2009年05月19日

新型インフルエンザの流行地域

clinic.jpg 新型インフルエンザがついに国内でも発生してしまいました。今までは海外での発生だけでしたので、「新型インフルエンザが蔓延している国または地域」というのは、海外のことだけでした。つまり、メキシコ、米国(本土)、カナダの三か国です。

 しかし、国内での発生によってこの「地域」というのが国内の地域も含めるようになりました。

 5月17日現在では兵庫県神戸市(東灘区、灘区、中央区、兵庫区、長田区、北区)、兵庫県芦屋市、大阪府豊中市、大阪府吹田市、大阪府茨木市が国内での蔓延地域とされています。

 この地域に出かけた方、あるいは出かけた方と接触した方は体調に十分注意し、発熱や風邪症状が現れた場合には、一般の医療機関を受診せず、まず、江戸川区発熱相談センターにご連絡ください。

平日9時〜17時は江戸川区保健所発熱相談センター(保健予防課感染症第一係)へ
   電話     5661−2475
   ファックス  3655−9925


夜間・休日は東京都休日夜間発熱相談センターへ
   電話     5320−4509


 また江戸川区では新型インフルエンザに関する一般的な相談を区内すべての健康サポートセンター(HSC)で平日9時から17時まで受け付けています。電話とファックスは次の通りです。

 中央 HSC:電話 5661-2467 / ファックス 3655-9925
 小岩 HSC:電話 3658-3171 / ファックス 3671-5798
 葛西 HSC:電話 3688-0154 / ファックス 3878-9834
 清新町HSC:電話 3878-1221 / ファックス 3878-9847
 小松川HSC:電話 3683-5531 / ファックス 3683-5664
 なぎさHSC:電話 5675-2515 / ファックス 5675-2519
 東部 HSC:電話 3678-6441 / ファックス 3678-6444
 鹿骨 HSC:電話 3678-8711 / ファックス 3678-8714
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2009年05月11日

新型インフルエンザ水際で阻止

 カナダに短期留学し、アメリカ経由で帰国した大阪の高校生3人と引率の教師が、新型インフルエンザであることが判明し、成田空港近くの病院に収容されました。

 国内で診断され、国内の病院に収容されていますが、新型インフルエンザの国内発生ではありません。この4人は感染力がなくなるまで病院に収容されていますから他のヒトにうつすということはありません。水際阻止作戦の網をすり抜けた患者さんが、日本国内で二次感染を引き起こしたときに初めて「国内発生」ということになるのです。

 江戸川区では世界的な豚インフルエンザ(インフルエンザAH1N1)の発生に伴い発熱相談センターを設置しました。流行地区からの帰国後、鼻水、咽頭痛、咳、発熱、倦怠感などインフルエンザ様の症状が見られたときは、すぐに医療機関を受診せず、発熱相談センターにご連絡ください。

平日9時〜17時は江戸川区保健所発熱相談センター(保健予防課感染症第一係)へ
   電話     5661−2475
   ファックス  3655−9925


夜間・休日は東京都休日夜間発熱相談センターへ
   電話     5320−4509


 また江戸川区では新型インフルエンザに関する一般的な相談を区内すべての健康サポートセンター(HSC)で平日9時から17時まで受け付けています。電話とファックスは次の通りです。

 中央 HSC:電話 5661-2467 / ファックス 3655-9925
 小岩 HSC:電話 3658-3171 / ファックス 3671-5798
 葛西 HSC:電話 3688-0154 / ファックス 3878-9834
 清新町HSC:電話 3878-1221 / ファックス 3878-9847
 小松川HSC:電話 3683-5531 / ファックス 3683-5664
 なぎさHSC:電話 5675-2515 / ファックス 5675-2519
 東部 HSC:電話 3678-6441 / ファックス 3678-6444
 鹿骨 HSC:電話 3678-8711 / ファックス 3678-8714
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2009年04月29日

トリじゃなくてブタだった(新型インフルエンザ)

pig02.png メキシコに端を発した豚インフルエンザ(H1N1)のヒト-ヒト感染は世界的な広がりを見せ、ついに厚生労働省は新型インフルエンザ発生宣言を出しました。

 H1N1のA型インフルエンザは人間ではソ連型インフルエンザとして知られていますが、豚インフルエンザのH1N1とは遺伝子情報が異なるため、ブタ-ヒト感染はおこりにくいとされていました。ところが今回確認されたH1N1A型インフルエンザはブタ型でもないしヒト型でもない新型の遺伝子情報を持ったH1N1亜型のウイルスで、ブタ-ヒト感染、ヒト-ヒト感染がおこるとされています。現在毎年接種が行われているH1N1に対するワクチンは予防効果がありません。

illust161.png パンデミックが心配されていた鳥インフルエンザ(H1N5)とは全く別の型のウイルスが新型インフルエンザになったわけで、せっかく開発された新型ワクチンも効果がありません。

 現時点では日本での感染者は確認されていませんが、基本的にはA型インフルエンザなので、現在使用されている診断キットで診断は可能だと思われますし、タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ薬が有効であるとされていますので、必要以上に恐れることなく、冷静かつ慎重な対応をお願いします。

 ゴールデンウィーク中に海外旅行をなさった方などで、発熱などの風邪症状が見られた場合には、直接医療機関を受診せず、平日の昼間でしたら江戸川保健所(☎03−5661−2475)、夜間休日でしたら東京都福祉保健局「ひまわり」(☎03−5272−0303)に電話をかけて指示を仰いでください。

pig03.png また、一部で報道されているような豚肉の販売自主規制は意味がありません。食用の豚肉から感染する心配はありません。

 アメリカの感染症対策局(CDC)の発表を和訳したブログがありますのでご参照ください。URLは次の通りです。リンクしています。

http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/b60eb34d09d10229a171a400faf59300

 新しい情報が入りましたらこのブログでも随時掲載して参りますので、ガセネタに踊らされることなく冷静に対応してください。
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2008年11月27日

新型インフルエンザワクチン

vac100.jpg 現在接種が行われているインフルエンザワクチンにはA型2種(H1N1H3N2)とB型1種の3タイプのウイルスに対するワクチンが含まれています。すべて在来のインフルエンザに対するワクチンで、新型インフルエンザには全く効果がありません

 新型インフルエンザワクチンということが報道されたり、新型インフルエンザの最有力候補と思われているトリインフルエンザのウイルス構造がH5N1で、基本的にはA型インフルエンザに属することからの誤解と思われますが、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザはまだ地球上に出現しておらず、したがって効果のあるワクチンも作ることはできないのです。

 また、現在試験的に一部医療関係者に接種されている新型インフルエンザワクチンは、H5N1が新型インフルエンザになるであろうことを想定してH5N1に対して効果を発揮するように作られたもので、もし仮に別の構造のインフルエンザウイルスが新型インフルエンザとしてヒトからヒトへの感染を起こすようになった場合には、このワクチンの効果は全く期待できないものになってしまいます。

 一部報道が「新型インフルエンザワクチン」という言葉で行われたため、誤解が広まってしまったものと思われます。正しくは「プレパンデミックワクチン」といいます。今までのワクチンとは製法が少し異なるためまだ量産体制はできていません。

 繰り返しますが、現在一般的に使用されているインフルエンザワクチンは新型インフルエンザの予防には全く効果がありません
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2008年10月15日

インフルエンザワクチンの保存剤

vac100.jpg インフルエンザワクチンに含まれるチメロサールについては、先週の土曜日に完結編を迎えましたが、その記事に対するコメントで「フェノキシエタノール」という保存剤のことをお知らせいただきました。そこで今日は番外編としてこのフェノキシエタノールについてお話しようと思います。

 フェノキシエタノールというのはグリコールエーテルの一種で、インク・農薬・染料などの溶媒として使われるほか、香水の香りを逃がさないようにする保留剤としてや、殺菌作用(それほど強くない)を利用して化粧品の防腐剤として使用されています。

 医薬品の保存剤としては、海外では15年前から使用されており、日本では5年前からタケダという会社製のDPT(3種混合)・DT(2種混合)・破傷風トキソイドなどに使用され、安全性には問題がないとされています。ちなみに、こども診療所ではこれらの(タケダ製の)ワクチンを使用しています。

 ああそれなのにそれなのに、フェノキシエタノール使用のインフルエンザワクチンが登場していたことを知らなかったのです。いやいや恥じ入るばかりです。反省の意味を込めて現在日本で使われているインフルエンザワクチンのすべてについて確認をしてみました。

 現在日本では4社がインフルエンザワクチンを製造しており、保存剤の有無や包装の形態などで8品目が流通しています。しかし、製造はしていないけれど大きな販売網を持っている大手メーカーが販売だけ担当しているものもあるため市場には14種類のインフルエンザワクチンが出回っています。ややこしいので8品目としてお話を進めます。

 8品目とも、今年はA/ブリスベン/59/2007(H1N1、Aソ連型)、A/ウルグアイ/716/2007(H3N2、A香港型)、B/フロリダ/4/2006(B型)の3種のワクチン株を使用していて同一規格で製造されています。

 保存剤について見てみますと、一切の保存剤を除去したワクチンを製造しているのが、「北研」という会社と「微研」という会社の2社ですが、この2社はチメロサール入りのワクチンも製造しています。

 チメロサール入りのワクチンを一切製造せず、保存剤としてフェノキシエタノールを使用しているのは「化血研」という会社1社だけで、この会社はフェノキシエタノール一本槍で、保存剤フリーというワクチンは製造していません。

 化血研のインフルエンザワクチンに添付されている文書には「一度針を刺したものは、貯法(遮光して、10℃以下に凍結を避けて保存)に従って保存し、当日中に使用する。」と書かれています。これならs北研のように残液を捨てないですみます。当日中であれば何人かのお子さんに接種することが可能になります。

 化血研のこのワクチンは発売が2007年11月(昨シーズン)で、その時点でこども診療所の使用ワクチンはすでに納入された後だったことと、薬品(ワクチンを含む)メーカーと薬品販売(卸し)会社との間には、自動車ほどではないにしても緩やかな系列というのがあって、化血研の情報はこども診療所(北研のワクチンを扱う会社と取引をしている)に入りにくかったことなどで、2008/2009の今シーズン、フェノキシエタノール添加のインフルエンザワクチンの入手に向かえなかったことが悔やまれます。

 来シーズンこのワクチンを入手するためには前年度実績の全くない別の系列の販売会社に交渉をしなければならないなどの困難はありますが、今から努力をして何とか来年こそはチメロサールフリーのワクチンで予防接種を行いたいと思います。

 今回調べたインフルエンザワクチンの情報を私なりに一覧表にしてみました。PDF画面でご覧になれます。黄色の文字(英数字)をクリックしてご覧ください。20081012.pdf

 ところで、インターネット上では、フェノキシエタノールにはごく軽い麻酔作用があるので注射部位の痛みが軽減すると書かれているサイトがありますが、これについては確認できませんでした。

 また、化粧品にはかなり以前から使われてポピュラーな物質らしく、化粧品の分野のネット上にフェノキシエタノールという名前がたくさん登場します。それらの中には有毒性・有害性を心配する記事も含まれています。これらについてもきちんと確認はできませんでしたが、フェノキシエタノールを製造している会社のホームページで見つけたのは、フェノキシエタノールに適用される法律のことでした。

 それによりますと、消防法では危険物第4類第3石油類 非水溶性液体という扱い、海洋汚染防止法では有害液体物質(D類)という扱いでした。その他に特定廃棄物輸出入規制法(バーゼル法)・外国為替及び外国貿易法も適用されるようです。

 これを見る限りでは完璧に安全な物質ではなさそうですが、そんなことを言い出すと、今の世の中何を信じて生きていいのやらわからなくなってしまいますから、ワクチンに含まれる程度の量では安全性に問題はないと信じることにしましょう。
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2008年10月11日

インフルエンザワクチンとチメロサール - シーズン4 -

vac100.jpg インフルエンザワクチンに含まれるチメロサールについて様々な角度から見てきましたが、いよいよ今回で最終回です。

 今回は「チメロサールは入っていないほうがいいと言いながら、こども診療所ではなぜチメロサール入りのワクチンを使うのか?」、この矛盾に満ちた現実の謎に迫ります。

 こども診療所でチメロサール無添加のワクチン使うことを阻害している、あるいはためらっている要因は主に3つあります。一つはコストの問題、一つは供給の問題、そしてもう一つはワクチン汚染の問題です。それらを一つずつ説明して参ります。

《無添加ワクチンはコスト高?》
 すべてのワクチンは無菌状態の清潔な製造過程の中で作られます。しかしチメロサール無添加ワクチンを作るにはもっと高度な無菌状態が要求されます。それだけの設備投資を必要とするため、チメロサール無添加ワクチンは添加ワクチンよりどうしてもコストが高くなってしまいます。その分は接種を受ける方に負担していただくことになります。

 でも、こども診療所では、チメロサール無添加ワクチンを仮に使ったとしても、このコスト高はほとんど問題ではありません。というのは、こども診療所でのインフルエンザ予防接種の料金をご覧になるとわかるのですが、見ただけではわかりませんから説明いたします。

 こども診療所では、1回目の接種で大人の方もお子さんも4,200円(税込み)をいただきます。小学生以下のお子さんの2回目は1,050円(税込み)頂戴します。たいていの医療機関では1回目も2回目も同じ料金が設定されていると思います。ですから、ワクチンの値段がかなり反映されていると思われてしまうのではないでしょうか?

 こども診療所の考え方は、インフルエンザに対する抗体(免疫)を完成するのに4,200円いただきますという考え方です。接種当日の体調や今までの接種歴などを診察して接種可能であるという診断を下す技術料とワクチン代を含めて安全かつ確実にしかもなるべく痛みを少なく注射する技術料(保険診療でいえば初診料?)として4,200円いただきますという意味です。2回目の料金はほとんど注射の技術料(再診料?)だけです。もちろん2回目も当日の診察は行いますが、1回目を無事接種できたお子さんはよほどのことがなければ安全に接種できますので、体調だけを診察すればいいことになります。

 ですから、チメロサール無添加ワクチンのコストが高くても、こども診療所での接種料金は変わりません。無添加ワクチン使うならですが、現実には使っていません。

《ワクチンが手に入らない!》
 何年か前に、ワクチン製造量の絶対的不足と大手病院による買い占めなどで、インフルエンザワクチンが市場から姿を消してしまったことがありました。その後厚生労働省の指導でメーカーが製造量を増やしたことと、同じく厚生労働省が薬品販売会社に対して一度に大量のワクチンを販売しないよう指導したことなどがあって、ワクチンの供給はかなり安定したのですが、この年以来薬品販売会社は前年の実績程度のワクチンしか販売してくれなくなってしまいました。

 こども診療所ではチメロサールの入ったワクチンについてはかなり以前から実績があったので、十分な量を購入できシーズン途中でワクチンが不足することはないのですが(多分)、無添加ワクチンについては実績がなく、しかも製造量そのものが少ないため、すべてのワクチンを無添加に替えることができません。

 場合によっては1回目は無添加だったけれど2回目はチメロサール入りのワクチンを接種しなければならないという事態になりかねないのです。「1回だけでも無添加だったのだからいいじゃないか」とは言えません。日本で製造されるインフルエンザワクチンの大多数がチメロサール無添加にならなければ胸を張って「こども診療所ではチメロサール無添加のワクチンを使っています」とは言えない現実があるのです。

《ワクチンを捨てる?!》
 もう一つの阻害要因は、インフルエンザワクチンが一人分の接種量になっていないということです。

 チメロサールの入ったワクチンは1本のビン(バイアルといいます)に1mlのワクチンが入っています。大人の方の2人分の接種量です。注射をする場合にはこのバイアルに2回針を刺して中のワクチンを注射器に吸い出すことになります。チメロサールが入っているので汚染の心配はありません。1歳未満のお子さんだと10回針を刺すことになりますが、1日に予防接種を受けるお子さんが全員1歳未満ということは絶対といっていいほどありませんから、1本のバイアルに針を刺す回数はせいぜい5回です。それでも1〜2日以内に使い切れば汚染の心配はありません。もちろん清潔に保つことを十分注意してのことです。

 チメロサール無添加のワクチンだとそうはいきません。チメロサール無添加のワクチンは1本0.5mlのバイアルになっています。大人の方なら1人分で使いきりです。しかしお子さんだと2〜3人分の量になってしまいます。ワクチンの添付文書には「1回使用したら残液は廃棄すること」と明記されています。6歳以上のお子さんに注射をしたら(1回0.3ml)、1歳から5歳のお子さんの1人分(0.2ml)を捨てなさいということです。もっと極端なことをいうと、1歳未満のお子さんに注射をしたら(1回0.1ml)、1歳から5歳までのお子さんの2人分(0.2ml×2=0.4ml)を捨てなさいということでもあるのです。チメロサールが入っていないのですから当然のことです。

 この廃棄分のワクチンを料金に上乗せしている医療機関もありますが、接種料金はとても高くつきます。こども診療所のような考え方だったら料金の上乗せはありません。

 値段の問題はともかく、チメロサール入りのワクチンを含めても適正供給を厚生労働省が指導するような品薄ワクチン、しかももっと少ない無添加ワクチンを惜しげもなく捨ててしまっていいものでしょうか?

 「お子さんの安全な予防接種のためにはしかたがない、あるいは当然だ」という考えももちろんあるでしょう。でも、できるだけ多くの方が免疫を持ってこそインフルエンザの大流行を防ぐことができるということに重きを置けば、やはり「捨てるなんてことはできない」という気持ちになってしまいます。

 願わくばワクチン製造メーカーが1バイアルにつき0.1ml入りと0.2ml入りと0.3ml入りの3種類のチメロサール無添加ワクチンを作ってほしいところですが、コストはさらに高くなるでしょうし、メーカーとしてもそれだけの設備投資をするかどうかは疑問です。しかし将来的にはそのような方向(すべての年齢層で1バイアル1人分)に進むべきだと思いますし、厚生労働省も安定供給にばかり力を入れるのではなく、メーカーに対しても強く方向性を打ち出すべきだと思います。

 ただ、現在の接種量は、年齢によって細かく分かれすぎている(現在4段階)という指摘が以前からあって、これを0.2mlまたは0.3mlと0.5mlの2段階に減らすべきだという検討会が開かれたことがあります。この検討会はいつの間にか立ち消えになってしまったのですが、是非とも再開してほしいと思います。そうすればワクチン製造メーカーも多少は「1バイアル1人分」の方向に動くのではないかと期待しています。

 以上のようなことと、前回までにお話ししたチメロサールの有害性と安全性を私なりに熟考して、こども診療所では今年もチメロサール入りのワクチンを使うことに決めたのです。どうしても無添加がいいと思われる方は申し訳ありませんが、無添加ワクチンを十分に用意してある医療機関で接種をお受けいただくようお願いします。

 ただ気になるのは、「うちでは清潔に十二分注意しているから2〜3回の針刺しは問題ない」として無添加ワクチンを接種している医療機関もあると聞きます。無添加ワクチンを接種なさるときには「1バイアル1人分」をきちんと守っているかどうか、しっかりと確認なさることをお勧めします。

 緊急集中連載としてお送りした「インフルエンザワクチンとチメロサール」についての医学講座シリーズはこれで終わりです。最終的にはそれぞれの保護者の方がお決めになることですが、その判断の材料としてこの医学講座が少しでもお役に立てば幸いです。

 あ、それから、チメロサール入りでよろしければ、今シーズンのインフルエンザ予防接種の予約は10月1日から始まっています。10月14日から接種を始めます。詳しくはこども診療所公式ホームページ「トピックス」をご覧ください。
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2008年10月10日

インフルエンザワクチンとチメロサール - シーズン3 -

vac100.jpg 今回はチメロサールを少し離れて、日本人が魚介類からどの程度のメチル水銀を摂取しているかを考えてみます。

 平成16年に発表されたとても大規模な調査の結果で、国内では厚生労働省・水産庁・地方自治体・国立健康栄養研究所が参加し、国産魚介類約450種についてメチル水銀の含有量が示されています。また海外の資料も添付されていて、アメリカ・イギリス・EUから約160種の魚介類のメチル水銀含有量が報告されています。

 国立健康栄養研究所の調査は、上記の調査で含有量が高いと判断され、しかも日本人にとってとても馴染みの深いマグロを、日本人はどれぐらい食べているかという内容です。
 
 結果だけをかいつまんでお話しますと、本マグロ1gの中にはメチル水銀が平均で0.000542mg(約0.0005mg)含まれていることがわかりました。スーパーやコンビニなどで市販されているマグロの刺身は1切れ平均12.9g(約13g)、にぎり寿司(マグロ)の1切れは16.3g(約16g)、切り身は1切れ平均約80gであることがわかりました。一方ツナのほうはどうかといいますと、ツナサラダ1人前には平均20.4gのツナが含まれており、ツナサンド三角形のもの1個には平均23.6g、ツナ入りおにぎり1個にはには平均5.4gのツナが含まれていることがわかりました。

 一方一食分の食事でのマグロの摂取量はというと、刺身・にぎち寿司・サラダ・サンドイッチ・おにぎりの場合、マグロやツナ1種類だけを食べることは少ないので、それほど量は増えませんが、鉄火丼の場合にはマグロの刺身だけになりますので、1回の食事で平均100.1gのマグロを食べることになるそうです。ちなみに鉄火丼一食に含まれるメチル水銀の量は0.05mgということになりますので、体重50kgの成人の方は一度鉄火丼を食べたあとの10日間は、メチル水銀をちょっとでも摂取するとアメリカFPAの安全基準0.0001mg/kg体重/日を超えてしまうということになります。

 それではここで見方を変えて、マグロの刺身1切れにどれだけのメチル水銀が含まれているか見てみましょう。

 0.000542×12.9で計算しますが、省略して0.0005×13としますと、マグロの刺身1切れには約0.0065mgのメチル水銀が含まれていることになります。体重10kgのお子さんがマグロの刺身1切れを食べたあと約1週間は、メチル水銀をちょっとでも摂取するとアメリカFPAの安全基準0.0001mg/kg体重/日を超えてしまうということになります。チメロサール入りのインフルエンザワクチンなんかとんでもないということになります。

 ところで、こども診療所で使うインフルエンザワクチンにどれだけのチメロサールが入っているか覚えていますか?大人の方の1回接種量に0.0025mgでしたね。1歳未満のお子さんだと1回接種量につき0.0005mg、1歳以上6歳未満のお子さんだと1回接種量につき0.001mg、6歳以上13歳未満のお子さんだと1回接種量につき0.0015mg、13歳以上のお子さんは成人量と同じでしたね。

 ただしこれはチメロサールの量で、エチル水銀はこの約半分で、エチル水銀メチル水銀より排泄が早い(生物学的半減期が約1/10短い)という話も覚えてますか?そして、エチル水銀の有害量についてはまだわかっていないので、その辺がわかっているメチル水銀の有害量と同じと考えているということでしたね。

 ここでまた計算をすると頭がこんがらがってしまいますから見方を変えてみましょう。

 マグロの刺身1切れには0.0065mgのメチル水銀が含まれます。そしてたとえば5歳のお子さんが年2回のインフルエンザ予防接種で1年間に体内に取り込むチメロサールの量は0.002mg、メチル水銀(本当はエチル水銀)に換算すると0.001mg。アリャリャexclamation&questionマグロの刺身2切れ(メチル水銀0.013mg)を食べると、なんと13年分のインフルエンザ予防接種を受けたのと同じメチル水銀(本当はエチル水銀)を取り込むことになるんですね。

 「だからワクチンにチメロサールが入っていてもいいんだ」なんていうつもりはありません。マグロの場合は自然界で生存している限り望んでもいないのに体内に蓄積してしまうメチル水銀、ワクチンのチメロサールは取り除こうと思えば取り除けるエチル水銀なんですから、意味合いは全く違います。

 どうしても食事から体内に入ってしまうメチル水銀に関しては、ただやみくもに食べないようにしてしまって栄養が偏らないように、どの国でも、「マグロの切り身だったら1週間に1切れ以上食べないように」というような形で、摂取過剰にならないように警告を出しています。日本もそうです。

 ここで私が言いたかったのは、繰り返しますが、「だからワクチンにチメロサールが入っていてもいいんだ」ということではなく、「チメロサールに含まれるエチル水銀は魚に含まれるメチル水銀より遙かに少ないし、有機水銀には許容量というのがあるのだから、その範囲内におさまるような予防接種の受け方は可能だ」ということです。

 もちろん取り除けるチメロサールは取り除いた方が絶対安心・安全だという考えも持っています。それなのになぜこども診療所ではチメロサール入りのインフルエンザワクチンを使い続けるのかという矛盾に満ちた現実については次回の掲載をお待ちください。
 
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2008年10月08日

インフルエンザワクチンとチメロサール - シーズン2 -

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。
 
 と、つい一昨日掲載したばかりですが、前にも言ったようにシーズンがシーズンですからのんびりと週に1回の掲載では間に合わなくなる恐れがあります。そこで原稿ができ次第掲載する短期集中連載の形をとることにしました。

 前回はあまりに長くなってしまったので書きませんでしたが、ワクチンにチメロサールを添加するようになったのは、オーストリアで起こった不幸な事件がきっかけです。

 1928年1月にオーストラリアでジフテリアの予防接種の注射薬に病原体が混入して注射を受けた多数のこどもが死亡する事件が起こりました。注射薬は10mlの薬液がゴムでキャップされたビンに入ったものでした。このビンから多数のこどもに分けて接種されました。1月17日から24日にかけて接種した21人には悪影響はありませんでした。27日にさらに21人のこどもに接種したところこの21人の中から多数の死者が出ました。王立委員会がこの事件の調査にあたりました。ゴムでキャップされたビンから何回も薬液を採るうちに薬液がブドウ球菌で汚染し、このブドウ球菌で汚染された薬液を注射されたことにより死者が出たと考えられました。王立委員会は「細菌の増殖を抑えるのに十分な殺菌剤を含むものでなければ、細菌が増殖可能な生物製剤は多人数用の容器に入った製品としてはいけない」という勧告を出しました。

 そして、ワクチンを細菌汚染から守るためにチメロサールが加えられるようになり、さらにそのチメロサールに疑問が投げかけられるようになった経緯は前回詳しくお伝えしました。

 また、前々回のプロローグで、チメロサールには蓄積にともなう慢性の毒性の問題と自閉症を引き起こすような急性あるいは亜急性の毒性の問題があると申し上げました。ただ、この自閉症の問題はいくつかの専門機関が科学的に検討した結果「直接の因果関係はない」という結論に達していますので、今後は触れないことにします。もちろん今でもネット上ではこの問題についての議論が続いているようですが、結局のところ体内に入ったチメロサールがどうなるかという問題に集約できそうですので、今回は、チメロサールの体内での動き(蓄積)の問題を考えてみようと思います。

《蓄積=摂取ー排泄》
 蓄積というのは摂取した量が排泄される量を上回るときに生じます。摂取されたものに急性の毒性がなければ、一定期間に摂取された量よりも排泄される量が多ければ蓄積は起こらず、有害な出来事も起こらないのです。表題にした式でいえば、接種<排泄なら蓄積は起こらず、接種>排泄なら蓄積が起こるいということです。

 ではチメロサールには蓄積の問題は起こるのでしょうか?

 この疑問に単純にお答えすることは難しいのですが、議論の対象が水銀であるということから、チメロサールが分解してできるエチル水銀について考えてみましょう。

 エチル水銀の毒性に関してはほんのわずかしか知られていないことはすでにお話ししました。それでエチル水銀によく似たメチル水銀の毒性とエチル水銀の毒性が同じであると仮定して摂取量が論じられていることもお話ししました。ここでもう一度確認していただきたいのは、エチル水銀の量=チメロサールの量ではないということです。エチル水銀の量はチメロサールの量の半分です。

 まずは摂取についてです。世界でもっとも厳しいアメリカのFPAが定めたメチル水銀の許容摂取量は0.0001mg/kg体重/日(0が4つ)です。体重10kgの赤ちゃんだったら、0.001mg(0が3つ)までだったら毎日摂取しても問題は起きないというのです。もちろんこの量の中には排泄される量も加味されていますから、表題の式でいえば摂取≦排泄、摂取量が排泄量を上回ることはないということです。

 メチル水銀をそのままエチル水銀に置き換えて、これがチメロサールだったら、と考えれば体重10kgの赤ちゃんは毎日チメロサール0.002mg(0が3つ)までなら許容範囲だということになります。

 ここで排泄の問題を考えてみます。生物の体内に摂取された物質が排泄されるスピードを示すには生物学的半減期(物質の量が半分になるまでの時間)という物差しが使われます。たとえば生物学的半減期が2日の物質であれば摂取した2日後には1/2、4日後には1/4、6日後には1/8,8日後には1/16、10日後には1/32と減っていきます。この物質の体内の残量は30日(1か月)後には1/32,768となってほとんど痕跡も残らないといえる量まで減っていることになります。一方、半減期が倍の4日の物質だと、30日に一番近い32日後でも1/256が残っていて、半減期が倍になっただけで128倍もの量が残ってしまうことになるのです。

 メチル水銀の生物学的半減期が約70日であることは以前から知られていましたが、1999年の自閉症チメロサール犯人説の議論以来、エチル水銀の研究も進められ、エチル水銀の生物学的半減期は7日あるいはそれ以下であることがわかってきました。メチル水銀の約1/10の短い半減期を持っているのです。そして、腸から吸収されエチル水銀は速やかに腎臓に送られ、尿とともに排泄されることもわかってきました。

 ちなみに、メチル水銀を摂取して70日後に残量が1/2になったとき、エチル水銀だったら何分の1になるか半減期7日として計算してみました。結果は1/1,024です。

 この数字で私が何を言いたいかというと、「だからチメロサールは安全だ」ということではありません!現在行われているように、「メチル水銀に置き換えて許容量を見ていけばエチル水銀が体内に蓄積することはあり得ない」ということです。

 これまでの説明でチメロサールの蓄積の問題については合点していただけましたでしょうか?ガッテン・ガッテン。

 では次回は、日本人がメチル水銀をどれぐらい摂取するかについて考えてみます。
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2008年10月06日

インフルエンザワクチンとチメロサール - シーズン1 -

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 久々の医学講座です。育児講座はしばらく休講とさせていただきます。

 今回は話題になっているチメロサールとは一体どんなものなのか、そして議論になっている背景はなんなのかについてじっくりと考えてみたいと思います。

thimerosal.gif《チメロサールとは?》
 チメロサールは殺菌作用のある水銀を含む有機化合物(有機水銀)で、チメロサールの重量の約半分(49.55%)を水銀( Hg )の重量が占めます。分子式を右に示します。チメロサールは、エチル水銀とチオサリチル酸とに分解します。エチル水銀(有機水銀)の部分で人間への毒性が心配されています。エチル水銀の量(重量)はチメロサールの約半分になります。

【殺菌作用】 チメロサールの殺菌作用は昔から知られていて、1930年代から種々の薬剤に保存剤として使われてきました。薬剤に病原体が混入して薬剤の使用で感染症となってしまうのを防ぐためなどの目的で使われてきたのです。1940年頃からワクチンの保存剤として使われ始めました。チメロサールは、生きているウイルスや菌が入っている生ワクチンでは使われませんが、死んだ菌などが入っている不活化ワクチンでは保存剤として使われるようになりました。しかし、チメロサールが添加されていても細菌でワクチンが汚染することは少ないながらもあります。チメロサールが保存剤として添加された3種混合ワクチンが入ったビンがA群連鎖球菌で汚染して接種された人たちに感染(膿瘍)が起こった事件が報告されています。多人数用の大きなビンに入ったワクチンは、何回も針で刺すことなどにより一度病原体で汚染してしまうと、接種された人に感染症を起こすことにもなりかねません。

【毒性】 微量のチメロサールエチル水銀による毒性については、過敏症を起こすことがある以外よくわかっていません。ただ、同じく有機水銀であり、化学構造も近いメチル水銀と近いと思われます。そこで、人が微量の物質を摂取する場合の安全基準については、メチル水銀の基準がチメロサールエチル水銀の基準にも使われています。しかし、この安全基準は種々の機関から出されていて基準値が統一されているわけではありません。水銀重量として基準値で一番低いのがアメリカ合衆国のEPAで0.0007mg/kg体重/週(0.0001mg/kg体重/日)です。EPA の基準値は、RfD( Reference dose:参照用量)と呼ばれます。一生の間、人の集団が毎日暴露を受けても有害な影響のリスクがないと思われる推定用量です。一日あたり・人の体重あたりの用量で示します。

【自閉症とチメロサール】 近年、アメリカ合衆国では自閉症の発生が増えていると言われています。アメリカ合衆国における自閉症の増加を水銀と関連づけて説明しようとしたのがベルナールらの仮説です。 ベルナールらはこの十数年の間にアメリカ合衆国では乳幼児が接種すべきワクチンの種類や本数が増え、また、より月齢が低い段階で接種を受けるようになってきていること、またその中にはチメロサールが添加されているワクチンもあり、1999年の段階では乳児期のうちに定期の予防接種を受けることでアメリカ合衆国のEPAの基準を超える水銀の暴露を受ける可能性があることを指摘しています。さらに、自閉症の症状と水銀中毒の症状の類似性を指摘し、水銀中毒の結果として自閉症になると考えました。そして、この十数年の間にアメリカ合衆国では乳幼児に対する予防接種による水銀の暴露が増加することで自閉症となる者が増えていると考えました。また、重金属を体から排除する働きのある酵素に欠陥があるというような、遺伝的に水銀の暴露に弱く自閉症となりやすい人たちがいると考えました。

【ワクチンとチメロサール】 ワクチンにチメロサールを添加することは先に【殺菌作用】のところで触れましたが、ベルナールらの仮説はアメリカ合衆国においてワクチン中のチメロサールの安全性に関して疑問を投げかけることになりました。アメリカ合衆国におけるこの疑問に対する答えが、米国科学アカデミーの医学協議会の2001年10月の勧告と2004年5月の結論です。
 米国科学アカデミーの医学協議会は予防接種安全性検討委員会で「チメロサールを含むワクチンと神経発達障害と」について検討し、2001年10月におおよそ次のような結論を示しました。「チメロサールを含むワクチンの接種を受けることと神経発達障害とが関係しているとの仮説は立証されてはいないが、生物学的にはもっともらしく思われる。また、チメロサールを含むワクチンの接種を受けることと自閉症・注意欠陥多動性障害・言語発達障害などの神経発達障害との間の因果関係については、肯定するにも否定するにも十分な証拠がない。」
 米国科学アカデミーの医学協議会は予防接種安全性検討委員会で、2001年の勧告以来「チメロサールを含むワクチンと自閉症と」について検討し、2004年5月におおよそ次のような結論を示しました。「チメロサールを含むワクチンの接種を受けることと自閉症との間の因果関係については、否認することが根拠によって支持される。」(日本においても同様の声明が2004年6月に日本小児神経学会より示されています)
 以上のような経過を踏まえ、米国の医学協議会の予防接種安全性検討委員会はチメロサールを含まないワクチンの使用を勧告しました。
 アメリカ合衆国の中でチメロサールをワクチンにできるだけ添加しない方向は医学協議会の予防接種安全性検討委員会の勧告以前に、米国小児科アカデミーと合衆国公衆衛生サービスとの1999年7月7日の共同声明で示されました。世界保健機関(WHO)は2000年1月にこの共同声明を支持しています。
 1999年7月8日、つまりアメリカ合衆国での共同声明の翌日には、欧州で欧州医薬品審査庁の許可医薬品委員会が乳幼児のワクチン中のチメロサールについて勧告を出しています。許可医薬品委員会はワクチンからの水銀の曝露の程度では有害な証拠はないけれどもチメロサールを含まないワクチンの使用を早急に進めていくべきだとしました。
 WHOのワクチン安全性委員会は、ワクチン中のチメロサールとこどもの神経発達障害の間の因果関係を示す決定的証拠はないとしました。WHOはワクチンを使用しなかった時のワクチンで予防できる病気による罹患・死亡・合併症といったリスク、あるいはチメロサールをワクチンに添加しない時の多人数用のワクチンが病原体で汚染した場合のワクチンによる感染症のリスクは、いずれもよく知られたリスクであり、両者のリスクはワクチン中のチメロサールによる副作用の可能性のあるリスクよりはるかに大きいと考えられるとしています。世界的規模で進行中の予防接種戦略において、チメロサールを添加したワクチンも用いられている現在のワクチンの使用を即刻中止することなく継続しながら、チメロサールをワクチンにできるだけ添加しない方向をWHOは示しています。
 日本においても、アメリカ合衆国・欧州・WHOと同じく、チメロサールをワクチンにできるだけ添加しない方向にあります。ワクチン中のチメロサールの減量や無添加が見られています。

 本当にじっくりになってしまいましたが、これまでの説明でチメロサールについては合点していただけましたでしょうか?ガッテン・ガッテン。

 これらの基礎知識をもとにして、インフルエンザワクチンに含まれるチメロサールの有毒性について、中立的な立場で考えていきたいと思います。次回をどうぞお楽しみに。
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2008年10月04日

インフルエンザワクチンとチメロサール - プロローグ -

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。
 
 と、本来医学講座は月曜日の掲載ですが、こども診療所公式ホームページのQ&Aコーナーに、こども診療所で使用するインフルエンザワクチンにチメロサールが含まれているかどうかというご質問をいただきましたし、10月に入ると実際にインフルエンザの予防接種が始まりますので、緊急報道として医学講座を掲載しました。いわば本編の前の予告編みたいなものです。本編は来週月曜日から始まります。

 こども診療所では「北研」というメーカーの「インフルエンザHAワクチン」を使用しており、このワクチンにはチメロサールが含まれています。その量は、大人の方の1回接種量0.5mlにつき0.0025mgになります。中学生(13歳)以上成人の方は1回接種が原則ですので、年に1回0.0025mgのチメロサールが体内に入ることになります。お子さんは2回接種で、1歳未満(6ヶ月以上)は1回0.1mlですから2回接種で0.2ml、チメロサールの量は0.001mgとなります。1歳以降も毎年接種を受けると、1歳以上6歳未満は1回0.2mlですから2回接種で0.4ml、毎年0.002mgのチメロサールが入ります。6歳以上13歳未満は1回0.3mlですから2回接種で0.6ml、毎年0.003mgのチメロサールが入り、13歳以上の方の1年分を上回ることになります。

 お子さんが、仮に、1歳未満から小学校卒業までの12年間毎年インフルエンザの予防接種を受けたとすると、0.001+0.002×5+0.003×6で、合計0.029mgのチメロサールを体内に取り入れることになります。インフルエンザ以外にもチメロサールが含まれるワクチンが一部にありますし、日本人は魚をよく食べる国民としてしっれていますから、魚介類から摂取される水銀も加わり、その蓄積が有害ではないかという懸念があるわけです。

 この「蓄積」以外にも、「チメロサールが自閉症の引き金になる」という主張があって、蓄積が慢性の毒性とすれば、こちらは急性あるいは亜急性の毒性に懸念を表しているということになります。

 これらの2点を踏まえて、チメロサールについてじっくりと考えてみたいと思います。

 ちなみに、「北研」では2003年から「s 北研」というチメロサールの含まれないインフルエンザワクチンも販売しています。それならこども診療所でも「s 北研」を使えばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、あとで述べますが、それぞれのワクチンにはメリットとデメリットがあります。それらを比較検討してこども診療所では今まで「北研」のほうを選んできました。そして今シーズンも「北研」を使用する方向で準備を進めています。なお、こども診療所では10月1日から予約受付を開始し、10月14日から接種を始めます。詳しくはこども診療所公式ホームページをご覧ください。
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2008年07月26日

箱庭療法って知ってますか?

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

でも今日は土曜日、おかしいじゃないかとお思いでしょうが、実は・・・。

hakoniwa_sympo.jpg 今週の月曜日、7月21日海の日の休日、九段会館で開催された河合隼雄先生追悼シンポジウム「河合隼雄と箱庭療法」に参加してきたのです。シンポジウムが開かれたのが月曜日だから、あながち間違いでもないのです。午後1時から6時半までの長丁場でした。

hakoniwa2.jpg 箱庭療法というのは英語ではSandplay Therapy(サンドプレイ・セラピー)といいます。このサンドプレイ・セラピーを「箱庭療法」と名付けて、日本に導入し広めていったのが河合隼雄先生だったのだそうです。河合先生は昨年7月に亡くなられ、一周忌にちなんでこのシンポジウムが企画されたそうです。

hakoniwa4.jpg 縦57cm×横72cm×高さ7cmくらい(きちんとした規格はない)の大きさ箱に砂を敷き、その上に人間や動物や植物や乗り物や建物など、様々なミニチュア(写真右)を自分で自由に配置していくものです。出来上がったものはちょうど箱庭のように見えます。

hakoniwa.jpg 箱庭を作っていく過程で、心の奥に閉ざされていたものが表現できるようになったり、セラピストと一緒に自分自身で製作過程を振り返ることで自分の心を観察できるようになったりという、遊びの要素が加わった心理療法の一つの手法とお考えください。

hakoniwa_mogi.jpg 私は特別この箱庭療法に関心が深いわけでもなく、日常の診療でも心理療法を取り入れているわけでもありませんが、なくなった河合隼雄先生とは20年ほど前に一度だけ「男女共同参画社会を目指して」というタイトルのシンポジウムでご一緒させていただいて壇上で並んだことがあるのと、NHKのテレビ番組などで人気の脳科学者、茂木健一郎がシンポジストとして出演するというので行ってみることにしたのです。

 この日のシンポジウムでは、シンポジストのおしゃべりだけでなく、数年間に渡って箱庭療法の治療を受けて、ようやく社会復帰を果たした重度の対人恐怖症の方の治療経過を示すスライド数十枚(実際に作った箱庭は数百に及ぶそうです)が提示され、治療過程で大きく変化する箱庭の様子を興味深く見ることができました。スライドは個人情報に属するため撮影禁止でした。

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 日本には昔から上の写真のような盆景(盆栽)という趣味の世界があり、その意味で箱庭療法も日本人には馴染みやすいものなのかもしれません。

scenery.jpg そういえば、ちょうど去年の今頃から3か月かけて完成させた「サンタランド鉄道」(鉄道模型のレイアウト・写真左)も一種の箱庭みたいなものですね。レイアウトのことをジオラマとも言いますが、箱庭療法で作ったものもジオラマと呼ぶことがあるそうです。私の作った「サンタランド鉄道」には、私のどんな心の風景が描かれているのでしょう?
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2008年07月05日

おとなの百日咳にご用心!!!

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 と、本来なら月曜日にお送りしていた医学講座ですが、気になる資料を入手しましたので、医学講座臨時増刊としてお送りします。

 気になる資料というのは百日咳に関する資料です。百日咳は乳児期にかかると窒息の危険も伴う恐い病気ですし、年長児になっても強い咳が長期間続くやっかいな病気です。三種混合ワクチン(DPT)で予防できますので、早期の予防接種をお勧めしています。

 毎週月曜日にお届けしている江戸川区の感染症情報でも、数は少ないものの時々百日咳の報告が見られます。全国的に見ると、今年は例年より百日咳の報告数が増えているそうです。 

pertusis_1.jpg 左の図1をご覧ください。2000年から今年(2008年)第20週までの、百日咳の罹患年齢のグラフです。一番上の水色の帯にご注目ください。この帯は20歳以上のおとなの方の百日咳の数(割合)を示しています。2000年にはわずか2.2%だったのに、2005年には10%を、2006年には20%を、2007年(去年)には30%を超えてしまいました。そしてついに今年は37.5%と全体の3分の1以上に増え、小学校入学前のすべてのこどもの百日咳を上回るようになってしまいました。

 このようにおとなの方の百日咳が増加した理由としては、ここ数年はしか(麻疹)の流行が問題になっているように、こどもの頃予防接種で獲得した免疫が消失してしまったことも一因として考えられますが、それよりも、正しく診断されずに放置され百日咳菌をばらまいてしまうおとなの方が増えているのではないかとも見られています。

 先程「乳児の百日咳は命に関わる」と申し上げましたが、おとなの百日咳はそれほど重症ではありません。ただ、その名の通り(とは言ってももののたとえですが)咳が百日も続くだけで日常生活に支障が出ない人が多いのです。それにおとなの方は内科にかかりますが、内科の医者は「百日咳はこどもの病気」と思っているものですから、ついついそれと気づかずに見逃してしまうのではないかとも言われています。

pertusis_2.jpg そしてその結果どういうことが起こっているかといいますと、左の図2をご覧ください。昨年公表された資料で、乳幼児の百日咳を誰がうつしたか(誰が感染源か)を示しています。

 これによりますと、父母からの感染が56%で半分以上、叔父叔母が10%、祖父母が6%、保育士さんなどが2%で、トータルすると74%、実に4分の3弱がおとなからの感染なのです。

 まだDPT(三種混合)を接種していない小さな赤ちゃんのいるご家庭では、2週間以上続く咳の方はたとえ症状が軽くても医療機関を受診し、百日咳の心配がないかどうかご相談ください。

 ただし、百日咳にはインフルエンザや溶連菌感染症のように、わずかな時間でほぼ確実に診断ができる検査キットもありませんし、その他の検査法も絶対確実というものがありません。しかし百日咳の治療としては「マクロライド系抗生物質」で百日咳菌の増殖を抑えることができますので、場合によっては確実に診断がつかない状態でもこのマクロライド系抗生物質を服用して赤ちゃんへの感染を防ぐようにしてください。
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2008年03月10日

溶連菌感染症

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 今週の「ヤブログ医学講座」は今江戸川区で流行中の溶連菌感染症についてです。溶連菌感染症の溶連菌というのは、血性鎖球の色文字部分だけを縮めた略称です。赤血球を破壊する(溶血)性質を持った丸い球状の細菌が鎖のように連なっているところから名付けられました。

 溶連菌感染症というのは、本来溶連菌によって人から人へ伝染していく感染症の総称でした。その中には猩紅熱、丹毒、伝染性膿痂疹、あるいは女性の外陰部の感染などがありますが、現在幼稚園・保育園や学校などで「溶連菌感染症」というときには、「猩紅熱」のことを指します。猩紅熱は平成10年までは法定伝染病でこれにかかると強制的に隔離病棟に入院させられていたのですが、猩紅熱が重大な感染症だったのは抗生物質が普及する前の時代のことで、昭和40年代に入ると、抗生物質(特にペニシリン系)を投与すればすぐによくなる「普通の風邪」程度の病気になってしまいました。

 ところが法定伝染病である以上、猩紅熱と診断したら医者は必ず保健所に届けなければいけないし、患者さんは隔離されなければなりません。そこで、なんとか保健所への届け出なしに治療をしようということで考え出されたのが、「猩紅熱」という言葉は使わないが病気のことをちゃんと表している「溶連菌感染症」という診断なのです。

 現在では猩紅熱は法定伝染病から外されていますから、猩紅熱という診断でもよいのですが、猩紅熱自体が昔ほど重症にならなくなってしまって、「猩紅」といえるお子さんがいなくなってしまったのです。ちなみに「猩紅熱」というのは顔やからだがニホンザル(々)の顔のようにマッカッカ(色)になるというところからつけられた病名です。

 ちなみに、というより全くの余談ですが、サルの学名をラテン語で表すとmacaca(マカーカです マッカッカではありません)となります。

 最初に申し上げたように、「溶連菌感染症」というのはいくつかの病気の総称なので、今一般的に「溶連菌感染症」と呼ばれている旧猩紅熱は、「A群溶血性連鎖球菌性咽頭炎」というのが正式呼称です。でもここまで普及してしまうと今さら「溶連菌感染症」に替わる言葉も難しいでしょうね。

 以上は溶連菌感染症という名前に関わるウンチクでした。では、病気そのもののお話に移りましょう。

 溶連菌感染症は溶連菌で起こる風邪です。インフルエンザウイルスで起こるからインフルエンザというのと変わりありません。溶連菌が感染者の咳やくしゃみで飛び散り、それを吸い込んで感染します(飛沫感染)。潜伏期は2〜5日です。典型的な例では38〜39度の発熱と共にのどや口の中が炎症をおこして真っ赤になります。その後、赤く細かいそしてたいてい痒い発疹が手足や体にでます(口のまわりにはできないのが特徴です)。舌はイチゴの様になり、唇があれます。嘔吐・腹痛・筋肉痛・関節痛などが見られることもあります。典型的な例ではこのように診察だけで診断可能な場合もありますが、のどを綿棒でこすってその中に溶連菌がいるかどうかを調べる迅速診断キットもあり、15〜20分で結果がわかります。

 診断がついたら抗生物質を服用します。抗生物質を服用すると2〜3日で熱が下がり、のどの痛みや発疹などの症状は消えます。まさに抗生物質を投与すればすぐによくなる「普通の風邪」程度の病気です。本当に普通の風邪だったら、あと2〜3日抗生物質を続けて、「ハイ、元気になってよかったね」でオシマイです。ところが、もし溶連菌がわずかでも残っていたりしますと、再発したり合併症を起こしたりしますので、さらに1週間から10日ほど抗生物質の服用を続けます。

 合併症はすぐに起こるわけではありませんし、全員に合併症が出るわけでもありませんが、一部のお子さんは発病から2〜3週間たった頃に急性腎炎やリウマチ熱、アレルギー性紫斑病などを起こすことがあります。特にリウマチ熱は心内膜炎という心臓の病気を起こしやすく、他の病気同様症状によっては長期の入院を必要とすることもありますし、その後も長期間の治療や経過観察が必要になります。これらの合併症を防ぐために、元気になったあとの抗生物質がとても重要になります。決してすぐによくなる「普通の風邪」程度の病気ではないのです。

 そこで、こども診療所では、治療を2段階に分けて説明しています。

第1段階(診断から約3日間):風邪としての治療
                +他のお子さんにうつさない治療
第2段階(約1週間)    :合併症を起こさないための治療

 そして、第2段階の治療が終わって約3〜4日後に、のどに溶連菌が残っていないかをもう一度チェックし(やらない医者が多い)、心臓の音を聴いて心雑音や不整脈がないことを確認し、尿を調べて腎臓にも問題が起きていないことを確認し、最終チェックを経て、それでやっと「めでたし、めでたし」としています。

 治療の第1段階では、園や学校をお休みしなければなりません。そしていつから登園・登校が可能かは地域や医者によって違いますが、江戸川区では「治療開始1日を過ぎ、全身状態がよくなるまで」はお休みという取り決めができています。

 治療の第2段階では最後まできっちりとおクスリを飲むことが重要で、それ以外の生活はまったく普通にしてかまいません。まったく健康な子がおクスリだけ飲んでいるように見えますが、合併症を防ぐとても大事な治療ですから、決して勝手に服薬をやめることのないようにして下さい。

 溶連菌感染症に関するご質問を募集していますこども診療所ホームページのQ&Aコーナーにご質問をお寄せ下さい。回答は一括して来週のこのページに掲載いたします。個々のご質問に対する回答はいたしませんのでご了承下さい。
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2008年03月03日

下痢と嘔吐と脱水と - シーズン 6 -

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 感染性胃腸炎のシリーズは先週で終わったはずなんですが、大事なことを一つお話しするのを忘れていました。そこで今週もシーズン6としてお送りします。

 感染性胃腸炎に限らず、生後5〜6か月以降1歳未満の赤ちゃん、つまり離乳食を食べている時期の赤ちゃんが下痢をしたり嘔吐をしたりすると、離乳食を一時やめて母乳かミルクだけにしましょうということはよくあります。そして病状が回復して、さあ離乳食を再開しましょうというときにどうするかというお話です。

 私は「離乳食を始めからもう一度復習してみましょう。」とお話しします。どんなものをどの程度あげたらいいのか迷う必要はありません。ホントにドロドロの離乳食初期の段階から再スタートすればいいのです。ただし、1日の離乳食の回数や食べる量は病気にかかる直前の回数と量でかまいません。もちろん無理強いはいけません

 復習とはいっても今までと同じペースでは時間がかかります。そこでペースに関しては「1日1か月のペースで進めちゃってください。もちろん体調を見ながらですよ。」と説明します。

 離乳食ですから1歳近い赤ちゃんでもせいぜい6か月分です。1週間もかからずに病気の直前の状態に戻すことができます。しかもついこないだまでやっていたことですから、お母さんもどんなものを食べさせたらよいのかがすぐ理解できます。

 この方法でやっていただくと、「離乳食を再開したらまた下痢になっちゃったんです」と来院される方はほとんどいません。

 今度こそホントにこのシリーズの終了です。なにせ「24」を意識してますからね。シーズン6までいかないと、なんとなく気持ちが落ち着かないんです。今年の秋以降はシーズン7までのシリーズが始まるかもしれません。
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2008年02月25日

下痢と嘔吐と脱水と -シーズン5-

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 冬の感染性胃腸炎シリーズ、いよいよ最終回です。今回は「情けの氷」「亭主の小遣い」という話です。いったい何のことかわからないって?読めばわかります。では、「情けの氷」から。

 ロタウイルス以外のウイルス性胃腸炎(感染性胃腸炎)に対しては絶飲食が一番効果的というお話の続きです。

 心を鬼にして絶飲食を貫いていただきたいのですが、吐いたり下痢したあとで水分を失っていますからお子さんは当然のどが渇きます。食欲はそれほどでもないケースが多いのですが、のどの渇きはどうしようもありません。それを徹底的に我慢させるというのは他人である医者はともかく、現場に居合わせる肉親の情としては耐え難いものがあるでしょう。

 そこで私はこうも付け加えます。「どうしてものどが渇いて仕方のないときには、お宅の冷蔵庫でおいしい氷を作ってあげて、そのひとかけらを噛まずに溶けるまで舐めさせてください。1個だけですよ。しかもホイホイあげちゃいけませんよ。味はジュースでもポカリでもこの子の好きなもの何でもいいです。氷のひとかけらが溶けたからって、水分としては物の数にも入りません。でも、溶けるまでに時間がかかるし、好きな味なのでなんとなく食べたような、飲んだような気がして時間が稼げるんです。」

 この氷を「情けの氷」と呼んでいます。

 さらに、「冷蔵庫でこの氷を作っている間は、どんなに欲しがっても他の飲み物は一切あげないでくださいね。」とも付け加えます。通常家庭用の冷蔵庫の製氷皿で氷を作ると、芯まで完璧に凍るまで約3〜4時間かかります。「3〜4時間我慢させてくださいね。」とお願いすると、親心から2時間ぐらいで飲ませてしまうことがあるのですが、「氷ができるまで」とお願いすると、不思議と現物が目の前に現れるまで待てるものなんですね。この3〜4時間が重要なんですね。この間、おなかは全く仕事をしないですむんです。おなかを完璧に休ませてあげることで回復が早まるのです。

 そして最後に、「おなかが病気になったと考えるのではなくて、おなかが病人なんだと考えてください。病人に仕事をしろとは言いませんよね。何もしなくていいからあんたは休んでらっしゃいって言うでしょ。病人であるおなかをいたわってあげてくださいね。」と言いつつお見送りをいたします。

 さて、親子ともにつらい断食を乗り越えて体調が回復してくると、食べ物・飲み物を再開することになります。再開の仕方は「お子さんが欲しいと言うまで。お母さんのほうから絶対にお勧めしないでください。また、欲しがっている量を満足するまであげないでください。いつも腹減った〜と文句を言うぐらいがちょうどいいと思ってください。」ということなのですが、このように説明してもピンと来ない方が多いのです。そこで登場するのが「亭主の小遣い」です。

 「ご主人に向かって『あなたそろそろお小遣いなくなるんじゃないの?』なんて奥さんのほうから訊きますか?ご主人が『5000円くれ』と言ったらその通りにあげますか?」こう質問すると。それまで「ド〜モよく理解できない」という表情をなさっていたお母さんの表情が「はい!わかりました」という表情に変わります。

 食事の再開は「亭主が小遣いをせびりに来たと考えてやってくださいね」と言いつつお見送りをいたします。

 感染性胃腸炎の対処法のシリーズはこれで終了致します。ご愛読ありがとうございました。


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2008年02月18日

下痢と嘔吐と脱水と −シーズン4−

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 前回のノロウイルスに続いて今回はロタウイルスによる感染性胃腸炎のお話です。

 ロタウイルスによる感染性胃腸炎は白色便性下痢症とも呼ばれるように、下痢便の色が白くなり、ひどいときには米のとぎ汁のようになるのが特徴です。日本ではほとんど冬の病気で、乳幼児冬季下痢症とも呼ばれます。下痢便の色に特徴があるので「下痢症」という名が付けられていますが、嘔吐もともない小さな赤ちゃんが罹ると脱水になりやすい病気です。

 感染力がとても強く、小児科の病棟などで一人でもロタウイルスの胃腸炎が発生すると、数日の内に病棟全体に広がってしまうことがあります。

 特効薬といわれるような治療法もありませんし、下痢や嘔吐を鎮めるクスリもほとんど効きません。1週間ぐらい症状が続いて自然に治ります。この1週間の間、どうやって脱水にならずに持ちこたえるかが治療の中心になります。「飲まない・食べない」が基本であることは今まで力説してきた通りなのですが、ロタウイルスに感染したお子さんは意外と食欲旺盛で、飲まない食べないを1週間も続けることは困難ですし、ノロウイルスと違って、飲まなくても食べなくても下痢・嘔吐が続くので、入院して点滴をしなければならないことも少なくありません。

 逆に、脱水にさえならなければ、1週間後には自然に治る病気なので、ロタウイルスの対処法は医者の間でも2通りに別れています。一つは基本に忠実に、飲み物・食べ物をギリギリのところまで制限して、下痢・嘔吐の回数を最小に抑え、脱水になるのを少しでも遅らせるようにしながら回復を待つという方法。もう一つは、飲まなくても食べなくても下痢・嘔吐は続くし、本人は食べたがってしょうがないのだから、好きなように飲み食いさせてしまおうという考え方。どちらも、それで脱水になったらしかたがないから点滴をしましょうという点では同じです。

 で、私はどちらの一味かというと、ロタウイルスだという診断がついたら、好きなように飲み食いさせてしまおうという一派です。「オイオイオイ、今まで言ってきたことと正反対じゃないか!?」と思われるかもしれませんが、今まで「下痢・嘔吐には断食を!」と申し上げたのは、それによって回復が早まるからです。事実ほとんどのウイルス性胃腸炎は断食によって回復が早くなります。でもロタウイルスは別です。

 どんなに我慢しても、どんなに自由にしても、治るまでの日数は変わりませんし、脱水になる危険性も変わらないのです。これは長年の私の経験です。しかも本人はものすごく食べ物・飲み物をほしがっているとなったら、我慢させるだけかわいそうだと思うのです。

 我慢するのは早く回復するというメリットがあるからで、我慢させても結果がちっとも変わらない(なんのメリットもない)のなら、我慢させるだけかわいそうだと思いませんか?

 ロタウイルスは、便さえお持ちになれば30分以内に結果がわかる簡単な検査キットがあり、診断は比較的容易です。ですからこども診療所では、ロタウイルスという診断がついたお子さんにはクスリも出さず、「好きなものを自由に飲み食いしていいですよ」と申し上げています。「ただし、それで脱水になっちゃったら点滴ですよ」とも付け加えます。そして毎日、あるいは1日おきに様子を見せていただくために来院していただきます。さいわいなことにこの方法で点滴しなければならなくなるお子さんはこども診療所では年に一人いるかいないかです。

 しかし、自由の飲み食いする方法がいいという医者は少数派です。ほとんどの医者は下痢止めや吐き気止めを処方して、「固形物はやめて水分だけを少しずつこまめに飲ませてください」と指導しています。そしてこの方法のほうが基本に忠実であることは私も認めています。でも、この方法に回復を早めるというメリットがあまりないのなら、自由に飲み食いできるほうがお子さんは楽ではないかと考えているのです。

 最後に繰り返しますが、自由飲食法はロタウイルスの場合だけです。他のウイルスによる胃腸炎に対しては、「心を鬼にして」断食させてください。
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2008年02月11日

下痢と嘔吐と脱水と -シーズン3-

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 このシリーズでは冬場の感染性胃腸炎の対処法についてお話ししていますが、今回と次回は中でも有名なノロウイルスロタウイルスを採り上げて、病気の特徴とそれに合わせた具体的な対処法をお話しいたします。

 今回はまずノロウイルスです。ノロウイルスという名前が有名になったのはこの10年ぐらいのことですが、ノロウイルスによる感染性胃腸炎はそれよりもずっと以前から毎年冬には流行していました。でもその頃はまだノロウイルスではなく小型球形ウイルスと呼ばれていましたので、一般の方にはなじみになりにくかったのだろうと思います。

 感染経路は、下痢便や吐物を介しての経口感染とくしゃみなどによる飛沫感染です。生の貝類による食中毒として発病することもあります。予防には便や吐物の処理を厳重にすることやうがい・手洗いが求められます。

 ノロウイルスに感染すると突然激しい嘔吐に見舞われます。数時間にわたって繰り返し嘔吐し、10回以上嘔吐することも珍しくありません。特徴的なのは、この数時間に及ぶ初期の嘔吐が収まったあとしばらく全く吐かなくなることです。

 診察したときの特徴は、胃や腸が動くときの「グルグル」という音が非常に弱くなる、あるいは全く聞こえなくなることです。つまり胃腸の動きが極端に悪くなっているのです。ですから飲んだものでも食べたものでも胃から先へ進めず、ちょっとしたきっかけで吐いてしまうのです。この特徴は一旦吐き気が収まったときにも続いています。

 ところが何回も吐き続けたお子さんはのどが渇いたりおなかがすいていたりしますから、吐き気が収まると飲み物・食べ物をほしがります。お母さんのほうも水分補給・栄養補給が気になりますからついつい飲み物・食べ物を与えてしまいます。でも胃腸のほうは相変わらず動いていないわけですから、また吐き出してしまいます。こうなってしまうと治療はちょっと長引きます。

 ノロウイルス退治の要は、一旦吐き気が収まっても、お子さんがどんなに飲み物・食べ物をほしがっても、心を鬼にして絶飲食を貫くことなのです。この辺はナッツままさんのコメントでネタバレしちゃってますけど、吐き気が収まったあと1回ぐらいは飲んでも吐かないんです。それは吐いたあとの隙間に飲み物が入っただけで、さらに飲めば再び吐いてしまうんですね。胃腸が動いていないのですから当然です。

 クスリを使って胃腸をムリヤリ動かすことは可能です。でもクスリの効き目が切れたとき、胃腸が本来の動きを取り戻していなかったら、飲食をすることでまた吐いてしまいます。人間のからだは胃の中が空っぽになると「次を入れてくれ〜」と勝手に動き出すようにできているのです。ものすごくおなかがすいたときに胃のあたりで「グググ〜」という音がして恥ずかしい思いをした経験はどなたもがお持ちのはずです。これを待つのが絶対確実なのです。

 でも、胃腸がなかなか動かなかったらどうするの?と思われるかもしれません。でも、ノロウイルスによる胃腸炎の場合には、1日我慢すれば胃腸はほとんど元通りに動くようになるのです。名前は「ノロ」でも治るのは「ハヤイ」のです。

 ですからこども診療所では、ノロウイルスがかなり確実に疑われるお子さんにはクスリは一切出していません。ただし、診察にいらしったときにまだ吐き気が強い場合は別です。吐き気止めの坐薬などを差し上げて一時的には吐き気を止めるようにします。でも、絶飲食だけは守っていただくようにしています。

 これは、お母さんにとってはホントに「心を鬼に」しなければできないつらいことです。ですからちょっとだけ救いの手をさしのべます。「どうしても我慢ができないときには、角砂糖1個か2個分の氷のかけらをなめさせてあげてください。かんではいけません。この程度の氷が溶けても水としてはたいした量ではありませんが、溶けるまでお口の中に何かが入っていることでなんとなく心が和らぐんです。でも、いつでもホイホイあげないでください。どうしても我慢ができなくなったら、ということですよ。」

 さらに、「この氷は、お宅の製氷皿にジュースやイオン水などを入れて凍らせたおいしい氷でいいですよ。でもこの氷ができるまではホントに何もあげないでくださいね。」

 そして、診察が終わってこう申し上げます。「おなかが病気なのではなくて、おなかが病人だと思ってください。病気の人に仕事をしろとは言いませんよね。おなかにものを入れるということは病人にムリヤリ仕事をさせるようなものなんです。おなかをいたわってあげてくださいね。」
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2008年02月04日

下痢と嘔吐と脱水と - シーズン2 -

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 前回は、下痢・嘔吐が続いているときには、水分を飲ませることによってむしろ脱水を助長しかねないというお話をいたしました。そして、飲ませなければ、脱水になるまでに時間をかせげると申し上げました。でも、ずっと飲まないでいたらいつかは脱水になってしまいます。そこで今回は、もう少し積極的に脱水を予防する手だてについて考えてみましょう。

 ただし、下痢・嘔吐が始まった初日には「飲まない・食べない」が最良だと思ってください。脱水予防は2日目から考えてください。

 その前に、前回冬の胃腸風邪には色々な病名があると申し上げました。それぞれ病気の特徴や原因をもとに名付けられたものなのでそれなりに理由はあるのですが、保育園や幼稚園、学校などに提出する治癒証明書の病名の欄に様々な病名が入り乱れていてわかりにくいという声が挙がり、江戸川区医師会ではこの冬から病名を「感染性胃腸炎」で統一しようということになりました。英語圏の国ではInfectious Enterocolitis(まさに感染性胃腸炎という意味)という呼び名でほぼ統一されていますので、まあ妥当な病名だと言えるでしょう。

 さてそれでは本題に入りましょう。

 「下痢や嘔吐があるときには水分を補給する」。これはまったく正しい。ただ、皆さんが接する情報にはたいてい「下痢や嘔吐があるときには水分を十分補給する」と書いてありませんか?この「十分」がくせ者なんです。この言葉に惑わされて皆さんついつい飲ませすぎになってしまうんですね。もちろん飲んでも吐いたり下痢したりしなければ十分に越したことはないのですが、感染性胃腸炎のときには飲めば飲むほど吐いたり下痢したりということになりがちです。それに食欲もなくて飲ませたいのに飲みたがらないということもあります。そこで私は「下痢や嘔吐があるときには脱水にならない最低限の水分を補給する」と説明しています。

 では脱水にならない最低限の水分というのはどの程度のものなのでしょうか?

 体重10kgのお子さんが仮に下痢も嘔吐もない状態で、ひどく汗をかくこともないとします。その場合、このお子さんが脱水にならない最低限の水分というのは24時間(1日)で約400mlなんです。単純に考えれば、体重(kg)×40=1日の最低水分量(ml)ということです。これを一度に飲ませてしまったら吐いたりしてしまいます。1回に飲む量をなるべく少なくしてなるべく回数を多く飲ませるのがコツです。

 たとえば、「この子を脱水にしないために1日や2日は徹夜してもいい」と決心してくださるならば、1時間毎に17mlの水分を取れば24時間で400mlを達成できます。17mlといえばほんの一口たらーっ(汗)ですが、これがいいんですね。

 ま、これは極端な例なので、ここまでやらなくてもいいですが「1回に飲む量をなるべく少なくしてなるべく回数を多く飲ませる」ことを心がけてください。

 もちろんこの数字はからだから出て行く水分(下痢・嘔吐)が全くない場合の数字ですから、吐いたり下痢をして水分が失われたときはその分を上乗せしなければなりません。そのとき気をつけなくてはいけないのは、下痢便や吐物のすべてが水分ではないということです。大雑把になりますが、下痢便や吐物の約80%が水分だと考えて1日の水分量を計算しなおしてください。

 
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2008年01月28日

下痢と嘔吐と脱水と −シーズン1−

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 毎年冬になると「嘔吐下痢症」とか「冬季下痢症」とか「白色便性胃腸炎」とか「ウイルス性胃腸炎」とか「感染性胃腸炎」とか呼ばれる、ウイルス性のおなかに来るタイプの風邪(「胃腸風邪」という呼び方もあります)がはやります。

 嘔吐や下痢で来られたお子さんの診察が終わって、「風邪ですね」と申し上げると、「エーッ!がく〜(落胆した顔)だって咳も鼻汁も出てませんよ!?」とビックリされる方もおられます。でも、風邪は風邪なんです。のどが赤くなっているお子さんがほとんどですし、なによりも、これらの胃腸炎を起こすウイルスの中には、夏風邪の原因ウイルスとして有名なものもあるのです。

 アデノウイルスとかエコーウイルスとかコクサッキーウイルスとかは、三大夏風邪であるプール熱やヘルパンギーナや手足口病を引き起こすウイルスとして知られていますが、冬場の胃腸炎の原因にもなります。「胃腸風邪」という呼び方はなかなかいいアイディアだと思います。

 病名がたくさんあって、ウイルスの種類もたくさんあるので、特定のウイルスが特定の病名の風邪を起こすように思われるかもしれませんが、「風邪の原因になることもあるウイルスによって起こる下痢や嘔吐」という点ではみな共通なのです。そして、激しい下痢や嘔吐によって脱水になる恐れがあるという点でも共通しています。

 私が医者になりたての頃(30年以上前)、「こどもの下痢や嘔吐が長く続くと脱水状態になって、生命に危険が及ぶこともあるんだよ!」と一生懸命説明したのは医者のほうでした。最近では皆さんが脱水の知識を身につけられて、「下痢・嘔吐には水分補給」と医者が言う前に、「脱水の心配はありませんか?」とお訊きになる方が増えてきています。

これは医者としては喜ばしいわーい(嬉しい顔)ことなのですが、脱水を恐れるあまり「とにかくたくさん飲ませなきゃ・・・」と考えてしまう方もおられて、診察に来られると「飲ませるたびに吐いちゃうんです」とか「飲むとすぐ下痢しちゃうんです」と訴えるケースがけっこう見られます。
 
 そんなとき「じゃあ、飲まないときはどうなんですか?飲まなくても吐くんですか?飲まなくても下痢するんですか?」とお訊きすると、飲まなくても吐いたり下痢するというお答えも帰ってきますが、「飲まないときは吐いてません、下痢してません」というお答もけっこう帰ってきます。「だったら飲ませなきゃいいんですよ。」と申し上げると、「こいつホントに医者なんだろうか?脱水のこと知らないんじゃないだろうか?」と、「口には出さねど目が語る」という感じで見返されてしまいます。

 私はそういう冷たい視線には慣れていますから、少しもたじろがずに説明を始めます。「吐いたり下痢したら脱水にならないように水分を補給する。するとまた吐いたり下痢をしてしまう。また水分を補給しなきゃと飲ませる。また吐いたり下痢したりする。その気持ちはよくわかりますが、皆さん吐いたり下痢したときには飲んだ分だけが出て行くと思ってるでしょ。そうじゃないんです。吐いたり下痢したりすると胃液とか腸でせっかく吸収した水分とか、そのほかに電解質も一緒に出て行ってしまうんです。つまり1000円貯金して1万円おろしてるようなものなんです。これを繰り返してたら残高はドンドン少なくなっちゃいますよね。ところが、飲まなければ吐かない下痢しないというのは、貯金もしないし引出もしないということで残高はそのまま残ります。飲ませなければ、脱水になるまでに時間をかせげるということなんです。今おうちでやっていることは飲ませるから脱水になるということなんですね。」

 そして最後に、河島英伍の「酒と泪と男と女」の替え歌、るんるん「飲んで〜飲んで〜吐いても〜飲んで〜、吐いて〜吐き続けて脱水よ〜〜〜」るんるんと歌って説明を終わります。というのは嘘です。いくら何でも心配なさっている親御さんの前でそんな不謹慎なことはしません。でも、飲んだら吐く、飲んだら下痢をするというときには、皆さんにこの歌を思い出してほしいと思っているのは事実です。

 まだ当分冬場のウイルス性胃腸炎は続きそうです。そこで、皆さんの「下痢と嘔吐と脱水と」についての知識を交通整理するシリーズをお送りしたいと思います。大好評だった(?)「熱性けいれん」に続く話題の(全然話題になってないって)新シリーズです。
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2007年05月31日

MR2期のとまどい

 昨年予防接種法が改正になり、1歳から7歳6か月までにそれぞれ1回接種することになっていた麻疹(はしか)と風疹の接種法が、1歳から2歳の間に麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を使って1回(MR1期)、翌年4月に小学校に入学する子(現在年長さん)が4月1日から入学直前の3月31日までにやはりMRワクチンを使ってもう1回(MR2期)と変更になりました。

 そして今年の4月に小学校に入学したこどもさんにはほとんど突然MR2期の接種票が届けられたのです。しかし「はしかも風疹も1回やっているからいいや」と思われた方が多かったらしく、今年の新1年生でMR2期の予防接種を受け損ねたケースがかなりの数に上ってしまいました。

 で、今年はどうかといいますと、皆さんご存じの通りのはしか大流行で、接種票が送られてくるとすぐに「はしかになったら大変!」とばかりに医療機関に駆け込むケースが目立っています。接種票が届いた時期とはしか流行の時期がたまたま重なってしまったために、どうも、はしか流行からこどもたちを守るための緊急接種と勘違いされている方が多いようです。

 それでなくてもワクチンが足りないで四苦八苦している医療機関は困惑しています。

 以前の制度ですでにはしかの予防接種を受け、確実に免疫を獲得していれば、5歳や6歳で免疫が弱まることはありません。現在のはしか流行は以前の予防接種で乗り切れるはずです。ですからすでにはしかの予防接種を一度受けているこどもさんはワクチン不足が解消する頃まで接種を見合わせてくださるとありがたいのですが、一度受けた予防接種で免疫ができなかったというケースが100人に一人か二人は起こりえますので、MR2期の接種を受けに来たこどもさんに「お断り」とは言えず、MRワクチンの残りの本数を気にしながらせっせと注射に励んでいるこの頃の私です。
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