2017年04月17日

こどもの発熱 ーからだは熱いけど手足が冷たいー

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

「熱が39.2℃あるんでからだは熱いんですけど、手足が冷たくなってるんです。手袋とか靴下をしたほうがいいんでしょうか?」
赤ちゃんや年齢の低いお子さんではよくこういうことが起こります。私の答はこうです。「あまり冷たくてかわいそうだったら手袋とか靴下をしてもいいですけど、熱を下げてあげると手足は温かくなりますよ。」
質問なさった方は訳がわからず一瞬目が点になります。もちろん私はきちんとフォローします。

「熱が高くなると心臓の拍動は早くなるんです揺れるハート。そうすると手足が冷たくなるんですけど、そう言われたってわかりませんよね。ではゴムボールで考えてみましょう。ゴムボールに1カ所穴を開けて水を入れます。ゴムボールをギュッと握って水を飛ばすとき、力を入れてギュ〜〜〜ッと握れば遠くまで水が飛びますねあせあせ(飛び散る汗)。でもキュッキュッキュと頻繁に握ったのでは水は遠くまで飛びませんよねバッド(下向き矢印)。心臓もそうなんです。通常の早さでギューッギューッギューッ黒ハートと動いているときには血液が勢いよく送り出されるのでからだのすみずみまで血液が十分に送られるんです。ところが熱が高くなって心臓の動きが速くなると心臓のちぢみかたはキュッキュッキュ揺れるハートになってしまって1回に送り出される血液のパワーが落ちて、手足の先みたいに心臓から最も遠いところまで十分な血液が届かないんです。だから色が悪くさわると冷たいという現象が起きてしまうんですね。熱が下がれば心臓の動きが遅くなってギューッギューッギューッ黒ハートになりますから手足の先まで血液が届き温かくなってくるんです。」

 言葉だけではこの辺のニュアンスは伝えにくいので、私は身振り手振りを交えて説明します。「は〜あ、な・る・ほ・ど」と納得していただいたところで、「熱を下げるというのは熱を逃がすことなんですよ。」と私の持論につなげていくのは当然のことです。この持論の詳しいことは3月20日と3月27日の「こども診療所医学講座」をご覧下さい。



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2017年04月10日

こどもの発熱 −熱の高さと緊急度−

clinic.jpg月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 こどもの病気と発熱について4回続けてお話ししました。記事のタイトルの代わりに番号しか表示しませんでしたら、「記事の内容がわからない。つまらない記事だったら読みたくない。」というリクエスト(?)をいただきました。それで今回からは記事の内容がわかるようなタイトルにいたしました。でも、なるべく全部読んでくださいね。

 午前中診察したお子さんが、午後の外来に再び連れてこられることがあります。「午前中診てもらったときは37.8℃だったんですけど、お昼寝から起きたら39.2℃になっちゃって・・・。」だいたいがこんなパターンです。私は冷たいもので、「ま、もともと熱があったんですからね。39℃を超えることもあるでしょうね。で、午前中と今で変わった様子は?」な〜んて素っ気なく対応します。

 37.8℃と39.2℃を比べたら、39.2℃のほうが病気が重そうだと感じるのは当然だと思います。熱の上がり下がりが病気の流れを判断する上で役に立つことは多々あります。でも37.8℃で顔色も悪く食欲もないという子と、39.2℃で顔色もよく食欲もあるという子がいたら、医者は躊躇なく37.8℃の子を先に診察するでしょう。

 熱は「病気がありますよ」というサインではありますが、必ずしも病気の重さを表すわけではないのです。この辺が数字というものが持つちょっと困った一面ですね。数値が上がるとそれにともなって病気そのものも<悪い方へ>変化していくと感じてしまうのです。問題は数字の変化にともなってその子の暮らしっぷり(食欲・睡眠・元気さ加減・顔色・表情・本人からの訴えなど)がどう変わっていくかなんですけどね。熱はドンドン上がっていくけど暮らしっぷりはあまり変わらないというのであればまず心配な病気ではありません。逆に熱と一緒に暮らしっぷりが悪くなっていくようであればそれなりの対応が必要になるでしょうし、熱は変わらないのに暮らしっぷりはドンドン悪くなるというのであれば、それこそ急いでダッシュ(走り出すさま)次項有病院病院を受診したほうがよいでしょう。

 ただ、暮らしっぷりと一言で言っても、上に書いたように食欲・睡眠・元気さ加減・顔色・表情・本人からの訴えなどと色々ありすぎてどれを目安に緊急度を判断したらよいのか困ってしまいますね。私はこれらの中で、熱をともなう病気の場合の緊急度の判断の目安としては「顔色」が一番わかりやすいと考えています。緊急度というのはもちろん病気が重いからということも含めてのことですが、必ずしも病気の重症度と同じではありません。急いで病院に行った方がいいけれど病院で手当をすればわりとスッキリしてしまうような病気が含まれることもあります。ですからここでいう病気の緊急度というのは病気そのものの緊急性ではなく、受診の緊急性のことだとお考えください。

 熱が上がるに連れて顔色が赤くなるちっ(怒った顔)ようならそれほど心配はありません。お風呂いい気分(温泉)に入ったあとを思い起こしてください。お湯で温まった体は紅潮して赤くなっているでしょう。「温度が上がってからだ(顔)が赤くなる」というのはごく自然な現象なのです。だから病気だとしてもそれほど緊急を要することはないのです。逆に、熱が上がっていくのに顔色は青白くなっていく、あるいは土気色になっていく、唇の色が暗い青紫色になっていくというのは自然ではありません。こんな時は急いで病院(夜間夜であれば夜間診療所や救急病院)に連れて行ってください。お子さんがこのような状態のときには「家にある解熱剤を使ってしばらく様子を見よう」などとは絶対に考えないでくださいexclamation×2
 


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2017年04月03日

こどもの発熱 −パート4−

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 よくあるケースですが、何日か熱が続いたあとのある朝やっと平熱に戻ります。「よかったよかった」と喜んでこどもを幼稚園に行かせたら、午後になって「熱が出たから迎えに来て欲しい」と電話がかかってきます。迎えに行って帰宅の途中私の診療所に寄ります。「朝熱がなかったので右斜め下幼稚園行かせたら幼稚園で熱が出ちゃった右斜め上んです。」と、「どうしてくれるんだ!」みたいな口調です。私は冷静に答えます。

 「朝熱が下がっているのはアテになりません。人間は恒温動物とはいいますが、体温は1日の中で多少は変化します。基本的には朝低めで夕方に多少高くなります。その上がり方が1℃以内の場合は発熱とは言わないんです。人間の体温は朝低くて夜高い、それが健康パターンだと考えてください。さてそこで、病気の時の熱はどうかといいますと、1日中高熱が続いたり、1日の中で何回も上がったり下がったりする場合もありますし、また、朝は平熱近くまで下がるのに夜になると高熱になるというパターンを毎日繰り返す場合もあります。前者の場合は健康パターンではなくなっていますから病気としてもそれなりにしっかりしている、あるいはけっこうやっかいな病気のこともあります。一方後者の場合に、たとえば平熱が36.5℃ぐらいの子が朝37.8℃で夜39.3℃になったというケースで考えてみましょう。

 まず朝の体温ですが、平熱より1℃以上高いですから、この時点ですでに発熱していると言えます。さらに夜までに1℃以上高くなっていますからこれも確実に発熱の状態です。でも、熱が朝低くて夜高いというのはパターンでいえば健康パターンです。熱が健康パーターンであれば、熱の高さはどうあれ、そんなに重大な病気ではないと考えられます。もちろんそれは病気の重さの問題であって、高熱でお子さんが苦しくつらい思いふらふらをすることは別に考えなくてはなりません。

 さて、このお子さんがある朝熱を測ったら36.8℃だったとします。平熱より1℃未満高いだけですから熱が下がったと言えないことはありません。しかし夜になって再び38.0℃になったら朝より1℃以上高い、つまりまだ発熱状態にあるということになります。だから朝の体温だけで熱が下がったとは言い切れないのです。」

 さらに私は続けます。「熱の一日は午後6時に始まる、と考えてください。そう考えれば前の晩に熱のあった子は朝たとえ平熱であってもまだ熱のある一日の中にいるということになります。朝晴れも平熱手(チョキ)夜も平熱手(チョキ)そして翌朝晴れも平熱手(チョキ)となって初めて『熱が下がった』と言えるのです。」

 でもね。朝は普通だったら一日の始まり。その朝に平熱だったら幼稚園でも保育園でも行かせたくなりますよね。その気持ちはよ〜くわかりますが、行かせるかどうか決める際にはどうぞ前の晩の熱の具合を振り返ってみてください。



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2017年03月27日

こどもの発熱 −パート3−

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

inuit.jpg 日本では昔から熱が出ると、「布団にくるまって暑いのを我慢していればそのうちドッと汗をかいて熱が下がる」という方法が主流でした。この方法は正しくて、私でもたまに熱を出したときなどこの方法で熱を下げています。でも、正しいのは大人がやるときだけで、こどもの場合にはほとんど役に立ちません。この方法で汗をかいて熱が下がるのは、7歳を過ぎてからでしょう。それより年齢の低いこどもは右の「イヌイット」のような格好をさせていたら(洋服や布団でくるむ)、ドンドン熱をこもらせ(熱の逃げ場がない!)、ドンドン高熱になってしまうのです。そして残念なことにいつまでたっても汗をかきません。熱は上がったまんまになってしまうのです。そこで、「こどもの場合には決してくるみこまずに熱をドンドン上手に逃がしてあげましょう」となるわけです。

shampoo.jpg 熱を上手に逃がすには、冷えピタや氷枕などで熱を奪い取るのもよい方法ですが、効率ということを考えたらからだ全体から熱を逃がした方が有利です。そのためには左の「気分はトロピカル」がいいんですね。まず薄着にすること、そして布団もごく薄いものにするか、場合によって冬でもタオルケットまたはバスタオルでもけっこうです。部屋の温度も低いほうが熱がドンドン逃げていきます。夏ならエアコンを使ってもいいし、冬なら暖房を止めるのがいいでしょう。

 私はこのような方法を冷蔵庫のたとえでお話ししています。

 冷蔵庫というのは冷たい空気の庫内に飲食物を入れて、飲食物の持っている熱を庫内に逃がし、それによって飲食物の温度を下げる(冷たくする)ものです。とても強く冷やしたいときには庫内温度をより低くします。また、飲食物を冷蔵庫に入れるとき、わざわざ包装紙を増やす人なんてまずいません。むしろ包装紙を減らしてから入れます。ですから部屋全体を冷蔵庫にして、その中にお子さんを寝かせるんだと考えください。そしたら厚着なんか絶対にしませんよね。

 そして最後に必ず、「この子をホントの冷蔵庫には絶対に入れないでくださいね。窒息しますからね。」と念を押します。



タグ:発熱
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2017年03月20日

こどもの発熱 −パート2−

clinic.jpg月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 前回は熱が出た時に熱を下げる方法の一つ熱さまし(解熱剤)のお話をしました。

 熱を下げるもう一つの方法はからだから熱を逃がす(放散させる)ことです。私はこの方法を説明するのに「からだを冷やす」という言葉を長いこと使っていましたが、最近は「熱を逃がす」という言葉を使うようにしました。きっかけは「冷えピタ」や「熱さまシート」などの貼る解熱剤の登場です。これらのクスリはおでこに貼ったり、脇の下に貼ったり、あたかもその部分を冷やしているかのようには見えますが、クスリそのものが冷たいわけではなく、氷枕や氷嚢と同じように考えるわけにはいきません。

 ここで医学を離れて物理学の話をします。物理学なんていうと偉そうですが、簡単に言えば理科の話です。熱には温度の高い方から低い方へ移動するという性質があります。また、熱を一種の物質と考えて、温度の高いものには(プラスの)熱物質が沢山貯め込んである、温度の低い方には熱物質が少ない(マイナスの熱物質が多いという説明もできます)、だから熱は高い方から低い方に移動して全体を同じ温度にしようとする(プラスとマイナスでチャラにしようとする)、と考えると「冷えピタ」で熱が下がる理由を理解することができます。

 その前にもう一つ、熱に関する物体の性質ということもお話しします。一般的には、プラスの熱物質が多くなればその物体の温度は高くなる、マイナスの熱物質が多くなればその物体の温度は低くなるということができます。ところが何事にも例外というのがあって、世の中には冷たくなくても熱物質をドンドコドンドコ貯め込んで、しかも温度があまり変わらない(上がらない)物質というのがあるのです。「冷えピタ」にはその物質が塗ってあるのです。だからこどものからだに貼ると、その部分から熱をどんどん奪い取ってからだの熱を下げてくれるのです。「冷えピタ」が冷たいわけでも、「冷えピタ」から熱冷ましの成分(クスリ)がからだにしみこんでいくのでもなく、からだから「冷えピタ」に向かって熱がどんどん逃げていくというのが「冷えピタ」の正体なのです。

 氷枕や氷嚢も同じなんですが、残念なことに氷は「冷えピタ」のような特殊物質ではありませんから、氷に言わせれば「冷たい状態でからだにくっつけられて(以前は冷やすと言っていた)熱を奪い取り(からだから見れば逃げていく)、自分自身(氷)は逃げ込んできた熱のために温度が上がって溶けてしまう」ということになるのです。

 以上、私が「冷やす」という言葉をやめて「熱を逃がす」という言葉に変えた理由をお話しました。あまり実際の役には立たない話でしたね。次回はためになるお話を用意しておきますね。



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2017年03月13日

こどもの発熱 −パート1−

clinic.jpg月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 日々の診療ではこんなことも時々あります。「鼻水が出たので耳鼻科に行って薬をもらっていたけど、熱いい気分(温泉)が出たので小児科に来た」というケースです。熱が出ると全身の病気かもしれないという心配が出るためと思われます。全身の病気というよりも、生命に関わるような重大な病気だったらどうしようという心配といったほうがよいでしょう。

 20世紀以前、人々の健康を脅かしてきたのは感染症です。感染症は細菌やウイルスがヒトからヒトへとうつってかかる病気で、高熱をともなうことが多いのが特徴です。病原体(細菌やウイルスなど)の発見や、予防接種法の確立、抗生物質や抗ウイルス剤の開発などによって、20世紀を通して医学は大きく進歩し多くの感染症が克服されてきました。それでも人々の記憶から「感染症=高熱=生命の危険」という図式が消え去るにはまだまだ長い時間が必要でしょう。それに生命には関わらないまでも、こどもがかかる病気としては今でも発熱をともなう感染症が最も多いというのも事実です。

 そこで久しぶりのこども診療所医学講座では「こどもの発熱」についてシリーズで考えてみたいと思います。

 個人差はありますが、熱が出ると元気がなくなり、食欲も落ち、十分な睡眠が取れなくなるなど、こどもの暮らしは熱のために大きく障害されます。逆に熱が下がると急に元気になったり、熱が下がっている間だけ食欲が出たりします。ですから熱が出たら一刻も早く下げてあげたいと願うのは当然といえます。

 熱を下げる手っ取り早い方法は解熱剤(熱さまし)を使うことでしょう。ただし、熱さましで一時的に熱を下げても病気そのものが早く治るわけではないこと、病気の勢いが強いパンチときには熱さましが効かないこともあるということ、さらに、日本のこどもの薬害(一時的な副作用)の中では、解熱剤と抗生物質が東西の両横綱であると言えるほど多いということも忘れないでください。

 解熱剤は、お子さんの熱が高くて眠れずつらそうとか、熱と一緒に痛みも出てきてかわいそうといったようなときに、ふらふら一時的に熱を下げることによってわーい(嬉しい顔)気分を和らげてあげるクスリだと考えてください。「解熱剤」というのですからクスリを使う目的は熱を下げることなのですが、熱が高ければすぐ解熱剤と考えるのではなく、熱が高くてかわいそうな子のつらさを短時間だけでも楽にしてあげるのが真の目的だと考えてください。

 ですから、「熱が何度になったら使うんですか?」というご質問に私は、「熱が高くてつらそうでかわいそうと思ったら使ってください。世の中には熱が40℃ぐらいあっても平気でテレビを見て笑ってられる子もいるんです。そういう子にとっては熱さましのためにテレビを中断させられることのほうがつらいですよね。」とお答えしています。

 もう一つ、「何時間おき時計に使ってもいいですか?」というご質問もあります。解熱剤の効果が続くのはせいぜい4〜5時間なので、その後再び熱が上がってきます。そうするとこのような心配が出てくるのです。座薬にせよ頓服にせよ、解熱剤の1回分は1日に飲んでもいい量の3分の1が基本になっています。ということは、必要なときには8時間毎に使用するのがいいということになります。効き目の続く4〜5時間と使ってもいい間隔の8時間との差に悩んでしまうわけですね。そのときも、「どうしてもつらそうでかわいそうだったら5〜6時間で使ってもいいですよ。でも1日3回以上は絶対に使わないでくださいね。」とご説明しています。



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2016年04月09日

こどもの花粉症(集中連載6)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


《お詫び》
集中連載4をアップし忘れたことに今日気がつきました。
予定されていた4月7日の日付でアップしました。
その日付に戻ってご覧ください。
お詫びいたします。申し訳ありませんでした。




 スギ花粉症が抗原抗体反応の一種であるアレルギー反応によって起こるという、どなたもご存じの基本から「なぜ近年花粉症、そしてこどもの花粉症(そっくりの病気)が増えているのか?そしてまたそれにどのように対処すればいいのか?」を考えています。そして今回がその最終回になります。

 前回は「自然はもう人類を仲間とは思っていない。そして何でもかんでも科学を武器にして自然と闘っていては逆に人類が苦しむだけではないか」という私の考え方をお話ししました。だったらどうするのかということでしょう。そうでないと「喘息やアトピー性皮膚炎や花粉症で苦しんでいる現在のお子さん達をそのまま見捨てるのか?」とおしかりを受けてしまうでしょう。

 現在アレルギー性疾患で悩んでいるお子さんを見捨てるようなことはいたしません。私も最新のアレルギー治療に関する情報をよく勉強しているつもりです。「今は今のやり方でやりましょう。そして未来に向かってどのようにしたら自然と人類が共存できるようになるのか考えていきましょう。」ということなのです。

 ちょっと汚い話で恐縮ですが、私がこどもの頃には寄生虫なんてのはいて当たり前みたいな話で、私自身便の中に蟯虫がウジャウジャいるのを見た記憶がありますし、弟のおしりから回虫が出てきたのを目撃した記憶もあります(キタナクテスミマセン)。

 寄生虫のいる人の血液検査をすると、好酸球という種類の白血球が増えていて、IgEというアレルギーに関係するグロブリン(抗体)も高値を示すことが知られています。アレルギー疾患の方の血液検査でも同じこと(好酸球が多くてIgEが高い)が言えます。そして寄生虫が多かった時代にはアレルギー疾患は少なく、寄生虫が少なくなった(ほとんどいなくなった)現代ではアレルギー疾患が増えているという事実があります。

 ここで注意が必要なのは、寄生虫が少なくなったからアレルギー疾患が増えたのかどうかはわからないということです。もしかしたら因果関係があるかもしれないし、もしかしたら偶然そうなっているだけかもしれないのです。このことはまだ解明されていません。

 もう一つ面白いことがあります。アレルギー対策を訊かれた専門家の多くが「適当に不潔であること」が必要だと答えます。さすがに寄生虫が増えたほうがいいと言う専門家はいませんが、あまりにも潔癖すぎる環境(今の日本ではそれが求められすぎていると私は思っています)では、ちょっとでも不潔なものはとても目立って、すぐに「ヨソモノ」のレッテルを貼られてしまいます。ヨソモノに対してはアレルギー反応を起こしやすいというのが現代人の置かれた立場であることは今までにお話ししてきました。

 適当に不潔な環境では清潔なものから不潔なものまで雑多なものが入り交じっていますから、どこまでが身内でどこからがヨソモノなのかの判別は簡単ではありません。したがってアレルギー反応も起きにくいということは推測できます。

sea.jpg

 この「雑多なものが入り交じっている」ということが私たちの目指すべき未来であり、本来地球上がすべてそのようになっていた自然の姿なのだと思います。これを生物学的多様性といいますが、近年誰にでもわかりやすいように生態系という言葉のほうが多く使われるようになっています。そしてこの生態系をまもる学問が生態学=エコロジーです。今はやりの「エコ」とは似た点もありますがちょっと違います。

 ところで「エコ」といえば「地球にやさしい」が合い言葉のようになっています。そして地球温暖化への危機感の高まりから「人類の棲めない地球になる前に」という言葉も「エコ」の宣伝文句のように使われています。「エコ」という言葉自体ががそういう意味(人類を中心に置いて地球を守ろうという意味)なのだというならそれは許せます。しかしこれは本当の意味でのエコロジーでも生態学でもない言葉だとしかいいようがありません。

 雑多なものが入り交じって生息し、生物学的多様性がまもられている自然な姿の中で、そこに存在するすべてのもの一つ一つに、今あるままのそのままの姿で価値を認めて大切にする。

earth.jpg

 これがエコロジー=生態学の出発点なんです。そしてすべてのものが対等の価値を持つ中であるものは生き残り、あるものは死滅していく、それを人類の意志ではなく、生命の意志として見守っていく、それこそがエコロジー=生態学なんです。

 地球上の生物学的多様性をその知恵によって破壊してきた人類、多様な生物の価値というものをその知恵によって勝手に順位付けしてきた人類、そしてその価値の順位の頂点に人類を置いた人類、そして今その頂点に立つ人類が棲める状態で地球をまもろうという「エコ」のどこに地球に対するやさしさがあるというのでしょうか?人類のためのエコロジー(=「エコ」)なんて存在しないのです。

 な〜んて、話が大きくなりすぎましたが、+(プラス)の価値観だけを重視して発展してきた20世紀的な発想をやめて、今まで無視してきたー(マイナス)と思われる事物にもそれなりの価値があることを認め、雑多な価値を持つものが混沌と入り交じって存在するような、つまりどこまでが身内で、どこからがヨソモノかよくわからないような世の中が実現すればアレルギー疾患も減るのではないでしょうか?

horizon.jpg

 なぜならそのような世界は人類も含めてすべての生き物にとって生きやすい(価値を認められる)、まさにエコロジカルな地球だと思うからです。「地球にやさしい」なんていう思い上がりはやめて、「地球がやさしい」を実現するにはどうしたらいいのか、一人一人が真剣に考える必要があると思います。

 いつやるか?
 今でしょう!(ちと古かったですかね)

集中連載は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。


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2016年04月08日

こどもの花粉症(集中連載5)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 スギ花粉症が抗原抗体反応の一種であるアレルギー反応によって起こるという、どなたもご存じの基本から「なぜ近年花粉症、そしてこどもの花粉症(そっくりの病気)が増えているのか?」を考えています。

 前回は抗原抗体反応の抗原側、つまりアレルゲンとなるスギ花粉について私の考えをお話しさせていただきました。今回は抗原抗体反応の抗体を作る側、つまり最近のこどものからだに何が起こっているのかについて、これまた私の考えをお話しさせていただきます。

img02.jpg 近年、といってももう20年以上も前からですが、虫に刺されたときの反応がとても強く出てしまう子が増えています。私がこどもだった頃はもちろんですが、現在お子さんを連れてこども診療所にいらっしゃる世代の方々のこどもの頃も、虫刺されで病院に行くなんてことは考えもしなかったでしょう。「虫刺されなんかなめときゃいいよ」程度ですまされて、それでも翌日にはチョット赤味が残るぐらいでした。
(画像はすべてクリックで拡大されます)

img04.jpg ところが最近のこども達の虫刺されは、水ぶくれになってしまったり、真っ赤に腫れあがってしまったり、象の手足みたいにむくんで太くなってしまったり。親御さんがこどもの頃には経験したことがないような強い反応を起こしてしまいます。それでビックリして病院に連れてきてしまうのではないでしょうか?

img10.jpg 虫刺されというのは言ってみれば「よそ者が侵入しようとした」ということです。そのよそ者が一応身内に近いと判断すれば反応は弱くなります。そのよそ者が不倶戴天の敵だと認識したならその反応は強くなってしまいます。どうも最近のこども達は、虫刺されをとうてい許し難い敵の侵入と捉えているような気がしてなりません。だからこそあんなに強い反応を起こしてしまうのです。

 虫も花粉も自然の一部です。その自然の一部がからだに入ろうとするときに、「あ、身内の方ね、どうぞどうぞ」と受け入れていたのが昔のこども、「あ、敵が攻めてきた、やっつけなきゃ」と反応してしまうのが現代のこども。それだけ人間が自然から離れてしまったと言えるのではないでしょうか?

 虫刺されのあとの反応が強いのも、こどもの花粉症が増えているのも、ごく当たり前にある自然を素直に受け入れることができなくなってしまった人類に起こる当然の状況といえるかもしれません。

 それは自然を克服して服従させ、自分達に都合のよいように利用し続けてきた人類に対する、自然からのある種の警告ではないでしょうか?「自然はもう人類を仲間とは思っていない」。私にはそう思えるのです。

 こども診療所ではアレルギー性疾患の治療をそれほど積極的にはしていません。それはこれ以上自然に敵対すればますますアレルギー性疾患が増えてしまうのではないかという危機感があるからです。何でもかんでも科学を武器にして自然と闘っていては逆に人類が苦しむだけではないかと考えるからです。

 ではどうすればいいのか?それを次回お話ししてこの集中連載を終わりにしたいと思います。では次回をお楽しみに。


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2016年04月07日

こどもの花粉症(集中連載4)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 スギ花粉症が抗原抗体反応の一種であるアレルギー反応によって起こるという、どなたもご存じの基本から「なぜ近年花粉症、そしてこどもの花粉症(そっくりの病気)が増えているのか?」を考えてみましょう。

 今回は抗原抗体反応の抗原側、つまりアレルゲンとなるスギ花粉について私の考えをお話しさせていただきます。

 「お山の杉の子」という歌をご存じでしょうか?第二次世界大戦中に作られた歌なのでご存じの方は少ないと思いますが、その一番の歌詞は次のようになっています。実際は六番まである長い歌です。もともとは傷痍軍人や戦死者の遺族を慰め励ますという戦意高揚の歌でしたが、戦後GHQによって放送禁止となり、その後国土(自然)の回復(緑化)を目指すように二番以下の歌詞を変えて歌い継がれたものです。

一、
昔々の その昔 椎の木林の すぐそばに
小さなお山が あったとさ あったとさ
丸々坊主の 禿山は いつでもみんなの 笑いもの
これこれ杉の子 起きなさい
お日さま にこにこ 声かけた 声かけた

sugi2.jpg 戦争による国土の荒廃で禿山がいっぱいできてしまいました。戦後政府は国策として杉の植林を奨励して国土の緑化を推進しました。その杉の木は30年、40年、50年とたつうちにどんどん大木となって多くの花を咲かせたくさんの花粉をまき散らすようになりました。(写真はクリックで拡大されます)

 それだけではありません。戦後日本の林業は安い外国産の木材に押されて衰退の一途をたどっています。本来林業というのは、植林した木々が成長するのに合わせて木と木の間隔を適度に保つため間伐という作業を必要とします。読んで字のごとく「間の木を伐採する」という意味です。林業従事者の少なくなった日本の山々では植えられた杉の木が間伐されずに密集して立っています。これも花粉の量を増やす一因になっていると考えられます。

sugi1.jpg さらに私は自然環境の悪化も花粉量増加の原因になっていると考えています。(写真はクリックで拡大されます)

 すべての植物は生存の危機に瀕するとたくさんの花を咲かせて子孫をたくさん残そうとします。間伐が行われずにギュウギュウ詰めの杉の木にとって生存すること自体が困難になってきているのかもしれません。さらに自然環境の悪化が生存の危機に拍車をかけていることは十分に考えられることです。生存の危機にさらされた杉の木はたくさんの花を咲かせ、たくさんの花粉を飛散させることになります。

 では、花粉の量が増えるとどうなるでしょうか?

 本来花粉症というのは少量のスギ花粉に10年、20年と長期間さらされ、感作されることによって発症する病気であるということはすでに申し上げました。もし花粉の量が大量だったら、感作のための期間が5年、あるいはもっと短く3年ぐらいに短縮されてしまう可能性はあると思うのです。そうすれば小学校低学年あるいは幼稚園児でさえも花粉症を発症するようになってしまうでしょう。

 この考えが正しければ、「こどもの花粉症(そっくりの病気)は感作期間が短くなった大人の花粉症そのものである」という結論も導き出せるのですが、この辺は理論的裏付けがあるわけではありませんので、私の個人的な意見として受け止めてください。

 今日はこどもの花粉症(そっくりの病気)が増えている原因をアレルゲン(抗原)であるスギ花粉の側から、スギ花粉の量の増加という観点で考えてみました。次回は抗体を作る側であるこども達を中心に考えてみたいと思います。

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2016年04月06日

こどもの花粉症(集中連載3)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 前回は、アレルギー反応も生態防御機能の一つなのだけれど、通常とは異なった、奇妙な反応を起こしているのだということをお話しました。今回はこのアレルギー反応について少しだけ詳しいお話をいたします。

 抗原が体内に入ると抗体ができるという基本は同じでも、アレルギー反応の場合は、ある種の抗原がすべての人にとって抗原になるとは限らないという特徴があります。たとえば、はしかのウイルスまたはワクチンが体内に入るとすべての人にはしかに対する抗体ができます。ところが、スギ花粉が体内に入っても抗原(外敵)として認識して抗体を作る人と、抗原とは認識せず(味方として認識)抗体を作らない人がいるということです。この違いがどうやって起こるのかはまだ完全には解明されていません。

 抗原と認識して抗体を作る人にとって抗原のことをアレルゲンといいます。アレルゲンに対して抗体を作ることを感作といいます。同じアレルギー性疾患の人でも、その人によってアレルゲンが異なることがあります。Aさんは卵を食べるとアレルギー反応を起こすけれど牛乳なら起こさない、Bさんは卵は平気だけれど牛乳は反応を起こすというようにです。スギ花粉症ではすべての人がスギ花粉をアレルゲンとして感作されているわけです。

 また、すでに感作されているアレルゲンに出会えば、アレルギー反応は必ず起こります。「昨日は反応しちゃったけど今日は平気」ということはありません。よく、「離乳食で卵を食べたら発疹が出てしまった」と来院なさる方がいらっしゃいますが、「今回初めて食べたんですか?」と伺うと「今まで何回か食べてます」、「じゃ今回は調理法を変えたんですか?」「いいえ、いつもと一緒です」。これは卵アレルギーではないんですね。

 では、アレルゲンの量とアレルギー反応の強さは関係があるのでしょうか?私が医学部の学生で、アレルギー反応にかかわる色々な因子が発見され始めた頃には、「アレルギー反応はアレルゲンの量の多少には関係なく起こる」、つまりどんなに少ないアレルゲンでも出会えば必ず反応する、と教わりました。もう40年以上も前の話です。

 しかし、その一方で反応を起こさないぐらいにアレルゲンを薄めて(場合によっては1億倍にも薄めて)何回か注射をし、アレルゲンに慣らしていって次第に濃度を高め、だんだん高濃度のアレルゲンに対しても反応を起こさなくする治療(減感作療法といいます)も盛んに行われていましたから、アレルゲンの量とアレルギー反応の強さの関係はどうもよく理解できませんでした。

 今でもよくわからないのですが、花粉情報などでは「明日は花粉の飛ぶ量が多くなりますから十分ご注意ください」なんて言ってますから、最近では「アレルゲンの量が多ければアレルギー反応は強くなる」と考えられているのかもしれません。あるいは「アレルギー反応はアレルゲンの量に関係なく起こるが、反応の強さはアレルゲンの量によって変わる」ということなのかもしれません。

 アレルギー反応の基本を理解していただいて、いよいよ次回から「なぜこどもの花粉症(そっくりの病気)がふえているのか」という本題に入ります。


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2016年04月05日

こどもの花粉症(集中連載2)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 30億年前の地球の話です。その当時私は・・・、そんなわけありませんね。その当時地球上に「細菌」という生物(生命体)が発生(誕生)しました。これは生命体の歴史の中で画期的な出来事でした。どこが画期的かというと、細菌は生命の源であるDNAを包む殻(細胞膜)を持っていたからなんです。それまではDNAむき出しのままの生命体でしたから、物理的にも化学的にも生物的にも外敵に襲われて滅びてしまう危険がとても高かったのです。細胞膜を持つことによって外敵の侵入を一時的であるにせよ食い止めて生存の危機を乗り越えることができるようになりました。生命体が自分を守る(生体防御)機能を持ったという意味で細菌の出現は画期的な出来事だったのです。

 なんかすっご〜い難しそうな話でスタートしましたが、ただカッコつけてるだけです。ここから先はそんな難しい話ではありません。とにかく、生命体が自分を守ろうとする機能を持ったのが30億年前で、その後生物の進化にともなって様々な生体防御機能が備わっていった、発達していったということと、今私たちを苦しめているアレルギー性疾患も、この生体防御反応の進化の流れの中から出来てきたということを申し上げるための前置きなんです。

 30億年という歳月をかけて、生体防御反応は「殻に閉じこもってひたすら外敵が遠ざかるのを待つ」という消極的なものから、「侵入しようとする外敵を見つけて排除する・攻撃する・撃退する」という積極的あるいは攻撃的なものへと進化してきました。現在私たち人類を外敵から守っているのは、このような積極的・攻撃的な生体防御反応です。

 すべての生命体は外界にあるものを体内に採り入れて利用し生存しています。空気を吸うのも、食べ物を食べるのもそうです。ですから「侵入しようとする外敵を見つける」ためには、体内に入ろうとする様々なものが敵なのか味方なのかを区別しなければなりません。敵だったら侵入を阻止する、味方なら受け入れるということですね。

 外敵の侵入を阻止する方法もいくつかあります。まず、涙・鼻水・咳・くしゃみのように悪いことをしそうな奴を体の外に追い出してしまうというのも一つの方法です。体内に入ってきた細菌のところに白血球がワッと押し寄せてきて細菌を食べてしまうというのも一つの方法です。そしてもう一つが今日のお話の主人公である抗原抗体反応で、侵入してきた外敵(抗原)の一つ一つに対して、それぞれの必殺特殊部隊(抗体)を編成して、まずは外敵をやっつける、そしてこの抗体は体内に常駐して、その後同じ抗原が侵入しようとすると即座に攻撃を仕掛けてやっつけてしまうという仕組みです。

 はしかや水ぼうそうやおたふくかぜに一度かかると免疫ができてその後一生かからないというのは体内に抗体が常駐して見張っているからなんです。抗体は一人一殺主義ですから、はしかに対する抗体がおたふくかぜウイルスをやっつけるということはありません。一つ一つの抗原に対して一つ一つの抗体が作られるのです。

 ワクチンによる予防接種もこの抗原抗体反応を利用しています。発病しない程度に毒性を弱めたワクチンなるもの(抗原)を体内に入れて、平和のうちに(発病させずに)抗体を作り、その後の病気の予防に役立てようというものです。

 ここまでの話なら抗原抗体反応というのは生体防御反応だという説明も納得がいくと思います。ところが、まったく同じ抗原抗体反応でも、アレルギー反応と呼ばれる反応のしかたをしてしまうと天下の嫌われ者になってしまいます。「アレルギー」という言葉はもともとギリシャ語で、「異なった反応」とか「奇妙な反応」という意味です。本来自分を守るはずの抗原抗体反応が逆に自分を苦しめてしまうなんて、普通の抗原抗体反応とは異なってるな、奇妙だなという意味です。

 というところで今週も大分長くなってしまいました。花粉症の話とは関係なさそうですが、一度「アレルギー性疾患」というものについて私の考え方をまとめて書いてみたいと思っておりましたので、この機会に基本の部分からお話ししたいと思っています。


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2016年04月04日

こどもの花粉症(集中連載1)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 先週の医学講座でこどもの花粉症についてちょっとだけお話しました。もともとが「花粉症にワセリン?」というのが本題でしたから、こどもの花粉症についてはあっさりと流したのですが、実は私、こどもの花粉症についてはものすごい独断と偏見を持っていまして、なかなかそれを話す機会がないのをとても残念に思っていたのです。先週の話は私の思いの導火線に火をつけてしまいました。

 そしてとうとう爆発してしまいました。「毎週月曜日は・・・」ではなく、これから毎日集中連載で話をさせていただきます。

 今まさにスギ花粉症のシーズン真っ只中。街の中、電車の中でマスクと時にはゴーグルに身を固めた方が目につきます。ほとんどは大人の方なのですが、近年お子さんがこの季節に鼻水や鼻づまりが止まらない、くしゃみが止まらない、涙が止まらない、目がかゆいといった花粉症と全く同じ症状を訴えて受診なさるケースが増えつつあります。中にはスギ花粉に対してアレルギー反応を起こすことが検査で確認されているお子さんもいらっしゃって、「花粉症」という診断をつけてしまうことが多いのですが、厳密に言えばこどもに花粉症は起こらないのです。

 そもそも「スギ花粉症」が一個の独立した病気であると認められたときには、「スギの花粉に10年、20年という長期にわたってさらされた結果、スギ花粉に対してアレルギー反応を起こすようになった(感作された)のが花粉症である」ということが定義として受け入れられたのです。患者さんは有名な日光杉並木の近くに住む女性の方でした。

 当時はこのように長期間かけて感作されるアレルギーというのが医学的にはあり得ないとされていましたので、「スギ花粉症」はしばらくの間学会には認められなかったのです。

 逆に言えば、この定義に従う病気が小学校低学年のこどもに出ることはあり得ないということになります。「こどもに花粉症はあり得ない」のです。ですから、今花粉症そっくりの症状で悩んでいるお子さんに診断名をつけるとしたら、「季節性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性結膜炎の合併」というのが正しいということになります。

 しかし、「スギ花粉症」を引き起こすアレルギーのメカニズムが存在するということが永年かけて認められたように、こどもに「スギ花粉症」を引き起こす新たなアレルギーのメカニズムが発見されないとも限りません。その時には「小児花粉症」とか何か別の病名が命名されるでしょう。少なくとも大人に起こる「スギ花粉症」とは別物だと私は考えています。

 一方で、スギ花粉によって喘息発作を起こしてしまう子というのは以前から存在していましたから、アレルギーマーチという言葉があるように、お子さんの年齢や体質、あるいは生活環境などによって、今までに知られているアレルギーのメカニズムの中で、喘息ではない別の症状を呈するアレルギー反応が引き起こされて「季節性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性結膜炎の合併」=「スギ花粉症(そっくりの病気)」になるという可能性はあると思います。

 ちなみに、アレルギーマーチというのは、アトピー性皮膚炎の子が年齢によって気管支喘息になったりアレルギー性鼻炎になったりと別の病気を連鎖的(次から次へと)に起こしてくることを指しています。

 アレルギーマーチの一環として「スギ花粉症(そっくりの病気)」が起こっているとすればお子さんが一生この症状に悩まされるかどうかは何とも言えません。いずれ年齢とともに消えてしまうか、別のアレルギー性疾患に移行するという可能性も考えられるということです。

 いずれにしても治療は大人の「スギ花粉症」と全く同じです。抗アレルギー薬と点眼薬と点鼻薬を症状によって組み合わせて使うということです。使うクスリはこどもであるという点を考慮して大人とは多少違う種類のものを使うこともありますが、基本的な治療方針は同じです。このような治療を続けながら、こどもの「スギ花粉症(そっくりの病気)」の本質の解明を待つということだと思います。

 次回は「なぜこどもの花粉症(そっくりの病気)が増えているのか」ということをお話したいと思います。


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2016年03月28日

花粉症にワセリン(その2)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 先週「花粉症にワセリン」の記事をアップしてからつらつら考えてみました。また「こどもの花粉症」についてのお話もせずに記事を終了してしまったことにも気づきました。

 というわけで今週は続編として「花粉症にワセリン」に対する考察と「こどもの花粉症」についての私の考え方をお話ししようと思います。

 まず「花粉症にワセリン」のほうですが、イギリスNHSのサイトに掲載されたワセリンと私が経験したレスタミン軟膏を同時に鼻の穴に塗ったらどうなるかという話です。

 医学的根拠はまったくありませんが、ワセリンが花粉を吸着して、レスタミンが鼻の粘膜を保護してくれたら、両者を単独で使うより大きな効果を期待できるのではないかということです。

 先週も書きましたが、プロペトという軟膏は眼軟膏の基剤として使われますから、鼻の粘膜に害を及ぼすことはないだろうと思います。また、基剤として使われる軟膏ですからレスタミン軟膏と混合しても問題なさそうに思えます。残るはレスタミン軟膏を鼻の粘膜に塗ることに問題がないかということです。

 こればかりは何とも言えません。私一人の経験では何の問題もありませんでしたが、すべての人に問題なしとは言えないのです。

 かといって、私自身は「このまま埋もれさせてしまうには惜しいアイディア」ではないかという思いを捨て去ることができません。いつか機会があったら試してみたいと考えています。

 次に「こどもの花粉症」ですが、日本特有の疾患としてだいぶ昔に発表されたスギ花粉症は、10年、20年という長い年月スギ花粉にさらされた結果、スギの花粉がアレルゲンとなって感作されて発病するという、それまでのアレルギーの概念からはずれる疾患でした。

 ですから厳密に言えば、10歳未満の小児に起こることはないと言っていいような疾患です。でも近年、5歳ぐらいから花粉症と全く同じ症状(鼻水+鼻づまり+目のかゆみや充血)を訴えるお子さんが増えているのは事実です。そして血液検査上は、その症状の原因としてスギやヒノキなどの花粉の関与が疑われるケースが多いのも事実です。

 でもこのようなお子さんに長い年月をかけて感作される本来の花粉症という病名を使うことには抵抗を感じます。食物アレルギーなどのように短い期間で感作されるアレルギー疾患と考えて「花粉症」とは言わずに「花粉アレルギー」あるいは「小児花粉症」と呼んだほうがいいのではないかと常々考えています。

 もっとも、治療に関して言えば、本来の花粉症と全く違いはないわけですから、そんな細かいことにこだわらなくてもいいじゃないかとも思うのですが・・・。

 それでも、こどもの花粉症がすべてアレルギー反応によって起こっているのかということについては疑問を感じています。

 例えば、コショウ(調味料)の粉をかけられて目が痛くなり涙があふれ、くしゃみを連発して鼻水だらだらになっても、誰もアレルギーとは言わないでしょう。誰もがコショウという刺激物質で起こった反応だとわかるからです。

 花粉も粉であることには変わりありません。アレルギー反応としてではなく、刺激反応として目や鼻の症状が出るということはあり得ないことではないと思うのです。ただ、コショウと違って花粉に対する反応に個人差があるということは、一人一人の粘膜の敏感さに差があるということだと思います。花粉症のようになる子は特に敏感(過敏)なのだとも言えるのです。

 粘膜が過敏だというのはアレルギー疾患にも共通ですので、何もわざわざ過敏反応だと分けなくてもいいのかもしれませんが、歳をとると細かいことが気になりましてね。ついつい余計なことを書いてしまったかもしれません。


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2016年03月21日

花粉症にワセリン????

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
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 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 花粉症のシーズンまっただ中、つらい症状でお悩みの方も多いと思います。近年花粉症の症状を訴えるお子さんも増えているように感じます。これらお子さんの花粉症がすべてアレルギー反応に基づいているかという点では、私は多少疑問をもっているのですが、それはまたあとで触れるとして、花粉症の予防に関して面白い記事を見つけましたのでご紹介したいと思います。

 花粉症対策として鼻の穴にワセリンを塗る方法の紹介です。まずはこちらの記事をご覧ください。(左の文の「記事」という文字をクリックするとリンクします)

 大変長い記事でしたが、お読みいただけましたでしょうか?

 「ウッソダロ!バカバカシイ!」と思われたあなた。普通はそう思いますよね。でも私は20年以上前に似たような経験をしたことがあるのです。

 その当時私は愛育病院に勤めていました。そこの小児科の看護婦さん(その当時は看護師という呼称はなかったんです)が、「鼻づまりの時に鼻の穴にレスタミン軟膏を塗るといいですよ」と教えてくれたのです。

 レスタミンというのは抗ヒスタミン薬で、蕁麻疹の治療や虫さされのかゆみ止めに使います。内服薬は鼻汁の分泌を抑えるので風邪薬としても使います。ただ、内服薬は眠くなるという欠点を持っていました。しかし鼻の穴に塗る(外用薬)のなら眠くなる心配はありません。しかも鼻の粘膜のむくみを取ってくれる作用も持っているとも思えます。さらに液体と違って長く鼻の粘膜にとどまってじわじわと吸収されますから、効果が持続するという利点もありそうです。

 とまあ、いいほうに考えたのですがそれでも半信半疑でいました。その内不覚にも風邪をひいてしまってひどい鼻づまりとなってしまいました。診察中に鼻汁はたれてくるしでダメモトと思って試してみました。そしたら不思議なほどよく効きましたねぇ。塗ってしばらくすると鼻はスースー鼻水ピタリで効果は抜群でした。しかも眠くもなりません。教えてくれた看護婦さんに感謝、感謝です。

 でもレスタミン軟膏のこのような使い方は健康保険では認められていませんし、まっとうな医学書にもこのような使い方の記載はありませんでしたから、患者さんにお勧めすることなくいつの間にかそのことを忘れていました。

 最近になってレスタミンとワセリンの違いはありますが似たような使い方の記事を見つけて、昔のことを思い出したという次第です。

 そこで早速ネタ元の「NHS choces」(クリックでリンク)にアクセスしてみました。確かにそのような記載がありました。原文は次の通りです。

 Rubbing a small amount of Vaseline (petroleum gel) inside your lower nostrils can help to prevent pollen from entering your nasal passages.

 日本語の記事にも和訳が載っていましたが、直訳しますと「あなたの下部鼻腔(訳者注:鼻の穴の入口に近い方)の内側に少量のワセリン(ペトロリアム ゲル)をこすりつけることがあなたの鼻の通り道に花粉が入るのを防ぐ一助になりえます」となります。

 NHSというのはイギリスの国民健康保険みたいなサービスを取り仕切るお役所で、日本の厚生労働省の一部門といえるれっきとした政府機関です。そのサイトに掲載されているのですからあながちでたらめとは言えないでしょう。

 私が経験したレスタミン軟膏と違うところは、レスタミンが抗ヒスタミン薬として作用を発揮するのに対して、ワセリンは花粉を吸着させることによって花粉の侵入を防ぐということのようです。ということは、鼻の粘膜に近いところから入ろうとする花粉は吸着できるけれど、鼻の穴のど真ん中を通る花粉は通過してしまうということですね。やはり直訳通り「花粉が入るのを防ぐ一助になりえます」程度の効果しか期待してはいけないのではないでしょうか?日本語の記事のタイトルのように「花粉症の救世主?」というのはちと言い過ぎのように思えます。

 ただ、純度の高いワセリン(日本での商品名はプロペト)は眼軟膏の基剤として使われています。目の粘膜に塗っても大丈夫なら鼻の粘膜でも大丈夫と言うことはできると思います。自分で試してみるのが一番なのでしょうが、私には花粉症の気がまったくありません。歳をとってからは人間が枯れてきて風邪をひいても鼻づまりや鼻汁に悩まされることも少なくなってきています。残念ながら自分で試す機会がないのです。

 プロペトはこども診療所でも使っていますが、花粉症対策として健康保険で処方することはできません。でも市販薬として購入することもできますから、一般的な予防法や治療法で今ひとつ効果が、という方は試してみて害になるものではないと思います。ワセリンのたぐいは一般的には保湿剤として広く使われていますから、乾燥肌の予防や治療にも使うことができます。


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2015年07月20日

こどもへの目薬のさし方

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 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 この記事は2007年8月6日に掲載したものです。先日この記事にコメントをいただきました。8年も前の記事をお読みいただいてうれしい驚きでした。

 8年前の記事のタイトルは「目薬の正しいさし方」でした。しかし、最近訪れたある眼科系のサイトで、この記事に書いてある点眼法を「正しい」と言ってはいけないことがわかりました。でもそれは多分大人の方が使う時の正しいやり方だと思いますので、こどもに対してはこの方法でよかろうと思っています。

 それでタイトルを「こどもへの目薬のさし方」と変えて再掲載することにしました。記事の内容は8年前とほとんど同じです。

 いやがるこどもに無理矢理目薬、どなたにも経験があると思います。こどもは目薬を入れられるとき、なぜあんなに怖がったり、いやがったりするのでしょうか?

 答えは簡単!「目をあけて目入れようとするから」デス。

 大人の方に目薬を渡して、「ではここでご自分で目薬をさしてみてください」と申し上げると、たいていの方は片手の親指と人差し指で上まぶたと下まぶたを押し広げ、その真ん中に目薬を入れようとします。目薬というのはそうやって使うものだと多くの方が信じています。だからこどもにも同じようにやってしまうのでしょう。テレビで流れる目薬のCMでも、目が大きくて見栄えのするタレントがこれでもかとばかり目を見開いて目薬を入れていますものね目目

 これが大人用の正しい点眼法なのです。

 でもこどもの場合、目薬は必ずしも開いた目の中に入れなくてもいいだろうと思うのです。これからこどもも怖がらない目薬のさし方をお教えしましょう。

 まず目を閉じて仰向けに寝かせます。目をつぶったまま、目頭のちょっと凹んだところに目薬を落としますたらーっ(汗)。「まだ目をつぶってて」と言いながら反対側の目の目頭の凹みに目薬を落としますたらーっ(汗)。「ハイ目を開けて」。これでおしまいです。片側に目薬を入れたあとすぐに目を開けてしまったら、こぼれた目薬をやさしく拭き取ってあげて、「ハイ今度は反対側」と言って同じ動作を繰り返しましょうたらーっ(汗)

 その子専用の目薬でしたら、目頭の部分に軽く押し当ててもいいでしょう。大人ではいけないようですけど・・・。

 コツは、多少無駄になってもいいから何滴か多めに落とすことです。オタメシクダサイ手(チョキ)
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2015年05月18日

斜視じゃないでしょうか?

clinic.jpg月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 この記事は、実は8年前の2007年に掲載したものです。なぜ今頃再掲載するのかといいますと、最近この記事をブログでご覧になったという方がお子さんをお連れになって「斜視じゃないでしょうか?」とご相談に来られたからです。

 それで古い記事を探しまくって見つけ、もう一度読み返してみたら、まだ説明の足りない部分がありました。それなのにご相談に見えた方には「家に帰ってもう一度読んでください。ちゃんと書いてありますよ。」なんて言ってしまったのです。
 
 それで説明不足を補って再掲載することにしたのです。

 公費による東京都の乳幼児健診は3-4ヶ月、6-7ヶ月、9-10ヶ月、1歳6ヶ月、3歳の5回行われています。そのうち6-7ヶ月健診で割と多く受ける質問が、「この子斜視じゃないでしょうか?」というご心配です。そのほとんどは目が内側に寄っているというもので、いわゆる内斜視ではないかというご相談です。

insquint.jpg

 まず上の写真をよくご覧ください。
 ではここでクエスチョンです。「写真のお子さんは内斜視でしょうか?それとも正常でしょうか?」

 答えは来週のこの時間、、、では遅すぎですね。正解は「正常」です。

 「え〜〜〜っがく〜(落胆した顔)、内斜視じゃないのexclamation&question。だって左の黒目はまっすぐ向いてるのに、右の黒目は目頭にくっついちゃってるじゃん。」と思われたあなた、このお子さんの黒目の中心をご覧ください。黒目にカメラのフラッシュが写っています。このフラッシュが左右の黒目の同じ位置に写っているということは、両方の目がまっすぐ同じ方向を向いているということなのです。

 東洋人は西洋人に比べると両目の間隔が広くできています。そのためこの写真のように実際は正常なのに内斜視のように見えてしまうケースが多いのです。このような斜視を「偽性内斜視」といいます。目の錯覚です。偽性内斜視は成長とともに目頭の筋肉が発達すると両目の間隔が狭くなり全くわからなくなってしまいます。

 斜視かどうかは光の当たり方を確認することで正しい判断ができます。写真に撮らなくても部屋の照明の当たり方で判断することもできます。ただし、光源が近すぎるとそれを見ようとして自然に目が内側に寄りますから正しい判断はできません。ここに掲載した写真はズームレンズを使って遠くから撮影したので、お子さんは遠くを見ている状態だったのです。

 この方法はどなたでもご家庭で簡単に試してみることができます。お子さんを床の上に仰向けに寝かせて、天井の証明が両目にどのように映っているかを見ればいいのです。できれば光の方ではなく別の方向を向いている両目への光の当たり方を見たほうがよいでしょう。

 ここからが補足の説明です。

 「東洋人は西洋人に比べると両目の間隔が広くできています。そのためこの写真のように実際は正常なのに内斜視のように見えてしまうケースが多いのです。このような斜視を「偽性内斜視」といいます。目の錯覚です。偽性内斜視は成長とともに目頭の筋肉が発達すると両目の間隔が狭くなり全くわからなくなってしまいます。」という説明の補足です。

 おとなでも東洋人は西洋人に比べると両目の間隔が広くできています。こどもではその傾向がより顕著です。そのため上に掲載した写真のように実際は正常なのに内斜視のように見えてしまうケースが多いのです。目の錯覚で、成長とともに目頭の筋肉が発達すると両目の間隔が狭くなり全くわからなくなってしまいます。

 お子さんの目が下の図のように見えたら、両方の目頭の間の皮膚をつまんで「キツネ目」のようにしてみてください。きっと正常に見えるはずです。もともと正常なのですから・・・。

squint.jpg

その上でやはり斜視かもしれないとなったらご相談ください。



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2014年09月15日

水ぼうそうのおさらい(2)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


 先週に引き続き水痘(水ぼうそう)について復習してみようと思います。

    《水ぼうそうの診断》

cpox1.png 典型的な水疱を形成した時期の水ぼうそうの診断は比較的簡単です。一目でわかるという感じです(右の写真の乳首の下の方にある一番大きな発疹)。でも、発疹の起こり始めは、虫さされの直後や入浴後などに見られる赤い斑点などとそっくりで、水ぼうそうと断定できないこともあります(写真の左上の方や乳首のすぐ上の発疹)。そんなときは翌日もう一度来院していただくことで水ぼうそうと他の原因の発疹とを見分けることができます。
 とにかく見ることで診断がつく病気です。

 診断に困るケースについていくつか例を挙げておきます。

(1)保育園や幼稚園の先生が発疹を見つけ、「水ぼうそうかもしれないので医者にかかってください」と言われてすぐに受診した場合

 集団生活の場では感染症は目の敵にされます。それで園の先生、特に保育園の先生は我々小児科医より初期の発疹を見つけるのが得意です。しかも当たる確率も高いのです。でも、園の先生はいいですよね。「医者に行っておいで」と言えば、そのあと診断に責任を持たなくてもいいのですからね。
 ところが我々小児科医は、先程お話しした「虫さされの直後や入浴後などに見られる赤い斑点など」と区別をして診断をつけなければなりません。それができない時はしかたなく「明日またお出で下さい」となります。
 もちろん、保護者の方が発疹を見つけてすぐに来院されたときも同じことになります。

 翌日診察する時のポイントは、もちろん水疱ができているかどうかですが、もう一つ、発疹が増えているかどうかということも大切です。水ぼうそう以外でできた発疹は翌日までに増えることはほとんどありません。

(2)予防接種を受けたのにかかってしまった場合

 水痘ワクチンの1回接種だと約15%の方が接種を受けたのにかかってしまうということが起きます。でも、接種せずにかかった時より軽くなることが知られています。軽さの程度ですが、水疱を形成してくれれば診断はかなり容易になりますが、中には水疱にならないほど軽くなるケースがあるのです。また、初日に数個の発疹ができたきり、それ以上に発疹が増えないケースもあります。この場合、翌日お出でいただいても「う〜〜〜ん」とうなることになります。
 もしそれが本当に水ぼうそうであれば、感染力がありますから、園や学校はお休みしなければなりません。保護者の方の心情(お仕事などをお休みしなければならない)をお察しすると、そう簡単には「水ぼうそう」とも言えません。
 世の中にはそういう小児科医が多いらしく、接種後の水ぼうそうの子が園や学校で集団感染を引き起こすということがけっこうあるようです。

 10月1日から水痘ワクチンは定期接種で2回接種になります。皆さんが2回接種を受けて、「2回接種を受けているから水ぼうそうではありませんよ」と自信を持って言える日が少しでも早く来るように願っています。


    《水ぼうそうの治療》

 水ぼうそうは合併症など引き起こさなければ自然に治る病気です。自然治癒には7日から10日かかります。自然に治るとはいっても、発疹はかゆみを伴いますので、かゆみ止めの乳液状のクスリ(外用薬)や内服薬を使用することが多いです。水疱をかきこわすことで、水疱の中のウイルスが皮膚の別の所に発疹を起こすことの予防の他に、かきこわしから細菌が侵入して皮膚感染症を起こすのを防ぐためです。

 最近は抗ウイルス薬が使われます。ウイルスの発育を抑えて、発疹の数や発疹がかさぶたになるまでの時間を短縮することができます(軽症化)。どれくらい軽くなるかというと、私は「約30%オフ」と説明しています。
 例えば、仮に水疱が100個できるはずだったとすれば70個ぐらいになる、治るまでが1週間だったとすると4・5日になる、という具合です。
 
 日本では、水ぼうそうという診断がつくとほとんどの医者がこの手のクスリを処方しますが、欧米では重症の場合に厳密に限られています。
 でも、「少しでも軽く済んでほしい、少しでも早く治ってほしい」という親心を思って私も日本の医者として抗ウイルス薬を処方しています。かゆみ止めだけで行くか、抗ウイルス薬を飲むかご相談の上でご希望があればということにはしていますけど。

 合併症の治療はそれぞれの疾患によって違ってきますので、ここでは触れません。

 
    《水ぼうそうの予防》

 もっとも確実な水ぼうそう予防の方法は水痘ワクチンの2回接種です。

 はしか(麻疹)はかつて年間に500人以上の方が命を落とすという疾患でしたが、2回接種の定期化と接種キャンペーンのおかげで現在撲滅寸前の状態にまでこぎつけています。

 水ぼうそうは現在年間100万人位の方がかかって、約4000人の方が入院し、約20人の方が命を落とす(いずれも推定)という状況です。重症度こそはしかに比べれば軽いと言えますが、それでも100万人もの方が水ぼうそうにかかるということは、医療経済的に見ても決して軽視できない数字であると言えます。

 水痘ワクチン2回接種の普及によって、近い将来水ぼうそうが絶滅できるといいですね。

 水痘ワクチンについては、このブログの「こども診療所予防接種講座」をご覧ください。

 それ以外の予防についてお話ししましょう。それ以外というのは、「水ぼうそうの子(人)と接触してしまった、何とか発病を予防できないか?」という場合です。

(1)追っかけ免疫
 水ぼうそうの人と接触して72時間以内に水痘ワクチンを接種すれば、発病を抑えられるか、あるいは軽く済ますことができるということは、以前から言われていて、実際に接種を行っている医療機関もあります。医者の間ではこれを「追っかけ免疫」と呼んでいます。ウイルスが先に入ってしまったけれど、そのウイルスを追いかけるようにワクチンを接種するということです。

 この場合には任意接種ということになり有料です。任意接種の場合、接種料金は各医療機関が定めた金額になりますが、1万円近い金額に設定している医療機関が多いのではないかと思います。かなり高額なワクチンですので、それほど普及しているわけではありません。

(2)予防投薬
 水ぼうそうの潜伏期は約2週間です。そこで、発病の日の見当をつけて、水ぼうそうの人と接触したあと7日目ないし10日目から1週間、水ぼうそうの治療に使う抗ウイルス薬を、実際に治療に使う量の半分を飲んで発病を押さえ込もうという治療です。

 こちらも、保険診療ではありませんので、全額自費となります。抗ウイルス薬もそれなりに高価なクスリです。

 では、追っかけ免疫と予防投薬ではどちらがよいかというと、これにはさまざまな意見があります。

 追っかけ免疫は発病を完全に抑えられるという保証はありません。発病してしまえば水ぼうそうにかかった状態ですから、お休みしなければいけないことになります。うまく発病を抑えられれば、体内に水ぼうそうに対する免疫ができます。もちろん1回接種としての免疫です。

 過去に任意接種で水痘ワクチンを1回接種していた場合に、追っかけ免疫で2回接種と同じ効果が得られるかというと、それには条件があります。1回目の接種から4・5年以内だったら2回接種とほぼ同じと考えていいだろうと思います。それ以上間隔があいてしまったら、1回接種と同じに近いと考えたほうがいいと思います。

 一方、予防投薬の場合、ほぼ確実に発病を抑えることはできます。しかし、水ぼうそうに対する免疫はできません。大人の方はお子さんに比べれば水ぼうそうの人と接触する機会は格段に少ないですから、たとえ免疫はできなくても発病を確実に抑える方法を選ぶというのはかなり有力な考え方だと思います。

 そういう見方からすると、お子さんには「追っかけ免疫」を、大人の方には「予防投薬」を、という図式ができそうですが、そう簡単なものではないと思います。

 でも、水痘ワクチン2回接種が普及すればこういう心配もしなくて済むわけですから、「水痘ワクチン待望の定期接種化」というところです。

 それから実際に水ぼうそうにかかったことがある場合、お子さんでも大人の方でも、「追っかけ免疫」も「予防投薬」も必要ありません。



 「水ぼうそうのおさらい」第2回の今日は水ぼうそうの診断と治療、そして予防のお話でした。私の個人的な意見も入っていますので、日本全国どこの医者に行っても同じ対応とは言えないと思いますが、参考になさってください。

 「水ぼうそうのおさらい」は今回で終了です。ご覧いただきありがとうございました。


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2014年09月08日

水ぼうそうのおさらい(1)

dav.jpg 曜日は医学講座の日。
 なぜなら人間のからだを示す漢字には
 (肉づき)のつくものが多いから。

 脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
 あなたはいくつ書けますか?


水痘ワクチンの定期接種化が決まったところで、わりとポピュラーな感染症である水痘(水ぼうそう)について復習してみようと思います。

    《水ぼうそうってどんな病気?》

水ぼうそうは水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスで起きる発疹の出る感染症です。飛沫感染、空気感染、接触感染で広がります。くしゃみなどで飛び出したウイルスが直接他の人に侵入するのが飛沫感染、くしゃみなどで飛び出したウイルスが空気中で水分が蒸発して乾燥しても感染力を維持していて他の人に侵入するのが空気感染、水ぼうそうの発疹(水疱)の中にいるウイルスが水疱が破れて外に出て他の人に侵入するのが接触感染ですが、感染経路がたくさんあるというだけでなく、乾燥してもなお生きているというとても感染力の強いウイルスです。

潜伏期間は約2週間ですが、かなりきっちり2週間で発病します。兄弟姉妹で感染した経験をお持ちの方はよくご存じと思います。

発疹の出現する1〜2日前から発熱を見るケースが約70%あります。まったく発熱しないこともありますが、他の人への感染はこの頃から始まっています。

発疹は皮膚の表面の赤い斑点から始まり、次第に水ぶくれになり、その後膿を持ったようになります。かゆみが強くなることが多いです。最終的にはかさぶたになって終わります。治療をしなければ発疹の数は平均で250〜300個といわれています。そしてかさぶたになるまで1週間から10日かかります。

下の写真は左から順番に水ぼうそうの経過を示しています。(同じ患者さんではありません)

cpox1.png  cpox2.png  cpox3.png
       (写真はすべてクリックで拡大されます)

園や学校はお休みしなければいけない病気ですが、すべての発疹がかさぶたになった時点(下の写真左)で登園・登校できます。かさぶたが取れるまで待つ必要はありません。

cpox4.png  cpox5.png  cpox6.png
       (写真はすべてクリックで拡大されます)

発疹は皮膚だけでなく粘膜の部分や頭髪の中にもできます。上の真ん中の写真は口の中の水疱(水ぶくれ)です。まぶたやおちんちんにできることもあります。

手のひら(上の写真右)や足の裏にできることもありますが、これらの部分は皮膚の表面(角質)がとても厚いので、なかなかかさぶたになりません。全体的にかさぶたができていれば、これらの部分はお休みの対象になりません。

集団生活の場で感染することが多いのですが、家族内で感染すると家庭では家族同士がとても近い距離で生活していますので、侵入するウイルスの量が増え、あとから発病した人のほうが発疹の数が多くなる傾向があります。

    《水ぼうそうの重症度》

一般的な水ぼうそうの概略をお話ししましたが、次に水ぼうそうの重症度についてお話しします。

水ぼうそうの概略の中で「治療をしなければ発疹の数は平均で250〜300個」と書きました。水ぼうそうの重症度を表す一つの指標は「発疹の数」です。

発疹の数が50個以下であれば「軽症」に分類されます。発疹の数が500個以上を「重症」と分類します。その間が「中等症」です。これらの分類は水ぼうそうそのものの重症度と考えてよいでしょう。

一方水ぼうそうは様々な合併症を起こしやすいことで知られています。主なものは肺炎・気管支炎、脱水症、熱性けいれん、脳炎・脳症、髄膜炎、小脳失調などです。これらの合併症で入院が必要になると「重症化」したとされます。

水ぼうそうにかかった患者さん(小児も成人も含めて)のうち、400人に1人以上が重症水痘として入院を余儀なくされています。ただし、入院した患者さんのうち小児の割合は37.5%で、成人の入院の方が多いです。

小児では発疹数での重症例より合併症での重症化のほうが多いのが特徴です。成人では水ぼうそうそのもの(発疹数)が重症になる傾向があります。

水ぼうそうはわりとポピュラーな感染症ではありますが、決してあなどれない病気だと考えてください。

「水ぼうそうのおさらい」第1回の今日は水ぼうそうという病気の全体像を見ていただきました。来週は水ぼうそうの診断と治療、予防などについて触れてみたいと思います。どうぞお楽しみに。


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2014年01月27日

インフル:今シーズンの特徴

dav.jpg曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを示す漢字には(肉づき)のつくものが多いから。

脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
あなたはいくつ書けますか?



インフルエンザが大流行です。区内でも学級閉鎖・学年閉鎖、幼稚園では休園のところも出ています。

大流行になると、今シーズンのインフルエンザの特徴が少しずつわかってきます。江戸川区内の小児科医の集まりでの情報交換から、今シーズンのインフルエンザの特徴が浮かび上がってきました。

まず、全体的な流行状況から行きますと、今シーズンは流行の始まりが例年よりだいぶ遅かったです。今月の10日頃まではインフルエンザにかかったお子さんを診察するのは本当に少なかったです。ところがその後急速に流行が広まり、あっという間に江戸川区全体に広がってしまいました。

それから例年ですとまずA型のインフルエンザが流行しやや遅れてB型が流行するのですが、今シーズンはA型もB型も一緒に流行しています。ただし、これは小児のインフルエンザの話で、成人ではほとんどがA型です。

以上が全体的な流行の特徴です。

次にインフルエンザにかかったお子さんの個々の症状を見てみますと、二つの特徴を挙げることができます。

(1)例年より症状の軽いお子さんが多い。
(2)インフルエンザの予防接種受けたお子さんがインフルエンザにかかると検査で陽性だと判明するのに時間がかかる。

一つずつ詳しく見ていきましょう。

(1)例年より症状の軽いお子さんが多い。
 例年ですと、たいていのお子さんが高熱が出て、だるさが強く、診察室に入ってくる時の表情や体の動きで「あ、この子はインフルエンザだな」と、ある程度予測がついたものでした。ところが今シーズンは、熱が出てもすぐに37℃台以下に下がってしまう、本人は元気ピンピンでニコニコ笑いながら診察に入ってくるというような様子で、「いくら何でもこれでインフルエンザはないだろう」と思いつつも園や学校でのはやり具合から渋々(?)検査をしてみると意外や意外、インフルエンザだったりするんですね。
 原因は?・・・・・・・・・・・・わかりません。

(2)インフルエンザの予防接種受けたお子さんがインフルエンザにかかると検査で陽性だと判明するのに時間がかかる。
 こちらも原因はわからないのですが、とにかく遅いんです。こども診療所では、38℃を超えて8時間(8−8)というのを一応の検査の目安にしています。これでたいていは正しい診断が行えていました。もちろん予防接種を受けたお子さんも含めてです。
 ところが今シーズンは予防接種を受けたお子さんに限ってこの基準だと陽性(インフルエンザ)と判定できず、「熱の動きによっては明日もう一度ね」と申し上げて翌日再検査をすると、やっとこさ陽性反応が出たりするんです。
 インフルエンザ治療薬は発病してから48時間以内の治療開始が原則ですから、時間切れにならないように注意しながら再検査をしていますが、なぜそうなるのか本当にわかりません。

 というわけで、毎年申し上げていますが、「検査は早すぎず遅すぎず」がとても重要ですから、学校や園で「インフルエンザの検査をしてもらってください」といわれても慌てて医療機関に飛び込む必要はありません。ほとんどの場合翌日の検査で十分治療には間に合いますから、お子さんの症状を見てしばらくおうちで様子を見るようにして下さい。




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2013年12月16日

感染性胃腸炎の治療(5)

dav.jpg曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを示す漢字には(肉づき)のつくものが多いから。

脳・肺・肝・腎・腕・脚・腰・腹・骨・・・・・。
あなたはいくつ書けますか?



先週の記事の最後に書きましたように、今週掲載予定の「ロタウイルスワクチン」のお話は、明後日水曜日の「ヤブログ予防接種講座」になります。

明後日必ず見て下さいね。

ところで今日は先週で終了したはずの連載の続編が登場します。それは「経口補水」についてです。

「脱水になったら点滴をして水分を補う」あるいは「脱水になりそうだから点滴で水分を補う」ということは、もうほとんど一般常識化しています。そしてそうなる前に口から飲んで脱水を防ぐのが「イオン水」。これもほとんど常識ですね。

ところが最近「経口補水液」という商品のことを耳にするようになりました。「OSー1」という商品が有名ですね。最近所ジョージが「OSー1」のテレビコマーシャルに出演しているのを見ました。

「経口補水液?」。そうです。読んで字の如く口から飲んで水分を補う液体のことです。

「じゃ、イオン水飲むのと変わらないじゃない。イオン水と経口補水液ってどこが違うの?」

という疑問に答えるのが今日のお話です。

実は最近消化器病の専門の先生(小児科)から経口補水療法のお話をうかがう機会があったのです。早い話がその受け売りみたいなものです。

日本のような先進国では脱水の治療には点滴が一番確実で手っ取り早い方法です。でも途上国ではそうはいきません。医療へのアクセスがそう簡単なものではないからです。そのために最貧国と呼ばれるアフリカの国々ではごく普通の下痢や嘔吐で起こった脱水のためにかなり多くの命が失われています。

それを防ぐために、途上国にはUNICEFなどの国際機関からコップ1杯の水に溶いて飲ませる経口補水用の粉末が国際援助として供与されています。私が20年程前から約10年間関わってきたインドネシアでは、「オラリット」という名前の経口補水用粉末がこどものいる家庭に配られていました。

オラリットの成分はブドウ糖と塩です。それを水に溶いたものをORSと呼びます。Oral Rehydration Solutionの頭文字を取ったものです。「口から飲む水分補給の溶液」という意味です。「経口補水液」と言ってもいいでしょう。塩は水に溶けるとナトリウムイオンと塩素イオンに別れます。

「じゃ、やっぱりイオン水と変わらないじゃない!?」という声が聞こえそうですが、組成は同じでもイオン水とORSとで大きく違うのがブドウ糖とナトリウムの濃度です。イオン水ではブドウ糖とナトリウム、このどちらの濃度もORSよりかなり高く(濃く)なっています。

溶液の中に溶けている物質の濃度が高くなると、その溶液の浸透圧というのが高くなります。浸透圧が高いほうがブドウ糖やナトリウムを体内に補給する効率がよくなるようにも思えますが、実際は浸透圧があまり高くなってしまうと、腸からの吸収が悪くなってしまうのだそうです。

イオン水はおいしく飲んでもらうためにブドウ糖やナトリウム以外にも色々な混ぜものをします。これが浸透圧を高めてしまうので腸からの吸収という点ではあまりよくないのだそうです。ORSは浸透圧を適正に保つことを重視していますので腸からの吸収はよいのだそうですが、どうしても味が悪くなるそうです。

以上がイオン水とORSの違いの一つですが、ORSを治療として正しく活用する「経口補水療法」となると、さらに大きな違いが出てきます。

「OSー1」を例にとってお話ししますと、「OSー1」の説明書には「1日に体重1kgあたり50mlを目安の飲ませて下さい」と書いてあります。どのように飲ませるかは書いてありません。例えば体重10kgの赤ちゃんだったら1日に500ml飲ませるわけですが、10回に分ければ1回50ml、20回に分ければ1回25ml、50回に分ければ1回10mlということになります。

「1日50回なんてとても無理」と思われるでしょう。ところが「経口補水療法」というのは、ORSを1回5ml、1分から2分おきに最低数時間飲ませ続けるのが正しいやり方なのだそうです。5mlというのは大体ペットボトルのキャップ1杯分に相当するそうです。そしてこの方法は吐いている最中でも続けてかまわないそうです。

1日50回どころか1時間に50回ですよexclamation×2

正しい経口補水療法には「根気と情熱」が不可欠だとのお話でした。

こんな大変な経口補水療法ですから、正しい経口補水療法のやり方が「OSー1」の説明書に書いてあったら、誰も買いませんよね。だから「1日に体重1kgあたり50mlを目安に飲ませて下さい」としか書いてないんですね。企業のずるさといえばずるさですが、「経口補水療法にも使うことのできる経口補水液という意味なんですよ」と言われてしまえばそれ以上突っ込めませんからね。

でも、これだけは覚えておいて下さい。経口補水には液の組成も大事だけれど、本当に大事なのはその大変な飲ませ方だということです。大変な飲ませ方をしないのだったら、経口補水液(ORS)もイオン水もたいした違いはないということです。

これには事実の裏付けがあるのです。

だいぶ前にバングラデシュで大洪水があって、被災地でコレラが発生してしまいました。ひどい下痢で脱水になる子どもが続出しましたが、あまりの数の多さに外国からの医療援助をもってしても、何時間も診察を待たなければならないという状況でした。待っている間にどんどん重症になり順番が回ってきた頃には瀕死の状態になってしまうことが多かったそうです。

そのときに順番を待つ人すべてにコップとスプーンが配られ、コップの中にORS(経口補水液)が注がれました。そして「順番がくるまでずっとこの水をスプーンで飲ませなさい」と指導がなされました。順番を待っている間は何もやることがありませんから、お母さん(お父さんもいたかもしれませんね)はひたすらORSを飲ませ続けました。そして診察の順番になるとたいていの子はそのままORSを続ければ問題ないと言えるまでに改善していたのだそうです。

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 これで「感染性胃腸炎の治療」シリーズは本当に終了です。ご愛読ありがとうございました。

 前回までは過去に掲載した記事に手を加えたものでしたが、今回の記事は新作書き下ろしです。




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