言われたってわかりませんよね。ではゴムボールで考えてみましょう。ゴムボールに1カ所穴を開けて水を入れます。ゴムボールをギュッと握って水を飛ばすとき、力を入れてギュ〜〜〜ッと握れば遠くまで水が飛びますねあせあせ(飛び散る汗)。でもキュッキュッキュと頻繁に握ったのでは水は遠くまで飛びませんよねバッド(下向き矢印)。心臓もそうなんです。通常の早さでギューッギューッギューッ黒ハートと動いているときには血液が勢いよく送り出されるのでからだのすみずみまで血液が十分に送られるんです。ところが熱が高くなって心臓の動きが速くなると心臓のちぢみかたはキュッキュッキュ揺れるハートになってしまって1回に送り出される血液のパワーが落ちて、手足の先みたいに心臓から最も遠いところまで十分な血液が届かないんです。だから色が悪くさわると冷たいという現象が起きてしまうんですね。熱が下がれば心臓の動きが遅くなってギューッギューッギューッ黒ハートになりますから手足の先まで血液が届き温かくなってくるんです。」

 言葉だけではこの辺のニュアンスは伝えにくいので、私は身振り手振りを交えて説明します。「は〜あ、な・る・ほ・ど」と納得していただいたところで、「熱を下げるというのは熱を逃がすことなんですよ。」と私の持論につなげていくのは当然のことです。この持論の詳しいことは3月20日と3月27日の「こども診療所医学講座」をご覧下さい。



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2017年04月10日

こどもの発熱 −熱の高さと緊急度−

clinic.jpg月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 こどもの病気と発熱について4回続けてお話ししました。記事のタイトルの代わりに番号しか表示しませんでしたら、「記事の内容がわからない。つまらない記事だったら読みたくない。」というリクエスト(?)をいただきました。それで今回からは記事の内容がわかるようなタイトルにいたしました。でも、なるべく全部読んでくださいね。

 午前中診察したお子さんが、午後の外来に再び連れてこられることがあります。「午前中診てもらったときは37.8℃だったんですけど、お昼寝から起きたら39.2℃になっちゃって・・・。」だいたいがこんなパターンです。私は冷たいもので、「ま、もともと熱があったんですからね。39℃を超えることもあるでしょうね。で、午前中と今で変わった様子は?」な〜んて素っ気なく対応します。

 37.8℃と39.2℃を比べたら、39.2℃のほうが病気が重そうだと感じるのは当然だと思います。熱の上がり下がりが病気の流れを判断する上で役に立つことは多々あります。でも37.8℃で顔色も悪く食欲もないという子と、39.2℃で顔色もよく食欲もあるという子がいたら、医者は躊躇なく37.8℃の子を先に診察するでしょう。

 熱は「病気がありますよ」というサインではありますが、必ずしも病気の重さを表すわけではないのです。この辺が数字というものが持つちょっと困った一面ですね。数値が上がるとそれにともなって病気そのものも<悪い方へ>変化していくと感じてしまうのです。問題は数字の変化にともなってその子の暮らしっぷり(食欲・睡眠・元気さ加減・顔色・表情・本人からの訴えなど)がどう変わっていくかなんですけどね。熱はドンドン上がっていくけど暮らしっぷりはあまり変わらないというのであればまず心配な病気ではありません。逆に熱と一緒に暮らしっぷりが悪くなっていくようであればそれなりの対応が必要になるでしょうし、熱は変わらないのに暮らしっぷりはドンドン悪くなるというのであれば、それこそ急いでダッシュ(走り出すさま)次項有病院病院を受診したほうがよいでしょう。

 ただ、暮らしっぷりと一言で言っても、上に書いたように食欲・睡眠・元気さ加減・顔色・表情・本人からの訴えなどと色々ありすぎてどれを目安に緊急度を判断したらよいのか困ってしまいますね。私はこれらの中で、熱をともなう病気の場合の緊急度の判断の目安としては「顔色」が一番わかりやすいと考えています。緊急度というのはもちろん病気が重いからということも含めてのことですが、必ずしも病気の重症度と同じではありません。急いで病院に行った方がいいけれど病院で手当をすればわりとスッキリしてしまうような病気が含まれることもあります。ですからここでいう病気の緊急度というのは病気そのものの緊急性ではなく、受診の緊急性のことだとお考えください。

 熱が上がるに連れて顔色が赤くなるちっ(怒った顔)ようならそれほど心配はありません。お風呂いい気分(温泉)に入ったあとを思い起こしてください。お湯で温まった体は紅潮して赤くなっているでしょう。「温度が上がってからだ(顔)が赤くなる」というのはごく自然な現象なのです。だから病気だとしてもそれほど緊急を要することはないのです。逆に、熱が上がっていくのに顔色は青白くなっていく、あるいは土気色になっていく、唇の色が暗い青紫色になっていくというのは自然ではありません。こんな時は急いで病院(夜間夜であれば夜間診療所や救急病院)に連れて行ってください。お子さんがこのような状態のときには「家にある解熱剤を使ってしばらく様子を見よう」などとは絶対に考えないでくださいexclamation×2
 


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2017年04月03日

こどもの発熱 −パート4−

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 よくあるケースですが、何日か熱が続いたあとのある朝やっと平熱に戻ります。「よかったよかった」と喜んでこどもを幼稚園に行かせたら、午後になって「熱が出たから迎えに来て欲しい」と電話がかかってきます。迎えに行って帰宅の途中私の診療所に寄ります。「朝熱がなかったので右斜め下幼稚園行かせたら幼稚園で熱が出ちゃった右斜め上んです。」と、「どうしてくれるんだ!」みたいな口調です。私は冷静に答えます。

 「朝熱が下がっているのはアテになりません。人間は恒温動物とはいいますが、体温は1日の中で多少は変化します。基本的には朝低めで夕方に多少高くなります。その上がり方が1℃以内の場合は発熱とは言わないんです。人間の体温は朝低くて夜高い、それが健康パターンだと考えてください。さてそこで、病気の時の熱はどうかといいますと、1日中高熱が続いたり、1日の中で何回も上がったり下がったりする場合もありますし、また、朝は平熱近くまで下がるのに夜になると高熱になるというパターンを毎日繰り返す場合もあります。前者の場合は健康パターンではなくなっていますから病気としてもそれなりにしっかりしている、あるいはけっこうやっかいな病気のこともあります。一方後者の場合に、たとえば平熱が36.5℃ぐらいの子が朝37.8℃で夜39.3℃になったというケースで考えてみましょう。

 まず朝の体温ですが、平熱より1℃以上高いですから、この時点ですでに発熱していると言えます。さらに夜までに1℃以上高くなっていますからこれも確実に発熱の状態です。でも、熱が朝低くて夜高いというのはパターンでいえば健康パターンです。熱が健康パーターンであれば、熱の高さはどうあれ、そんなに重大な病気ではないと考えられます。もちろんそれは病気の重さの問題であって、高熱でお子さんが苦しくつらい思いふらふらをすることは別に考えなくてはなりません。

 さて、このお子さんがある朝熱を測ったら36.8℃だったとします。平熱より1℃未満高いだけですから熱が下がったと言えないことはありません。しかし夜になって再び38.0℃になったら朝より1℃以上高い、つまりまだ発熱状態にあるということになります。だから朝の体温だけで熱が下がったとは言い切れないのです。」

 さらに私は続けます。「熱の一日は午後6時に始まる、と考えてください。そう考えれば前の晩に熱のあった子は朝たとえ平熱であってもまだ熱のある一日の中にいるということになります。朝晴れも平熱手(チョキ)夜も平熱手(チョキ)そして翌朝晴れも平熱手(チョキ)となって初めて『熱が下がった』と言えるのです。」

 でもね。朝は普通だったら一日の始まり。その朝に平熱だったら幼稚園でも保育園でも行かせたくなりますよね。その気持ちはよ〜くわかりますが、行かせるかどうか決める際にはどうぞ前の晩の熱の具合を振り返ってみてください。



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2017年03月27日

こどもの発熱 −パート3−

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

inuit.jpg 日本では昔から熱が出ると、「布団にくるまって暑いのを我慢していればそのうちドッと汗をかいて熱が下がる」という方法が主流でした。この方法は正しくて、私でもたまに熱を出したときなどこの方法で熱を下げています。でも、正しいのは大人がやるときだけで、こどもの場合にはほとんど役に立ちません。この方法で汗をかいて熱が下がるのは、7歳を過ぎてからでしょう。それより年齢の低いこどもは右の「イヌイット」のような格好をさせていたら(洋服や布団でくるむ)、ドンドン熱をこもらせ(熱の逃げ場がない!)、ドンドン高熱になってしまうのです。そして残念なことにいつまでたっても汗をかきません。熱は上がったまんまになってしまうのです。そこで、「こどもの場合には決してくるみこまずに熱をドンドン上手に逃がしてあげましょう」となるわけです。

shampoo.jpg 熱を上手に逃がすには、冷えピタや氷枕などで熱を奪い取るのもよい方法ですが、効率ということを考えたらからだ全体から熱を逃がした方が有利です。そのためには左の「気分はトロピカル」がいいんですね。まず薄着にすること、そして布団もごく薄いものにするか、場合によって冬でもタオルケットまたはバスタオルでもけっこうです。部屋の温度も低いほうが熱がドンドン逃げていきます。夏ならエアコンを使ってもいいし、冬なら暖房を止めるのがいいでしょう。

 私はこのような方法を冷蔵庫のたとえでお話ししています。

 冷蔵庫というのは冷たい空気の庫内に飲食物を入れて、飲食物の持っている熱を庫内に逃がし、それによって飲食物の温度を下げる(冷たくする)ものです。とても強く冷やしたいときには庫内温度をより低くします。また、飲食物を冷蔵庫に入れるとき、わざわざ包装紙を増やす人なんてまずいません。むしろ包装紙を減らしてから入れます。ですから部屋全体を冷蔵庫にして、その中にお子さんを寝かせるんだと考えください。そしたら厚着なんか絶対にしませんよね。

 そして最後に必ず、「この子をホントの冷蔵庫には絶対に入れないでくださいね。窒息しますからね。」と念を押します。



タグ:発熱
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2017年03月20日

こどもの発熱 −パート2−

clinic.jpg月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 前回は熱が出た時に熱を下げる方法の一つ熱さまし(解熱剤)のお話をしました。

 熱を下げるもう一つの方法はからだから熱を逃がす(放散させる)ことです。私はこの方法を説明するのに「からだを冷やす」という言葉を長いこと使っていましたが、最近は「熱を逃がす」という言葉を使うようにしました。きっかけは「冷えピタ」や「熱さまシート」などの貼る解熱剤の登場です。これらのクスリはおでこに貼ったり、脇の下に貼ったり、あたかもその部分を冷やしているかのようには見えますが、クスリそのものが冷たいわけではなく、氷枕や氷嚢と同じように考えるわけにはいきません。

 ここで医学を離れて物理学の話をします。物理学なんていうと偉そうですが、簡単に言えば理科の話です。熱には温度の高い方から低い方へ移動するという性質があります。また、熱を一種の物質と考えて、温度の高いものには(プラスの)熱物質が沢山貯め込んである、温度の低い方には熱物質が少ない(マイナスの熱物質が多いという説明もできます)、だから熱は高い方から低い方に移動して全体を同じ温度にしようとする(プラスとマイナスでチャラにしようとする)、と考えると「冷えピタ」で熱が下がる理由を理解することができます。

 その前にもう一つ、熱に関する物体の性質ということもお話しします。一般的には、プラスの熱物質が多くなればその物体の温度は高くなる、マイナスの熱物質が多くなればその物体の温度は低くなるということができます。ところが何事にも例外というのがあって、世の中には冷たくなくても熱物質をドンドコドンドコ貯め込んで、しかも温度があまり変わらない(上がらない)物質というのがあるのです。「冷えピタ」にはその物質が塗ってあるのです。だからこどものからだに貼ると、その部分から熱をどんどん奪い取ってからだの熱を下げてくれるのです。「冷えピタ」が冷たいわけでも、「冷えピタ」から熱冷ましの成分(クスリ)がからだにしみこんでいくのでもなく、からだから「冷えピタ」に向かって熱がどんどん逃げていくというのが「冷えピタ」の正体なのです。

 氷枕や氷嚢も同じなんですが、残念なことに氷は「冷えピタ」のような特殊物質ではありませんから、氷に言わせれば「冷たい状態でからだにくっつけられて(以前は冷やすと言っていた)熱を奪い取り(からだから見れば逃げていく)、自分自身(氷)は逃げ込んできた熱のために温度が上がって溶けてしまう」ということになるのです。

 以上、私が「冷やす」という言葉をやめて「熱を逃がす」という言葉に変えた理由をお話しました。あまり実際の役には立たない話でしたね。次回はためになるお話を用意しておきますね。



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2017年03月13日

こどもの発熱 −パート1−

clinic.jpg月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 日々の診療ではこんなことも時々あります。「鼻水が出たので耳鼻科に行って薬をもらっていたけど、熱いい気分(温泉)が出たので小児科に来た」というケースです。熱が出ると全身の病気かもしれないという心配が出るためと思われます。全身の病気というよりも、生命に関わるような重大な病気だったらどうしようという心配といったほうがよいでしょう。

 20世紀以前、人々の健康を脅かしてきたのは感染症です。感染症は細菌やウイルスがヒトからヒトへとうつってかかる病気で、高熱をともなうことが多いのが特徴です。病原体(細菌やウイルスなど)の発見や、予防接種法の確立、抗生物質や抗ウイルス剤の開発などによって、20世紀を通して医学は大きく進歩し多くの感染症が克服されてきました。それでも人々の記憶から「感染症=高熱=生命の危険」という図式が消え去るにはまだまだ長い時間が必要でしょう。それに生命には関わらないまでも、こどもがかかる病気としては今でも発熱をともなう感染症が最も多いというのも事実です。

 そこで久しぶりのこども診療所医学講座では「こどもの発熱」についてシリーズで考えてみたいと思います。

 個人差はありますが、熱が出ると元気がなくなり、食欲も落ち、十分な睡眠が取れなくなるなど、こどもの暮らしは熱のために大きく障害されます。逆に熱が下がると急に元気になったり、熱が下がっている間だけ食欲が出たりします。ですから熱が出たら一刻も早く下げてあげたいと願うのは当然といえます。

 熱を下げる手っ取り早い方法は解熱剤(熱さまし)を使うことでしょう。ただし、熱さましで一時的に熱を下げても病気そのものが早く治るわけではないこと、病気の勢いが強いパンチときには熱さましが効かないこともあるということ、さらに、日本のこどもの薬害(一時的な副作用)の中では、解熱剤と抗生物質が東西の両横綱であると言えるほど多いということも忘れないでください。

 解熱剤は、お子さんの熱が高くて眠れずつらそうとか、熱と一緒に痛みも出てきてかわいそうといったようなときに、ふらふら一時的に熱を下げることによってわーい(嬉しい顔)気分を和らげてあげるクスリだと考えてください。「解熱剤」というのですからクスリを使う目的は熱を下げることなのですが、熱が高ければすぐ解熱剤と考えるのではなく、熱が高くてかわいそうな子のつらさを短時間だけでも楽にしてあげるのが真の目的だと考えてください。

 ですから、「熱が何度になったら使うんですか?」というご質問に私は、「熱が高くてつらそうでかわいそうと思ったら使ってください。世の中には熱が40℃ぐらいあっても平気でテレビを見て笑ってられる子もいるんです。そういう子にとっては熱さましのためにテレビを中断させられることのほうがつらいですよね。」とお答えしています。

 もう一つ、「何時間おき時計に使ってもいいですか?」というご質問もあります。解熱剤の効果が続くのはせいぜい4〜5時間なので、その後再び熱が上がってきます。そうするとこのような心配が出てくるのです。座薬にせよ頓服にせよ、解熱剤の1回分は1日に飲んでもいい量の3分の1が基本になっています。ということは、必要なときには8時間毎に使用するのがいいということになります。効き目の続く4〜5時間と使ってもいい間隔の8時間との差に悩んでしまうわけですね。そのときも、「どうしてもつらそうでかわいそうだったら5〜6時間で使ってもいいですよ。でも1日3回以上は絶対に使わないでくださいね。」とご説明しています。



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2016年04月09日

こどもの花粉症(集中連載6)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


《お詫び》
集中連載4をアップし忘れたことに今日気がつきました。
予定されていた4月7日の日付でアップしました。
その日付に戻ってご覧ください。
お詫びいたします。申し訳ありませんでした。




 スギ花粉症が抗原抗体反応の一種であるアレルギー反応によって起こるという、どなたもご存じの基本から「なぜ近年花粉症、そしてこどもの花粉症(そっくりの病気)が増えているのか?そしてまたそれにどのように対処すればいいのか?」を考えています。そして今回がその最終回になります。

 前回は「自然はもう人類を仲間とは思っていない。そして何でもかんでも科学を武器にして自然と闘っていては逆に人類が苦しむだけではないか」という私の考え方をお話ししました。だったらどうするのかということでしょう。そうでないと「喘息やアトピー性皮膚炎や花粉症で苦しんでいる現在のお子さん達をそのまま見捨てるのか?」とおしかりを受けてしまうでしょう。

 現在アレルギー性疾患で悩んでいるお子さんを見捨てるようなことはいたしません。私も最新のアレルギー治療に関する情報をよく勉強しているつもりです。「今は今のやり方でやりましょう。そして未来に向かってどのようにしたら自然と人類が共存できるようになるのか考えていきましょう。」ということなのです。

 ちょっと汚い話で恐縮ですが、私がこどもの頃には寄生虫なんてのはいて当たり前みたいな話で、私自身便の中に蟯虫がウジャウジャいるのを見た記憶がありますし、弟のおしりから回虫が出てきたのを目撃した記憶もあります(キタナクテスミマセン)。

 寄生虫のいる人の血液検査をすると、好酸球という種類の白血球が増えていて、IgEというアレルギーに関係するグロブリン(抗体)も高値を示すことが知られています。アレルギー疾患の方の血液検査でも同じこと(好酸球が多くてIgEが高い)が言えます。そして寄生虫が多かった時代にはアレルギー疾患は少なく、寄生虫が少なくなった(ほとんどいなくなった)現代ではアレルギー疾患が増えているという事実があります。

 ここで注意が必要なのは、寄生虫が少なくなったからアレルギー疾患が増えたのかどうかはわからないということです。もしかしたら因果関係があるかもしれないし、もしかしたら偶然そうなっているだけかもしれないのです。このことはまだ解明されていません。

 もう一つ面白いことがあります。アレルギー対策を訊かれた専門家の多くが「適当に不潔であること」が必要だと答えます。さすがに寄生虫が増えたほうがいいと言う専門家はいませんが、あまりにも潔癖すぎる環境(今の日本ではそれが求められすぎていると私は思っています)では、ちょっとでも不潔なものはとても目立って、すぐに「ヨソモノ」のレッテルを貼られてしまいます。ヨソモノに対してはアレルギー反応を起こしやすいというのが現代人の置かれた立場であることは今までにお話ししてきました。

 適当に不潔な環境では清潔なものから不潔なものまで雑多なものが入り交じっていますから、どこまでが身内でどこからがヨソモノなのかの判別は簡単ではありません。したがってアレルギー反応も起きにくいということは推測できます。

sea.jpg

 この「雑多なものが入り交じっている」ということが私たちの目指すべき未来であり、本来地球上がすべてそのようになっていた自然の姿なのだと思います。これを生物学的多様性といいますが、近年誰にでもわかりやすいように生態系という言葉のほうが多く使われるようになっています。そしてこの生態系をまもる学問が生態学=エコロジーです。今はやりの「エコ」とは似た点もありますがちょっと違います。

 ところで「エコ」といえば「地球にやさしい」が合い言葉のようになっています。そして地球温暖化への危機感の高まりから「人類の棲めない地球になる前に」という言葉も「エコ」の宣伝文句のように使われています。「エコ」という言葉自体ががそういう意味(人類を中心に置いて地球を守ろうという意味)なのだというならそれは許せます。しかしこれは本当の意味でのエコロジーでも生態学でもない言葉だとしかいいようがありません。

 雑多なものが入り交じって生息し、生物学的多様性がまもられている自然な姿の中で、そこに存在するすべてのもの一つ一つに、今あるままのそのままの姿で価値を認めて大切にする。

earth.jpg

 これがエコロジー=生態学の出発点なんです。そしてすべてのものが対等の価値を持つ中であるものは生き残り、あるものは死滅していく、それを人類の意志ではなく、生命の意志として見守っていく、それこそがエコロジー=生態学なんです。

 地球上の生物学的多様性をその知恵によって破壊してきた人類、多様な生物の価値というものをその知恵によって勝手に順位付けしてきた人類、そしてその価値の順位の頂点に人類を置いた人類、そして今その頂点に立つ人類が棲める状態で地球をまもろうという「エコ」のどこに地球に対するやさしさがあるというのでしょうか?人類のためのエコロジー(=「エコ」)なんて存在しないのです。

 な〜んて、話が大きくなりすぎましたが、+(プラス)の価値観だけを重視して発展してきた20世紀的な発想をやめて、今まで無視してきたー(マイナス)と思われる事物にもそれなりの価値があることを認め、雑多な価値を持つものが混沌と入り交じって存在するような、つまりどこまでが身内で、どこからがヨソモノかよくわからないような世の中が実現すればアレルギー疾患も減るのではないでしょうか?

horizon.jpg

 なぜならそのような世界は人類も含めてすべての生き物にとって生きやすい(価値を認められる)、まさにエコロジカルな地球だと思うからです。「地球にやさしい」なんていう思い上がりはやめて、「地球がやさしい」を実現するにはどうしたらいいのか、一人一人が真剣に考える必要があると思います。

 いつやるか?
 今でしょう!(ちと古かったですかね)

集中連載は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。


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2016年04月08日

こどもの花粉症(集中連載5)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 スギ花粉症が抗原抗体反応の一種であるアレルギー反応によって起こるという、どなたもご存じの基本から「なぜ近年花粉症、そしてこどもの花粉症(そっくりの病気)が増えているのか?」を考えています。

 前回は抗原抗体反応の抗原側、つまりアレルゲンとなるスギ花粉について私の考えをお話しさせていただきました。今回は抗原抗体反応の抗体を作る側、つまり最近のこどものからだに何が起こっているのかについて、これまた私の考えをお話しさせていただきます。

img02.jpg 近年、といってももう20年以上も前からですが、虫に刺されたときの反応がとても強く出てしまう子が増えています。私がこどもだった頃はもちろんですが、現在お子さんを連れてこども診療所にいらっしゃる世代の方々のこどもの頃も、虫刺されで病院に行くなんてことは考えもしなかったでしょう。「虫刺されなんかなめときゃいいよ」程度ですまされて、それでも翌日にはチョット赤味が残るぐらいでした。
(画像はすべてクリックで拡大されます)

img04.jpg ところが最近のこども達の虫刺されは、水ぶくれになってしまったり、真っ赤に腫れあがってしまったり、象の手足みたいにむくんで太くなってしまったり。親御さんがこどもの頃には経験したことがないような強い反応を起こしてしまいます。それでビックリして病院に連れてきてしまうのではないでしょうか?

img10.jpg 虫刺されというのは言ってみれば「よそ者が侵入しようとした」ということです。そのよそ者が一応身内に近いと判断すれば反応は弱くなります。そのよそ者が不倶戴天の敵だと認識したならその反応は強くなってしまいます。どうも最近のこども達は、虫刺されをとうてい許し難い敵の侵入と捉えているような気がしてなりません。だからこそあんなに強い反応を起こしてしまうのです。

 虫も花粉も自然の一部です。その自然の一部がからだに入ろうとするときに、「あ、身内の方ね、どうぞどうぞ」と受け入れていたのが昔のこども、「あ、敵が攻めてきた、やっつけなきゃ」と反応してしまうのが現代のこども。それだけ人間が自然から離れてしまったと言えるのではないでしょうか?

 虫刺されのあとの反応が強いのも、こどもの花粉症が増えているのも、ごく当たり前にある自然を素直に受け入れることができなくなってしまった人類に起こる当然の状況といえるかもしれません。

 それは自然を克服して服従させ、自分達に都合のよいように利用し続けてきた人類に対する、自然からのある種の警告ではないでしょうか?「自然はもう人類を仲間とは思っていない」。私にはそう思えるのです。

 こども診療所ではアレルギー性疾患の治療をそれほど積極的にはしていません。それはこれ以上自然に敵対すればますますアレルギー性疾患が増えてしまうのではないかという危機感があるからです。何でもかんでも科学を武器にして自然と闘っていては逆に人類が苦しむだけではないかと考えるからです。

 ではどうすればいいのか?それを次回お話ししてこの集中連載を終わりにしたいと思います。では次回をお楽しみに。


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2016年04月07日

こどもの花粉症(集中連載4)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 スギ花粉症が抗原抗体反応の一種であるアレルギー反応によって起こるという、どなたもご存じの基本から「なぜ近年花粉症、そしてこどもの花粉症(そっくりの病気)が増えているのか?」を考えてみましょう。

 今回は抗原抗体反応の抗原側、つまりアレルゲンとなるスギ花粉について私の考えをお話しさせていただきます。

 「お山の杉の子」という歌をご存じでしょうか?第二次世界大戦中に作られた歌なのでご存じの方は少ないと思いますが、その一番の歌詞は次のようになっています。実際は六番まである長い歌です。もともとは傷痍軍人や戦死者の遺族を慰め励ますという戦意高揚の歌でしたが、戦後GHQによって放送禁止となり、その後国土(自然)の回復(緑化)を目指すように二番以下の歌詞を変えて歌い継がれたものです。

一、
昔々の その昔 椎の木林の すぐそばに
小さなお山が あったとさ あったとさ
丸々坊主の 禿山は いつでもみんなの 笑いもの
これこれ杉の子 起きなさい
お日さま にこにこ 声かけた 声かけた

sugi2.jpg 戦争による国土の荒廃で禿山がいっぱいできてしまいました。戦後政府は国策として杉の植林を奨励して国土の緑化を推進しました。その杉の木は30年、40年、50年とたつうちにどんどん大木となって多くの花を咲かせたくさんの花粉をまき散らすようになりました。(写真はクリックで拡大されます)

 それだけではありません。戦後日本の林業は安い外国産の木材に押されて衰退の一途をたどっています。本来林業というのは、植林した木々が成長するのに合わせて木と木の間隔を適度に保つため間伐という作業を必要とします。読んで字のごとく「間の木を伐採する」という意味です。林業従事者の少なくなった日本の山々では植えられた杉の木が間伐されずに密集して立っています。これも花粉の量を増やす一因になっていると考えられます。

sugi1.jpg さらに私は自然環境の悪化も花粉量増加の原因になっていると考えています。(写真はクリックで拡大されます)

 すべての植物は生存の危機に瀕するとたくさんの花を咲かせて子孫をたくさん残そうとします。間伐が行われずにギュウギュウ詰めの杉の木にとって生存すること自体が困難になってきているのかもしれません。さらに自然環境の悪化が生存の危機に拍車をかけていることは十分に考えられることです。生存の危機にさらされた杉の木はたくさんの花を咲かせ、たくさんの花粉を飛散させることになります。

 では、花粉の量が増えるとどうなるでしょうか?

 本来花粉症というのは少量のスギ花粉に10年、20年と長期間さらされ、感作されることによって発症する病気であるということはすでに申し上げました。もし花粉の量が大量だったら、感作のための期間が5年、あるいはもっと短く3年ぐらいに短縮されてしまう可能性はあると思うのです。そうすれば小学校低学年あるいは幼稚園児でさえも花粉症を発症するようになってしまうでしょう。

 この考えが正しければ、「こどもの花粉症(そっくりの病気)は感作期間が短くなった大人の花粉症そのものである」という結論も導き出せるのですが、この辺は理論的裏付けがあるわけではありませんので、私の個人的な意見として受け止めてください。

 今日はこどもの花粉症(そっくりの病気)が増えている原因をアレルゲン(抗原)であるスギ花粉の側から、スギ花粉の量の増加という観点で考えてみました。次回は抗体を作る側であるこども達を中心に考えてみたいと思います。

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2016年04月06日

こどもの花粉症(集中連載3)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 前回は、アレルギー反応も生態防御機能の一つなのだけれど、通常とは異なった、奇妙な反応を起こしているのだということをお話しました。今回はこのアレルギー反応について少しだけ詳しいお話をいたします。

 抗原が体内に入ると抗体ができるという基本は同じでも、アレルギー反応の場合は、ある種の抗原がすべての人にとって抗原になるとは限らないという特徴があります。たとえば、はしかのウイルスまたはワクチンが体内に入るとすべての人にはしかに対する抗体ができます。ところが、スギ花粉が体内に入っても抗原(外敵)として認識して抗体を作る人と、抗原とは認識せず(味方として認識)抗体を作らない人がいるということです。この違いがどうやって起こるのかはまだ完全には解明されていません。

 抗原と認識して抗体を作る人にとって抗原のことをアレルゲンといいます。アレルゲンに対して抗体を作ることを感作といいます。同じアレルギー性疾患の人でも、その人によってアレルゲンが異なることがあります。Aさんは卵を食べるとアレルギー反応を起こすけれど牛乳なら起こさない、Bさんは卵は平気だけれど牛乳は反応を起こすというようにです。スギ花粉症ではすべての人がスギ花粉をアレルゲンとして感作されているわけです。

 また、すでに感作されているアレルゲンに出会えば、アレルギー反応は必ず起こります。「昨日は反応しちゃったけど今日は平気」ということはありません。よく、「離乳食で卵を食べたら発疹が出てしまった」と来院なさる方がいらっしゃいますが、「今回初めて食べたんですか?」と伺うと「今まで何回か食べてます」、「じゃ今回は調理法を変えたんですか?」「いいえ、いつもと一緒です」。これは卵アレルギーではないんですね。

 では、アレルゲンの量とアレルギー反応の強さは関係があるのでしょうか?私が医学部の学生で、アレルギー反応にかかわる色々な因子が発見され始めた頃には、「アレルギー反応はアレルゲンの量の多少には関係なく起こる」、つまりどんなに少ないアレルゲンでも出会えば必ず反応する、と教わりました。もう40年以上も前の話です。

 しかし、その一方で反応を起こさないぐらいにアレルゲンを薄めて(場合によっては1億倍にも薄めて)何回か注射をし、アレルゲンに慣らしていって次第に濃度を高め、だんだん高濃度のアレルゲンに対しても反応を起こさなくする治療(減感作療法といいます)も盛んに行われていましたから、アレルゲンの量とアレルギー反応の強さの関係はどうもよく理解できませんでした。

 今でもよくわからないのですが、花粉情報などでは「明日は花粉の飛ぶ量が多くなりますから十分ご注意ください」なんて言ってますから、最近では「アレルゲンの量が多ければアレルギー反応は強くなる」と考えられているのかもしれません。あるいは「アレルギー反応はアレルゲンの量に関係なく起こるが、反応の強さはアレルゲンの量によって変わる」ということなのかもしれません。

 アレルギー反応の基本を理解していただいて、いよいよ次回から「なぜこどもの花粉症(そっくりの病気)がふえているのか」という本題に入ります。


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2016年04月05日

こどもの花粉症(集中連載2)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 30億年前の地球の話です。その当時私は・・・、そんなわけありませんね。その当時地球上に「細菌」という生物(生命体)が発生(誕生)しました。これは生命体の歴史の中で画期的な出来事でした。どこが画期的かというと、細菌は生命の源であるDNAを包む殻(細胞膜)を持っていたからなんです。それまではDNAむき出しのままの生命体でしたから、物理的にも化学的にも生物的にも外敵に襲われて滅びてしまう危険がとても高かったのです。細胞膜を持つことによって外敵の侵入を一時的であるにせよ食い止めて生存の危機を乗り越えることができるようになりました。生命体が自分を守る(生体防御)機能を持ったという意味で細菌の出現は画期的な出来事だったのです。

 なんかすっご〜い難しそうな話でスタートしましたが、ただカッコつけてるだけです。ここから先はそんな難しい話ではありません。とにかく、生命体が自分を守ろうとする機能を持ったのが30億年前で、その後生物の進化にともなって様々な生体防御機能が備わっていった、発達していったということと、今私たちを苦しめているアレルギー性疾患も、この生体防御反応の進化の流れの中から出来てきたということを申し上げるための前置きなんです。

 30億年という歳月をかけて、生体防御反応は「殻に閉じこもってひたすら外敵が遠ざかるのを待つ」という消極的なものから、「侵入しようとする外敵を見つけて排除する・攻撃する・撃退する」という積極的あるいは攻撃的なものへと進化してきました。現在私たち人類を外敵から守っているのは、このような積極的・攻撃的な生体防御反応です。

 すべての生命体は外界にあるものを体内に採り入れて利用し生存しています。空気を吸うのも、食べ物を食べるのもそうです。ですから「侵入しようとする外敵を見つける」ためには、体内に入ろうとする様々なものが敵なのか味方なのかを区別しなければなりません。敵だったら侵入を阻止する、味方なら受け入れるということですね。

 外敵の侵入を阻止する方法もいくつかあります。まず、涙・鼻水・咳・くしゃみのように悪いことをしそうな奴を体の外に追い出してしまうというのも一つの方法です。体内に入ってきた細菌のところに白血球がワッと押し寄せてきて細菌を食べてしまうというのも一つの方法です。そしてもう一つが今日のお話の主人公である抗原抗体反応で、侵入してきた外敵(抗原)の一つ一つに対して、それぞれの必殺特殊部隊(抗体)を編成して、まずは外敵をやっつける、そしてこの抗体は体内に常駐して、その後同じ抗原が侵入しようとすると即座に攻撃を仕掛けてやっつけてしまうという仕組みです。

 はしかや水ぼうそうやおたふくかぜに一度かかると免疫ができてその後一生かからないというのは体内に抗体が常駐して見張っているからなんです。抗体は一人一殺主義ですから、はしかに対する抗体がおたふくかぜウイルスをやっつけるということはありません。一つ一つの抗原に対して一つ一つの抗体が作られるのです。

 ワクチンによる予防接種もこの抗原抗体反応を利用しています。発病しない程度に毒性を弱めたワクチンなるもの(抗原)を体内に入れて、平和のうちに(発病させずに)抗体を作り、その後の病気の予防に役立てようというものです。

 ここまでの話なら抗原抗体反応というのは生体防御反応だという説明も納得がいくと思います。ところが、まったく同じ抗原抗体反応でも、アレルギー反応と呼ばれる反応のしかたをしてしまうと天下の嫌われ者になってしまいます。「アレルギー」という言葉はもともとギリシャ語で、「異なった反応」とか「奇妙な反応」という意味です。本来自分を守るはずの抗原抗体反応が逆に自分を苦しめてしまうなんて、普通の抗原抗体反応とは異なってるな、奇妙だなという意味です。

 というところで今週も大分長くなってしまいました。花粉症の話とは関係なさそうですが、一度「アレルギー性疾患」というものについて私の考え方をまとめて書いてみたいと思っておりましたので、この機会に基本の部分からお話ししたいと思っています。


posted by YABOO!JAPAN at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | こども診療所医学講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする