2008年07月05日

おとなの百日咳にご用心!!!

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 と、本来なら月曜日にお送りしていた医学講座ですが、気になる資料を入手しましたので、医学講座臨時増刊としてお送りします。

 気になる資料というのは百日咳に関する資料です。百日咳は乳児期にかかると窒息の危険も伴う恐い病気ですし、年長児になっても強い咳が長期間続くやっかいな病気です。三種混合ワクチン(DPT)で予防できますので、早期の予防接種をお勧めしています。

 毎週月曜日にお届けしている江戸川区の感染症情報でも、数は少ないものの時々百日咳の報告が見られます。全国的に見ると、今年は例年より百日咳の報告数が増えているそうです。 

pertusis_1.jpg 左の図1をご覧ください。2000年から今年(2008年)第20週までの、百日咳の罹患年齢のグラフです。一番上の水色の帯にご注目ください。この帯は20歳以上のおとなの方の百日咳の数(割合)を示しています。2000年にはわずか2.2%だったのに、2005年には10%を、2006年には20%を、2007年(去年)には30%を超えてしまいました。そしてついに今年は37.5%と全体の3分の1以上に増え、小学校入学前のすべてのこどもの百日咳を上回るようになってしまいました。

 このようにおとなの方の百日咳が増加した理由としては、ここ数年はしか(麻疹)の流行が問題になっているように、こどもの頃予防接種で獲得した免疫が消失してしまったことも一因として考えられますが、それよりも、正しく診断されずに放置され百日咳菌をばらまいてしまうおとなの方が増えているのではないかとも見られています。

 先程「乳児の百日咳は命に関わる」と申し上げましたが、おとなの百日咳はそれほど重症ではありません。ただ、その名の通り(とは言ってももののたとえですが)咳が百日も続くだけで日常生活に支障が出ない人が多いのです。それにおとなの方は内科にかかりますが、内科の医者は「百日咳はこどもの病気」と思っているものですから、ついついそれと気づかずに見逃してしまうのではないかとも言われています。

pertusis_2.jpg そしてその結果どういうことが起こっているかといいますと、左の図2をご覧ください。昨年公表された資料で、乳幼児の百日咳を誰がうつしたか(誰が感染源か)を示しています。

 これによりますと、父母からの感染が56%で半分以上、叔父叔母が10%、祖父母が6%、保育士さんなどが2%で、トータルすると74%、実に4分の3弱がおとなからの感染なのです。

 まだDPT(三種混合)を接種していない小さな赤ちゃんのいるご家庭では、2週間以上続く咳の方はたとえ症状が軽くても医療機関を受診し、百日咳の心配がないかどうかご相談ください。

 ただし、百日咳にはインフルエンザや溶連菌感染症のように、わずかな時間でほぼ確実に診断ができる検査キットもありませんし、その他の検査法も絶対確実というものがありません。しかし百日咳の治療としては「マクロライド系抗生物質」で百日咳菌の増殖を抑えることができますので、場合によっては確実に診断がつかない状態でもこのマクロライド系抗生物質を服用して赤ちゃんへの感染を防ぐようにしてください。
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2008年03月10日

溶連菌感染症

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 今週の「ヤブログ医学講座」は今江戸川区で流行中の溶連菌感染症についてです。溶連菌感染症の溶連菌というのは、血性鎖球の色文字部分だけを縮めた略称です。赤血球を破壊する(溶血)性質を持った丸い球状の細菌が鎖のように連なっているところから名付けられました。

 溶連菌感染症というのは、本来溶連菌によって人から人へ伝染していく感染症の総称でした。その中には猩紅熱、丹毒、伝染性膿痂疹、あるいは女性の外陰部の感染などがありますが、現在幼稚園・保育園や学校などで「溶連菌感染症」というときには、「猩紅熱」のことを指します。猩紅熱は平成10年までは法定伝染病でこれにかかると強制的に隔離病棟に入院させられていたのですが、猩紅熱が重大な感染症だったのは抗生物質が普及する前の時代のことで、昭和40年代に入ると、抗生物質(特にペニシリン系)を投与すればすぐによくなる「普通の風邪」程度の病気になってしまいました。

 ところが法定伝染病である以上、猩紅熱と診断したら医者は必ず保健所に届けなければいけないし、患者さんは隔離されなければなりません。そこで、なんとか保健所への届け出なしに治療をしようということで考え出されたのが、「猩紅熱」という言葉は使わないが病気のことをちゃんと表している「溶連菌感染症」という診断なのです。

 現在では猩紅熱は法定伝染病から外されていますから、猩紅熱という診断でもよいのですが、猩紅熱自体が昔ほど重症にならなくなってしまって、「猩紅」といえるお子さんがいなくなってしまったのです。ちなみに「猩紅熱」というのは顔やからだがニホンザル(々)の顔のようにマッカッカ(色)になるというところからつけられた病名です。

 ちなみに、というより全くの余談ですが、サルの学名をラテン語で表すとmacaca(マカーカです マッカッカではありません)となります。

 最初に申し上げたように、「溶連菌感染症」というのはいくつかの病気の総称なので、今一般的に「溶連菌感染症」と呼ばれている旧猩紅熱は、「A群溶血性連鎖球菌性咽頭炎」というのが正式呼称です。でもここまで普及してしまうと今さら「溶連菌感染症」に替わる言葉も難しいでしょうね。

 以上は溶連菌感染症という名前に関わるウンチクでした。では、病気そのもののお話に移りましょう。

 溶連菌感染症は溶連菌で起こる風邪です。インフルエンザウイルスで起こるからインフルエンザというのと変わりありません。溶連菌が感染者の咳やくしゃみで飛び散り、それを吸い込んで感染します(飛沫感染)。潜伏期は2〜5日です。典型的な例では38〜39度の発熱と共にのどや口の中が炎症をおこして真っ赤になります。その後、赤く細かいそしてたいてい痒い発疹が手足や体にでます(口のまわりにはできないのが特徴です)。舌はイチゴの様になり、唇があれます。嘔吐・腹痛・筋肉痛・関節痛などが見られることもあります。典型的な例ではこのように診察だけで診断可能な場合もありますが、のどを綿棒でこすってその中に溶連菌がいるかどうかを調べる迅速診断キットもあり、15〜20分で結果がわかります。

 診断がついたら抗生物質を服用します。抗生物質を服用すると2〜3日で熱が下がり、のどの痛みや発疹などの症状は消えます。まさに抗生物質を投与すればすぐによくなる「普通の風邪」程度の病気です。本当に普通の風邪だったら、あと2〜3日抗生物質を続けて、「ハイ、元気になってよかったね」でオシマイです。ところが、もし溶連菌がわずかでも残っていたりしますと、再発したり合併症を起こしたりしますので、さらに1週間から10日ほど抗生物質の服用を続けます。

 合併症はすぐに起こるわけではありませんし、全員に合併症が出るわけでもありませんが、一部のお子さんは発病から2〜3週間たった頃に急性腎炎やリウマチ熱、アレルギー性紫斑病などを起こすことがあります。特にリウマチ熱は心内膜炎という心臓の病気を起こしやすく、他の病気同様症状によっては長期の入院を必要とすることもありますし、その後も長期間の治療や経過観察が必要になります。これらの合併症を防ぐために、元気になったあとの抗生物質がとても重要になります。決してすぐによくなる「普通の風邪」程度の病気ではないのです。

 そこで、こども診療所では、治療を2段階に分けて説明しています。

第1段階(診断から約3日間):風邪としての治療
                +他のお子さんにうつさない治療
第2段階(約1週間)    :合併症を起こさないための治療

 そして、第2段階の治療が終わって約3〜4日後に、のどに溶連菌が残っていないかをもう一度チェックし(やらない医者が多い)、心臓の音を聴いて心雑音や不整脈がないことを確認し、尿を調べて腎臓にも問題が起きていないことを確認し、最終チェックを経て、それでやっと「めでたし、めでたし」としています。

 治療の第1段階では、園や学校をお休みしなければなりません。そしていつから登園・登校が可能かは地域や医者によって違いますが、江戸川区では「治療開始1日を過ぎ、全身状態がよくなるまで」はお休みという取り決めができています。

 治療の第2段階では最後まできっちりとおクスリを飲むことが重要で、それ以外の生活はまったく普通にしてかまいません。まったく健康な子がおクスリだけ飲んでいるように見えますが、合併症を防ぐとても大事な治療ですから、決して勝手に服薬をやめることのないようにして下さい。

 溶連菌感染症に関するご質問を募集していますこども診療所ホームページのQ&Aコーナーにご質問をお寄せ下さい。回答は一括して来週のこのページに掲載いたします。個々のご質問に対する回答はいたしませんのでご了承下さい。
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2008年03月03日

下痢と嘔吐と脱水と - シーズン 6 -

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 感染性胃腸炎のシリーズは先週で終わったはずなんですが、大事なことを一つお話しするのを忘れていました。そこで今週もシーズン6としてお送りします。

 感染性胃腸炎に限らず、生後5〜6か月以降1歳未満の赤ちゃん、つまり離乳食を食べている時期の赤ちゃんが下痢をしたり嘔吐をしたりすると、離乳食を一時やめて母乳かミルクだけにしましょうということはよくあります。そして病状が回復して、さあ離乳食を再開しましょうというときにどうするかというお話です。

 私は「離乳食を始めからもう一度復習してみましょう。」とお話しします。どんなものをどの程度あげたらいいのか迷う必要はありません。ホントにドロドロの離乳食初期の段階から再スタートすればいいのです。ただし、1日の離乳食の回数や食べる量は病気にかかる直前の回数と量でかまいません。もちろん無理強いはいけません

 復習とはいっても今までと同じペースでは時間がかかります。そこでペースに関しては「1日1か月のペースで進めちゃってください。もちろん体調を見ながらですよ。」と説明します。

 離乳食ですから1歳近い赤ちゃんでもせいぜい6か月分です。1週間もかからずに病気の直前の状態に戻すことができます。しかもついこないだまでやっていたことですから、お母さんもどんなものを食べさせたらよいのかがすぐ理解できます。

 この方法でやっていただくと、「離乳食を再開したらまた下痢になっちゃったんです」と来院される方はほとんどいません。

 今度こそホントにこのシリーズの終了です。なにせ「24」を意識してますからね。シーズン6までいかないと、なんとなく気持ちが落ち着かないんです。今年の秋以降はシーズン7までのシリーズが始まるかもしれません。
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2008年02月25日

下痢と嘔吐と脱水と -シーズン5-

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 冬の感染性胃腸炎シリーズ、いよいよ最終回です。今回は「情けの氷」「亭主の小遣い」という話です。いったい何のことかわからないって?読めばわかります。では、「情けの氷」から。

 ロタウイルス以外のウイルス性胃腸炎(感染性胃腸炎)に対しては絶飲食が一番効果的というお話の続きです。

 心を鬼にして絶飲食を貫いていただきたいのですが、吐いたり下痢したあとで水分を失っていますからお子さんは当然のどが渇きます。食欲はそれほどでもないケースが多いのですが、のどの渇きはどうしようもありません。それを徹底的に我慢させるというのは他人である医者はともかく、現場に居合わせる肉親の情としては耐え難いものがあるでしょう。

 そこで私はこうも付け加えます。「どうしてものどが渇いて仕方のないときには、お宅の冷蔵庫でおいしい氷を作ってあげて、そのひとかけらを噛まずに溶けるまで舐めさせてください。1個だけですよ。しかもホイホイあげちゃいけませんよ。味はジュースでもポカリでもこの子の好きなもの何でもいいです。氷のひとかけらが溶けたからって、水分としては物の数にも入りません。でも、溶けるまでに時間がかかるし、好きな味なのでなんとなく食べたような、飲んだような気がして時間が稼げるんです。」

 この氷を「情けの氷」と呼んでいます。

 さらに、「冷蔵庫でこの氷を作っている間は、どんなに欲しがっても他の飲み物は一切あげないでくださいね。」とも付け加えます。通常家庭用の冷蔵庫の製氷皿で氷を作ると、芯まで完璧に凍るまで約3〜4時間かかります。「3〜4時間我慢させてくださいね。」とお願いすると、親心から2時間ぐらいで飲ませてしまうことがあるのですが、「氷ができるまで」とお願いすると、不思議と現物が目の前に現れるまで待てるものなんですね。この3〜4時間が重要なんですね。この間、おなかは全く仕事をしないですむんです。おなかを完璧に休ませてあげることで回復が早まるのです。

 そして最後に、「おなかが病気になったと考えるのではなくて、おなかが病人なんだと考えてください。病人に仕事をしろとは言いませんよね。何もしなくていいからあんたは休んでらっしゃいって言うでしょ。病人であるおなかをいたわってあげてくださいね。」と言いつつお見送りをいたします。

 さて、親子ともにつらい断食を乗り越えて体調が回復してくると、食べ物・飲み物を再開することになります。再開の仕方は「お子さんが欲しいと言うまで。お母さんのほうから絶対にお勧めしないでください。また、欲しがっている量を満足するまであげないでください。いつも腹減った〜と文句を言うぐらいがちょうどいいと思ってください。」ということなのですが、このように説明してもピンと来ない方が多いのです。そこで登場するのが「亭主の小遣い」です。

 「ご主人に向かって『あなたそろそろお小遣いなくなるんじゃないの?』なんて奥さんのほうから訊きますか?ご主人が『5000円くれ』と言ったらその通りにあげますか?」こう質問すると。それまで「ド〜モよく理解できない」という表情をなさっていたお母さんの表情が「はい!わかりました」という表情に変わります。

 食事の再開は「亭主が小遣いをせびりに来たと考えてやってくださいね」と言いつつお見送りをいたします。

 感染性胃腸炎の対処法のシリーズはこれで終了致します。ご愛読ありがとうございました。


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2008年02月18日

下痢と嘔吐と脱水と −シーズン4−

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 前回のノロウイルスに続いて今回はロタウイルスによる感染性胃腸炎のお話です。

 ロタウイルスによる感染性胃腸炎は白色便性下痢症とも呼ばれるように、下痢便の色が白くなり、ひどいときには米のとぎ汁のようになるのが特徴です。日本ではほとんど冬の病気で、乳幼児冬季下痢症とも呼ばれます。下痢便の色に特徴があるので「下痢症」という名が付けられていますが、嘔吐もともない小さな赤ちゃんが罹ると脱水になりやすい病気です。

 感染力がとても強く、小児科の病棟などで一人でもロタウイルスの胃腸炎が発生すると、数日の内に病棟全体に広がってしまうことがあります。

 特効薬といわれるような治療法もありませんし、下痢や嘔吐を鎮めるクスリもほとんど効きません。1週間ぐらい症状が続いて自然に治ります。この1週間の間、どうやって脱水にならずに持ちこたえるかが治療の中心になります。「飲まない・食べない」が基本であることは今まで力説してきた通りなのですが、ロタウイルスに感染したお子さんは意外と食欲旺盛で、飲まない食べないを1週間も続けることは困難ですし、ノロウイルスと違って、飲まなくても食べなくても下痢・嘔吐が続くので、入院して点滴をしなければならないことも少なくありません。

 逆に、脱水にさえならなければ、1週間後には自然に治る病気なので、ロタウイルスの対処法は医者の間でも2通りに別れています。一つは基本に忠実に、飲み物・食べ物をギリギリのところまで制限して、下痢・嘔吐の回数を最小に抑え、脱水になるのを少しでも遅らせるようにしながら回復を待つという方法。もう一つは、飲まなくても食べなくても下痢・嘔吐は続くし、本人は食べたがってしょうがないのだから、好きなように飲み食いさせてしまおうという考え方。どちらも、それで脱水になったらしかたがないから点滴をしましょうという点では同じです。

 で、私はどちらの一味かというと、ロタウイルスだという診断がついたら、好きなように飲み食いさせてしまおうという一派です。「オイオイオイ、今まで言ってきたことと正反対じゃないか!?」と思われるかもしれませんが、今まで「下痢・嘔吐には断食を!」と申し上げたのは、それによって回復が早まるからです。事実ほとんどのウイルス性胃腸炎は断食によって回復が早くなります。でもロタウイルスは別です。

 どんなに我慢しても、どんなに自由にしても、治るまでの日数は変わりませんし、脱水になる危険性も変わらないのです。これは長年の私の経験です。しかも本人はものすごく食べ物・飲み物をほしがっているとなったら、我慢させるだけかわいそうだと思うのです。

 我慢するのは早く回復するというメリットがあるからで、我慢させても結果がちっとも変わらない(なんのメリットもない)のなら、我慢させるだけかわいそうだと思いませんか?

 ロタウイルスは、便さえお持ちになれば30分以内に結果がわかる簡単な検査キットがあり、診断は比較的容易です。ですからこども診療所では、ロタウイルスという診断がついたお子さんにはクスリも出さず、「好きなものを自由に飲み食いしていいですよ」と申し上げています。「ただし、それで脱水になっちゃったら点滴ですよ」とも付け加えます。そして毎日、あるいは1日おきに様子を見せていただくために来院していただきます。さいわいなことにこの方法で点滴しなければならなくなるお子さんはこども診療所では年に一人いるかいないかです。

 しかし、自由の飲み食いする方法がいいという医者は少数派です。ほとんどの医者は下痢止めや吐き気止めを処方して、「固形物はやめて水分だけを少しずつこまめに飲ませてください」と指導しています。そしてこの方法のほうが基本に忠実であることは私も認めています。でも、この方法に回復を早めるというメリットがあまりないのなら、自由に飲み食いできるほうがお子さんは楽ではないかと考えているのです。

 最後に繰り返しますが、自由飲食法はロタウイルスの場合だけです。他のウイルスによる胃腸炎に対しては、「心を鬼にして」断食させてください。
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2008年02月11日

下痢と嘔吐と脱水と -シーズン3-

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 このシリーズでは冬場の感染性胃腸炎の対処法についてお話ししていますが、今回と次回は中でも有名なノロウイルスロタウイルスを採り上げて、病気の特徴とそれに合わせた具体的な対処法をお話しいたします。

 今回はまずノロウイルスです。ノロウイルスという名前が有名になったのはこの10年ぐらいのことですが、ノロウイルスによる感染性胃腸炎はそれよりもずっと以前から毎年冬には流行していました。でもその頃はまだノロウイルスではなく小型球形ウイルスと呼ばれていましたので、一般の方にはなじみになりにくかったのだろうと思います。

 感染経路は、下痢便や吐物を介しての経口感染とくしゃみなどによる飛沫感染です。生の貝類による食中毒として発病することもあります。予防には便や吐物の処理を厳重にすることやうがい・手洗いが求められます。

 ノロウイルスに感染すると突然激しい嘔吐に見舞われます。数時間にわたって繰り返し嘔吐し、10回以上嘔吐することも珍しくありません。特徴的なのは、この数時間に及ぶ初期の嘔吐が収まったあとしばらく全く吐かなくなることです。

 診察したときの特徴は、胃や腸が動くときの「グルグル」という音が非常に弱くなる、あるいは全く聞こえなくなることです。つまり胃腸の動きが極端に悪くなっているのです。ですから飲んだものでも食べたものでも胃から先へ進めず、ちょっとしたきっかけで吐いてしまうのです。この特徴は一旦吐き気が収まったときにも続いています。

 ところが何回も吐き続けたお子さんはのどが渇いたりおなかがすいていたりしますから、吐き気が収まると飲み物・食べ物をほしがります。お母さんのほうも水分補給・栄養補給が気になりますからついつい飲み物・食べ物を与えてしまいます。でも胃腸のほうは相変わらず動いていないわけですから、また吐き出してしまいます。こうなってしまうと治療はちょっと長引きます。

 ノロウイルス退治の要は、一旦吐き気が収まっても、お子さんがどんなに飲み物・食べ物をほしがっても、心を鬼にして絶飲食を貫くことなのです。この辺はナッツままさんのコメントでネタバレしちゃってますけど、吐き気が収まったあと1回ぐらいは飲んでも吐かないんです。それは吐いたあとの隙間に飲み物が入っただけで、さらに飲めば再び吐いてしまうんですね。胃腸が動いていないのですから当然です。

 クスリを使って胃腸をムリヤリ動かすことは可能です。でもクスリの効き目が切れたとき、胃腸が本来の動きを取り戻していなかったら、飲食をすることでまた吐いてしまいます。人間のからだは胃の中が空っぽになると「次を入れてくれ〜」と勝手に動き出すようにできているのです。ものすごくおなかがすいたときに胃のあたりで「グググ〜」という音がして恥ずかしい思いをした経験はどなたもがお持ちのはずです。これを待つのが絶対確実なのです。

 でも、胃腸がなかなか動かなかったらどうするの?と思われるかもしれません。でも、ノロウイルスによる胃腸炎の場合には、1日我慢すれば胃腸はほとんど元通りに動くようになるのです。名前は「ノロ」でも治るのは「ハヤイ」のです。

 ですからこども診療所では、ノロウイルスがかなり確実に疑われるお子さんにはクスリは一切出していません。ただし、診察にいらしったときにまだ吐き気が強い場合は別です。吐き気止めの坐薬などを差し上げて一時的には吐き気を止めるようにします。でも、絶飲食だけは守っていただくようにしています。

 これは、お母さんにとってはホントに「心を鬼に」しなければできないつらいことです。ですからちょっとだけ救いの手をさしのべます。「どうしても我慢ができないときには、角砂糖1個か2個分の氷のかけらをなめさせてあげてください。かんではいけません。この程度の氷が溶けても水としてはたいした量ではありませんが、溶けるまでお口の中に何かが入っていることでなんとなく心が和らぐんです。でも、いつでもホイホイあげないでください。どうしても我慢ができなくなったら、ということですよ。」

 さらに、「この氷は、お宅の製氷皿にジュースやイオン水などを入れて凍らせたおいしい氷でいいですよ。でもこの氷ができるまではホントに何もあげないでくださいね。」

 そして、診察が終わってこう申し上げます。「おなかが病気なのではなくて、おなかが病人だと思ってください。病気の人に仕事をしろとは言いませんよね。おなかにものを入れるということは病人にムリヤリ仕事をさせるようなものなんです。おなかをいたわってあげてくださいね。」
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2008年02月04日

下痢と嘔吐と脱水と - シーズン2 -

clinic.jpg 月曜日は医学講座の日。なぜなら人間のからだを表す言葉には「月」(ニクヅキ)のつく漢字が多いから。

 前回は、下痢・嘔吐が続いているときには、水分を飲ませることによってむしろ脱水を助長しかねないというお話をいたしました。そして、飲ませなければ、脱水になるまでに時間をかせげると申し上げました。でも、ずっと飲まないでいたらいつかは脱水になってしまいます。そこで今回は、もう少し積極的に脱水を予防する手だてについて考えてみましょう。

 ただし、下痢・嘔吐が始まった初日には「飲まない・食べない」が最良だと思ってください。脱水予防は2日目から考えてください。

 その前に、前回冬の胃腸風邪には色々な病名があると申し上げました。それぞれ病気の特徴や原因をもとに名付けられたものなのでそれなりに理由はあるのですが、保育園や幼稚園、学校などに提出する治癒証明書の病名の欄に様々な病名が入り乱れていてわかりにくいという声が挙がり、江戸川区医師会ではこの冬から病名を「感染性胃腸炎」で統一しようということになりました。英語圏の国ではInfectious Enterocolitis(まさに感染性胃腸炎という意味)という呼び名でほぼ統一されていますので、まあ妥当な病名だと言えるでしょう。

 さてそれでは本題に入りましょう。

 「下痢や嘔吐があるときには水分を補給する」。これはまったく正しい。ただ、皆さんが接する情報にはたいてい「下痢や嘔吐があるときには水分を十分補給する」と書いてありませんか?この「十分」がくせ者なんです。この言葉に惑わされて皆さんついつい飲ませすぎになってしまうんですね。もちろん飲んでも吐いたり下痢したりしなければ十分に越したことはないのですが、感染性胃腸炎のときには飲めば飲むほど吐いたり下痢したりということになりがちです。それに食欲もなくて飲ませたいのに飲みたがらないということもあります。そこで私は「下痢や嘔吐があるときには脱水にならない最低限の水分を補給する」と説明しています。

 では脱水にならない最低限の水分というのはどの程度のものなのでしょうか?

 体重10kgのお子さんが仮に下痢も嘔吐もない状態で、ひどく汗をかくこともないとします。その場合、このお子さんが脱水にならない最低限の水分というのは24時間(1日)で約400mlなんです。単純に考えれば、体重(kg)×40=1日の最低水分量(ml)ということです。これを一度に飲ませてしまったら吐いたりしてしまいます。1回に飲む量をなるべく少なくしてなるべく回数を多く飲ませるのがコツです。

 たとえば、「この子を脱水にしないために1日や2日は徹夜してもいい」と決心してくださるならば、1時間毎に17mlの水分を取れば24時間で400mlを達成できます。17mlといえばほんの一口たらーっ(汗)ですが、これがいいんですね。

 ま、これは極端な例なので、ここまでやらなくてもいいですが「1回に飲む量をなるべく少なくしてなるべく回数を多く飲ませる」ことを心がけてください。

 もちろんこの数字はからだから出て行く水分(下痢・嘔吐)が全くない場合の数字ですから、吐いたり下痢をして水分が失われたときはその分を上乗せしなければなりません。そのとき気をつけなくてはいけないのは、下痢便や吐物のすべてが水分ではないということです。大雑把になりますが、下痢便や吐物の約80%が水分だと考えて1日の水分量を計算しなおしてください。

 
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2008年01月28日

下痢と嘔吐と脱水と −シーズン1−

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 毎年冬になると「嘔吐下痢症」とか「冬季下痢症」とか「白色便性胃腸炎」とか「ウイルス性胃腸炎」とか「感染性胃腸炎」とか呼ばれる、ウイルス性のおなかに来るタイプの風邪(「胃腸風邪」という呼び方もあります)がはやります。

 嘔吐や下痢で来られたお子さんの診察が終わって、「風邪ですね」と申し上げると、「エーッ!がく〜(落胆した顔)だって咳も鼻汁も出てませんよ!?」とビックリされる方もおられます。でも、風邪は風邪なんです。のどが赤くなっているお子さんがほとんどですし、なによりも、これらの胃腸炎を起こすウイルスの中には、夏風邪の原因ウイルスとして有名なものもあるのです。

 アデノウイルスとかエコーウイルスとかコクサッキーウイルスとかは、三大夏風邪であるプール熱やヘルパンギーナや手足口病を引き起こすウイルスとして知られていますが、冬場の胃腸炎の原因にもなります。「胃腸風邪」という呼び方はなかなかいいアイディアだと思います。

 病名がたくさんあって、ウイルスの種類もたくさんあるので、特定のウイルスが特定の病名の風邪を起こすように思われるかもしれませんが、「風邪の原因になることもあるウイルスによって起こる下痢や嘔吐」という点ではみな共通なのです。そして、激しい下痢や嘔吐によって脱水になる恐れがあるという点でも共通しています。

 私が医者になりたての頃(30年以上前)、「こどもの下痢や嘔吐が長く続くと脱水状態になって、生命に危険が及ぶこともあるんだよ!」と一生懸命説明したのは医者のほうでした。最近では皆さんが脱水の知識を身につけられて、「下痢・嘔吐には水分補給」と医者が言う前に、「脱水の心配はありませんか?」とお訊きになる方が増えてきています。

これは医者としては喜ばしいわーい(嬉しい顔)ことなのですが、脱水を恐れるあまり「とにかくたくさん飲ませなきゃ・・・」と考えてしまう方もおられて、診察に来られると「飲ませるたびに吐いちゃうんです」とか「飲むとすぐ下痢しちゃうんです」と訴えるケースがけっこう見られます。
 
 そんなとき「じゃあ、飲まないときはどうなんですか?飲まなくても吐くんですか?飲まなくても下痢するんですか?」とお訊きすると、飲まなくても吐いたり下痢するというお答えも帰ってきますが、「飲まないときは吐いてません、下痢してません」というお答もけっこう帰ってきます。「だったら飲ませなきゃいいんですよ。」と申し上げると、「こいつホントに医者なんだろうか?脱水のこと知らないんじゃないだろうか?」と、「口には出さねど目が語る」という感じで見返されてしまいます。

 私はそういう冷たい視線には慣れていますから、少しもたじろがずに説明を始めます。「吐いたり下痢したら脱水にならないように水分を補給する。するとまた吐いたり下痢をしてしまう。また水分を補給しなきゃと飲ませる。また吐いたり下痢したりする。その気持ちはよくわかりますが、皆さん吐いたり下痢したときには飲んだ分だけが出て行くと思ってるでしょ。そうじゃないんです。吐いたり下痢したりすると胃液とか腸でせっかく吸収した水分とか、そのほかに電解質も一緒に出て行ってしまうんです。つまり1000円貯金して1万円おろしてるようなものなんです。これを繰り返してたら残高はドンドン少なくなっちゃいますよね。ところが、飲まなければ吐かない下痢しないというのは、貯金もしないし引出もしないということで残高はそのまま残ります。飲ませなければ、脱水になるまでに時間をかせげるということなんです。今おうちでやっていることは飲ませるから脱水になるということなんですね。」

 そして最後に、河島英伍の「酒と泪と男と女」の替え歌、るんるん「飲んで〜飲んで〜吐いても〜飲んで〜、吐いて〜吐き続けて脱水よ〜〜〜」るんるんと歌って説明を終わります。というのは嘘です。いくら何でも心配なさっている親御さんの前でそんな不謹慎なことはしません。でも、飲んだら吐く、飲んだら下痢をするというときには、皆さんにこの歌を思い出してほしいと思っているのは事実です。

 まだ当分冬場のウイルス性胃腸炎は続きそうです。そこで、皆さんの「下痢と嘔吐と脱水と」についての知識を交通整理するシリーズをお送りしたいと思います。大好評だった(?)「熱性けいれん」に続く話題の(全然話題になってないって)新シリーズです。
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2007年05月31日

MR2期のとまどい

 昨年予防接種法が改正になり、1歳から7歳6か月までにそれぞれ1回接種することになっていた麻疹(はしか)と風疹の接種法が、1歳から2歳の間に麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を使って1回(MR1期)、翌年4月に小学校に入学する子(現在年長さん)が4月1日から入学直前の3月31日までにやはりMRワクチンを使ってもう1回(MR2期)と変更になりました。

 そして今年の4月に小学校に入学したこどもさんにはほとんど突然MR2期の接種票が届けられたのです。しかし「はしかも風疹も1回やっているからいいや」と思われた方が多かったらしく、今年の新1年生でMR2期の予防接種を受け損ねたケースがかなりの数に上ってしまいました。

 で、今年はどうかといいますと、皆さんご存じの通りのはしか大流行で、接種票が送られてくるとすぐに「はしかになったら大変!」とばかりに医療機関に駆け込むケースが目立っています。接種票が届いた時期とはしか流行の時期がたまたま重なってしまったために、どうも、はしか流行からこどもたちを守るための緊急接種と勘違いされている方が多いようです。

 それでなくてもワクチンが足りないで四苦八苦している医療機関は困惑しています。

 以前の制度ですでにはしかの予防接種を受け、確実に免疫を獲得していれば、5歳や6歳で免疫が弱まることはありません。現在のはしか流行は以前の予防接種で乗り切れるはずです。ですからすでにはしかの予防接種を一度受けているこどもさんはワクチン不足が解消する頃まで接種を見合わせてくださるとありがたいのですが、一度受けた予防接種で免疫ができなかったというケースが100人に一人か二人は起こりえますので、MR2期の接種を受けに来たこどもさんに「お断り」とは言えず、MRワクチンの残りの本数を気にしながらせっせと注射に励んでいるこの頃の私です。
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2007年05月25日

はしか(麻疹)流行の拡大を防ぐ

 関東地方から始まった今年のはしか(麻疹)の流行はついに全国規模に広がりそうな気配を見せてきています。それにはゴールデンウィークの民族大移動(旅行・帰省など)が大きく関与していた可能性があります。はしか発症直前の人が行った先ではしかウイルスをお土産代わりに置いてきたかもしれないからです。その時期に感染を受けた人たちは先週あたりから発症します。北海道・関西・西日本ではしかが流行し始めたのも先週あたりからです。

 このように遠く離れた場所にはしかウイルスが運ばれてしまうことは防ぎようがありませんが、一つの地域や集団(学校や職場)の中ではしか流行の拡大を防ぐ方法はあります。

 それは「一人でもはしか患者が発生したらすぐに対応策を始める」ということです。

 ある人がはしかと診断されたときにはすでに何人かの人にはしかをうつしています。ですから、この段階ではしかをうつされた人の発症を抑えることはできません。しかし、はしかがこれらの人たちから次の人たちに感染するのを防ぐことは可能です。

 それは最初にはしかと診断された人が発症するまでの約2週間の間に誰と接触したかを徹底的に調べることです。限られた空間と集団の中でならそれは可能です。そして接触した人にどんな些細なことでも体調の変化が現れたら、その集団への参加をやめてもらう(欠席や欠勤)ことです。そうすることによって、最初の患者と第一の発症の波の段階で流行を封じ込める作戦です。

 発症の波は最初の患者が発生してから10日から2週間後に現れます。次の波もやはり10,日から2週間後に現れますが、波の大きさは比べものにならないほど大きくなってしまい、いかに限られた集団といえども全員に対策を講じることが難しくなります。集団全体を集まらせないようにする(学校閉鎖や休校措置)しかありません。

 日本ではいまだに「はしかは誰もが一生に一度はかかる病気」と考える風潮が残っています。でも世界は違います。「はしかは撲滅すべき病気」として各国政府が懸命な取り組みを行っています。学校や職場などでは「一人でもはしか患者が発生したらすぐに対応策を始める」ということを是非実践していただきたいと思います。
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2007年05月24日

修飾麻疹

 はしか(麻疹)ワクチンの不足が深刻な状況になっていることは、このブログでもお伝えしていますし、マスコミの報道でも採り上げられるようになり、医療サイドでは「はしか(麻疹)にかかってもいないし、今までに一度も麻疹予防接種を受けていない人に優先的に予防接種をしよう」というスタンスに変わってきています。

 はしか(麻疹)にかかったこともなくまたはしか(麻疹)予防接種を一度も受けていない人のことを「未罹患・未接種者」と言います。このような人たちは血液中に抗体(免疫)が全くないわけですから、感染のリスクが一番高いと言えます。そのような人たちに優先的にワクチンを提供することは現在のようにワクチン需給が逼迫しているときには必要かもしれませんが、病気の予防や治療に優先順位をつけることは医者としては心痛むことです。

 しかしここでは現実を見据えることにしましょう。過去に一度だけ麻疹ワクチンを接種して(もちろん実際のはしかにはかかっていない)、10年、20年という長い年月が過ぎてしまった人たちはどうなるかということです。これらの人たち(既接種者)は予防接種の優先順位からは2番目ということになります。過去に実際にはしかにかかったことのある人たち(既罹患者)は3番目です。既罹患者は感染を受けても発病しないと考えられるからです。

 既接種者や既罹患者には発病予防に十分な抗体価があるということは、全国調査でわかっています。しかし今年の流行ではしかの発病者を調べた結果では、未罹患・未接種者が一番多いのは当然なのですが、既接種者の中からも未罹患・未接種者に近い数の患者が出ています。さすがに既罹患者(確実な人)からの発病はほとんどゼロです。

 既接種者の中には、発病予防に十分な抗体価を持っていない人もいるということを示しています。

 ところで、既接種者で発病予防に十分な抗体価を持っていない人がはしかにかかると、典型的なはしかの症状・経過をとる人と、あまり典型的ではない経過をとる人とに分かれます。あまり典型的でないはしかを修飾麻疹といいます。
 
 修飾麻疹は、上に述べた既接種者のようにはしかの免疫が発病予防には不十分な状態にある人にみられるもので、はしかに接触してから発病予防にガンマグロブリンを注射した人や、胎内でお母さんから受け取ったはしか免疫が薄れ始める生後4〜8ヶ月の赤ちゃんなどにみられます。一般的に典型的なはしかよりは軽症で済むことが多いのですが、合併症に関しては軽症になるとは限りません。修飾麻疹の一般的な経過を次に述べますが、普通のはしか(麻疹)の経過については5月9日掲載の記事「はしかってどんな病気?」をご参照ください。

 修飾麻疹では潜伏期間が約2〜3週間と長くなります。熱と風邪症状で発症しますが、熱は38℃以下のこともあり、鼻汁や痰の量も少なく、結膜炎がないこともあります。2〜3日後に一旦解熱しますが、その頃見られるはしか特有のコプリク斑という口の中のプツプツが見られないこともあります。一旦解熱後再び熱が上昇し発疹が出現しますが、この時期の発熱も39℃以下のことがあります。発疹はやや色あせた感じで、発疹が出ている期間がやや長く約1週間続きます。熱もその間下がらないことがあります。その後薄い色素沈着を残して回復します。普通のはしかの症状・経過を軽く、けれど長くしたと考えてもよいかもしれません。

 軽症で済むということは、かかってしまった方にとってはよいことなのですが、はしか流行の阻止という点では問題があります。軽症であるが故に「はしか(麻疹)」という診断を受けずに、普通の風邪(咽頭炎あるいは上気道炎)という診断を受けてしまって、本人ははしか(麻疹)と気づかずに登校したり出社してしまう人が出てしまうのです。症状は軽いけれど感染力は普通のはしかとほぼ同じですから、周囲の人にうつしてしまう危険性があるのです。

 学校や職場では、はしか(麻疹)患者が一人でも出たら、37.5℃以上の発熱がある人は必ず休む、場合によっては欠席(欠勤)扱いにしないというような取り決めをしていただけると流行の広がりを抑える上で大変有効ではないかと思います。
 
 
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2007年05月22日

はしか(麻疹)ワクチンの必要度

 関東地方に端を発した今年のはしか(麻疹)の流行は次第に全国的な広がりを見せ、西日本や北海道でも集団発生の事例が報告されるようになってきています。そしてワクチン(麻疹単独抗原ワクチン)不足もさらに深刻な状況に追い込まれつつあり、厚生労働省は全国の医療機関に対してワクチンの買い占めをしないよう昨日通達を出しました。

 ワクチン不足下での買い占め行為はインフルエンザワクチンで以前みられたことがありますが、私のような町医者のレベルでは買い占めどころか必要なワクチンを入手することがすでに難しくなっている(ほとんど不可能)というのが実情です。

 そこでやむなく麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種をお願いすることになるのですが、それとても接種希望者が殺到した場合には麻疹単独抗原ワクチン同様品不足になる心配があります。じゃあ今のうちに買い込んでおきなよと思うかもしれませんが、町医者レベルで高価なワクチンを何十人分も買い込んだら、支払いも大変ですが、もし使い切れなかったときのことの方がもっと心配です。生ワクチンは有効期限が1年もありませんから、需要を考えて購入しないと期限切れで廃棄という憂き目にあってしまうのです。

 それはともかく、昨晩江戸川区医師会で国立感染症情報センターの先生をお招きして、麻疹の流行状況と予防接種のあり方についてお話を伺いました。それによると、2歳以上の日本人ではしかの抗体(免疫)を持っていない人はわずか数%に過ぎないというのです。今集団発生が問題になっている10代後半から20代前半の世代でも同様で、抗体不十分は7〜8%に過ぎないそうです。40歳以上だと、予防接種を受けた人の率はとても低いのですが、実際にはしかにかかった人が多く、95%以上の人が十分な抗体価を示しているそうです。

 私は自分の経験から、麻疹ワクチン接種の効果は、途中でブースター(パワーアップ)がなければ10年程度と信じていましたので、本当かなと思って帰宅して感染症情報センターのホームページから、昨年行われた「麻疹抗体保有率全国調査」を見てみたらホントでした。とはいえ、日本人1億2千万人の仮に5%とすれば約600万人が感染するかもしれないわけで、感染予防の重要性が減るわけではありません。かといって、逆にMRワクチンを使ってですら600万人に予防接種をすることは不可能です。東京都だけに限っても約60万人が接種の対象になる計算ですから、それだけの数のワクチンはまず用意できないでしょう。

 そこでこども診療所では、ワクチン不足という状況の中で抗体のない人を優先的にと考え、40歳以上の方には接種をご遠慮いただく、15歳以上の方には必ず抗体検査を受けていただいて抗体マイナスの方だけ接種する、という方針に切り替えさせていただきました。それでも麻疹単独ワクチンがなくなればMRワクチンを接種していただくしかないのですが…。

 江戸川区では、区内の小・中学生については学校単位での予防接種を検討中なので、検討結果がはっきりするまでしばらく待っていただくことにしました。

 このように優先順位をつけることは医者としては心苦しいのですが、一度はしかにかかった人はまず感染しない、予防接種を少なくとも一度受けている人は感染しても軽症ですむ可能性がある、ということで、未罹患・未接種(かかってもいないし一度も予防接種を受けていない)の方を優先させていただくことにしたのです。
 
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2007年05月21日

はしか(麻疹)ワクチンが足りない!

 関東地方のはしか(麻疹)は流行が広がりつつあります。予防にはワクチンの接種がもっとも効果的なのですが、希望者が殺到してワクチンが不足してきました。

 こども診療所でも、すでに予約をいただいている方の分を除くとあと数名分しかなく、薬品会社に発注をかけてもいつ入荷するかわからないという返事です。

 麻疹単独ワクチンが入手できなくなった場合には、昨年春から使われるようになった麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を接種しても麻疹単独ワクチンと同様の効果を得ることができます。しかし、MRワクチンは医療機関での購入価格が、麻疹単独ワクチンと風疹単独ワクチンの両方を別個に購入するよりも高く、そのためほとんどの医療機関では麻疹単独ワクチンの2倍の料金で接種しているようです。

 予防接種料金は各医療機関が独自に定めることになっていますが、約1万円(税別)の料金設定のところが多いようです。こども診療所でも10,500円(税込)で接種しています。

 ワクチンは製造ロット毎に必ず国の検定を受けなければ出荷できないようになっているため、製薬会社がフル稼働してワクチンを製造してもすぐに市場に出回るわけではありません。感染の危険が緊急にある方はMRワクチンの接種をしていただくしかないのですが、値段のことを考えると、医療サイドから是非とは言えないところがあります。
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2007年05月20日

ガレノスの名誉回復

 血液循環説では、ガレノスは誤った考えを持っていたとお話ししてしまいましたが、だからといって彼がいい加減なイカサマ野郎だったというわけではありません。古代ギリシャという古い時代ではありましたが、ガレノスは人間の体とその体の各器官の働きを系統立てて、しかもお互いの関連もきちんと整理して、体系化された生理学を完成させたのです。今でもガレノスは「生理学の祖」と呼ばれてその功績をたたえられています。
 ガレノスの名誉のために付け加えておきます。
 ちなみに「医学の祖」と呼ばれているのは、やはり古代ギリシャのヒポクラテスです。西洋文明の多くは古代ギリシャにその起源を持っているのです。
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2007年05月19日

それでも血液は循環している!

 5月15日に高校3年生の時に作ったHOゲージの「血液循環レイアウト」を紹介しましたが、その後私は小児科の医者になり、循環器を専門に研究するグループに属するようになったのです。小児循環器専門医になったのは偶然で「血液循環レイアウト」とは全く無関係です。

 今日は、循環器専門医として、血液の循環についてウンチクを傾けてみようと思います。
 
 血液が体の中を循環しているなんてことは今どきの小学生でもわかっていることかもしれません。中学校の理科では血液の循環ということをきちんと教えることになっていますから、15歳以上の日本人は少なくとも「血液が全身を循環している」ということを知っているはずです。

 循環というのは、バスによく「○○循環」というのがあるように、出発点を出て行ったものが再び元の位置に戻ってくることをいいます。でも、17世紀の初頭まで、血液が循環しているということは誰も考えてはいなかったのです。

心臓や腎臓、神経など人間の体の中にあるいろいろな器官の働きを研究する学問を生理学といいますが、16世紀までの生理学はなんと古代ギリシャのガレノスという人が打ち立てた理論が最大唯一の権威で、ガレノスの生理学によれば血液は肝臓で作られ、酸素は通気系という血管によって運ばれ、吸収された栄養は栄養配分系という通気系とは全く独立した別の血管によって運ばれ、血液は体の隅々で消費されてしまうとされていました。

ronbun それに対してロンドン王立医科大学解剖学教授のウィリアム・ハーヴェイは、人間の体を流れる大量の血液が肝臓だけで作られているはずはないと睨み、血液が流れる血管の系統は一つしかなく、しかも血液は循環しているのではないだろうかという仮説を立て、もしその仮説が正しければ血液の流れは一方通行であるはずだとして、腕の血管の各所を縛っては解くという実験を繰り返し、ついに1628年「動物における心臓と血液の動態に関する解剖学的試論」という論文(写真)で「血液循環説」を発表したのです。論文はラテン語で書かれていて、一番下の「ANNO M. DC. XXVIII.」というのが1628年という意味です。

この説は、あの偉大なガレノスの説を真っ向から否定するもので、ハーヴェイは、天動説に対して地動説を唱えたガリレオ・ガリレイみたいな非難を浴びたということです。ハーヴェイはそれらの非難や反論に対する再反論の論文を1649年に発表し、その中で「それでも血液は循環している」と言ったとか言わないとか。ま、これは冗談ですが、その後ハーヴェイの血液循環説は多くの人々によって証明され、現在に至っているのです。

余談になりますが、私の循環器病学のお師匠さんが医学部の学生の試験に「血液循環の経路を述べよ」という問題を出し、私に採点を命じました。お師匠さんは私が丸を付けた解答の半分以上をペケにして、再採点を命じました。そのときにおっしゃった言葉は「これらの解答では血液が出発点に戻ってきていない。つまり循環していないのだよ。」でした。5月15日のイラストを見てみましょう。

circulation.jpgたとえば、左心室から出発した血液は大動脈・全身・大静脈・右心房・右心室・肺動脈・肺・肺静脈・左心房を経て左心室まで戻ると書かなければ循環にならないのです。私が丸をつけた間違い解答はすべて、その一歩手前の左心房までしか書いてありませんでした。そこまで来てるんだからいいじゃないかと思ってしまいますが、学問に対して常に謙虚で厳しいお師匠さんでした。
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2007年05月17日

はしかにご用心!(4)−40歳以上は安心?−

 昨晩江戸川区小児科医会の講演会があり、区内の小児科医十数名が一堂に会しました。講演のテーマは喘息の治療薬についてでしたが、講演のあとの懇親会では喘息の話はほとんど出ず、もっぱらはしかの話題で持ちきりでした。

 その中で、大人の方の予防接種は何歳ぐらいまでやるべきか、逆に言うと、何歳以上の方は予防接種をしなくてもはしかにかからないかという話が出ました。

 昔はこどものうちに誰もがかかる病気の代表としてはしかをとらえていましたから、初恋の悩みなど成長の中で誰もが経験する出来事を「はしかにかかったようなものだよ」などと言っていました。事実私が小児科医になった30年ほど前からしばらくは、4〜6年に一度はしかの流行が見られていました。はしかの予防接種が今ほど普及していなかったからです。

 ほとんどの人が実際のはしかにかかってしまうか、あるいは予防接種をしていて発病はしないけれど、はしかウイルスに出会って免疫がパワーアップされる(ブースター効果)チャンスがあったということです。

 はしかワクチンの効果(免疫)は時間とともにだんだん弱まってしまいます。しかしホンモノのはしかウイルスに出会うことによってブースター効果が生まれパワーアップが行われる、これを繰り返すことによって一生免疫が続くとされてきました。4〜6年に一度のはしか流行はこのブースター効果をもたらしていたわけです。

 ところがはしかの予防接種が普及するにつれて、はしかの流行はだんだん見られなくなってしまいました。小さい頃にはしかの予防接種を受けたけれどブースター効果が得られないまま大人になってしまった人たちが今はしかにかかっているのです。大学生のような若い人たちはまさにそれを物語っています。

 それで、はしかの流行を経験して、ブースター効果によって確固たる免疫を持っている世代は何歳ぐらいかということが話題になったのです。

 確かな根拠はありませんが、昨晩の結論では「40歳以上なら大丈夫だろう」ということになりました。100%の保証はできませんが、私の経験からも現在40歳以上の方々は何回かのはしか流行に出会っているはずです。その中で一度も発病せずに乗り越えてきたということは、しっかりした免疫を持っていたからだと言えますし、その都度ブースター効果によって免疫のパワーアップが行われ終生免疫(一生かからない)を獲得しているとも言えるのです。

 でも、40歳以上でもはしかウイルスに出会っていない方もおられると思います。心配な方はどうぞ予防接種を受けてください。
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2007年05月16日

はしかにご用心!(3)ー はしかの予防接種 ー

 日本大学・上智大学・創価大学などで大学全体の閉鎖が行われるなど、関東地方のはしか流行は深刻さと緊急性を増してきました。

 はしかの予防には予防接種が一番! では、どのような人がどのように接種を受ければいいのでしょうか?

 予防接種の目安をこども診療所のホームページに掲載しました。

 http://mizuechan.net/からサイトに入り、トップページの右側にある更新情報の中から「はしか(麻疹)予防接種の目安」をクリックするか、トップページの最上段にある木の立て札の「トピックス」をクリックすると、記事にアクセスします。

 生まれたばかりの赤ちゃんから大人の方まで各年齢毎に説明してありますので参考になると思います。是非アクセスしてみてください。
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2007年05月11日

はしかにご用心!(2)−ついに江戸川区で学校閉鎖−

 医師会からの依頼で昼休みに或る区立小学校でのはしか(麻疹)の臨時予防接種に行ってきました。この学校では5月1日に最初のはしか患児が発生し、今日までの10日間に約10人の児童がはしかと診断されたそうです。事態を重く見た江戸川保健所は今まで一度もはしかの予防接種を受けていない児童16名に急遽予防接種をすることにしたのです。この小学校の校医は私ではないのですが、医師会の仕事が入っていて都合がつかないということで、私がピンチヒッターで行ったわけです。
 帰りに校長先生が玄関まで送ってきてくれたので、別れ際に「このペースだともう学校が成り立たないでしょうね」と半分冗談を言って帰ってきました。
 ところが夕方になって、私が校医をやっている小学校の養護の先生から電話がかかってきて、昼休みに私が行った小学校が学校閉鎖になったというメールが来たが本校ではどのような対策を講じたらよいかという相談でした。校長先生に言った冗談が本当になってしまったわけです。
 インフルエンザの流行期に学級閉鎖が行われるのはよく聞くと思いますが、学校閉鎖というのは重大事件です。インフルエンザでは一つのクラスで10人欠席してもその学級が閉鎖されるだけです。学校全体が閉鎖されることはありません。では、この小学校では学校全体で10人ちょっとがはしかになっただけでなぜ学校全体が閉鎖されたのでしょうか?
 はしかはうつされてから約10日間の潜伏期があることと、最初の発熱から2〜3日たたないと診断が難しいという特徴があります。つまり大雑把に言うとはしかをうつされてから診断がつくまでに約2週間かかるということです。5月1日にはしかと診断された児童は4月18日頃はしかに感染したと推測されます。最初の発熱は多分4月28日頃ですが、その2〜3日前から他の人にうつすようになりますから、4月25・26・27の3日間は本人は元気で登校し、クラスの他の児童にはしかをうつした可能性があるのです。本人の責任ではありません。この時期はまだ潜伏期ですから病気の兆候は全くないのです。登校するのは当然です。そして28日から始まる3連休の間に発病します。
 一方、3連休前にはしかをうつされた児童たちは5月5日頃から次々と発熱します。5月3日からは4連休ですが、5月1日と2日にはすでに誰かにうつす時期に入っていた可能性が高いのです。この2日間にはしかをうつされた児童たちは5月10日頃から発熱期に入ります。ですから昨日・今日と発熱する児童が増えていれば、はしかの感染が拡大しているということになり、この児童たちがゴールデンウィーク明けにすでに人にうつる時期に入っているとなれば、感染はさらに拡大します。この連鎖反応をどこかで断ち切らなければ学校中にはしかが蔓延することになります。
 どこで断ち切るかは、ゴールデンウィーク明けの5月7・8・9・10・11日にうつされた児童たちが発病前の感染期に入る5月14日から18日ぐらいまでは誰も学校に来させないという処置が必要になります。
 インフルエンザと違って潜伏期の長いはしかは感染の拡大防止にも大なたを振るわなくてはならないのです。
タグ:はしか 麻疹
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2007年05月09日

はしかってどんな病気?

 はしか(麻疹)はウイルスによって人から人へとうつる感染症です。感染の仕方は空気感染(飛沫感染)で、はしかにかかっている人のセキ・ハナ・痰・唾液などが近くの人に飛び移って感染します。日本では年間20万人近くの人がはしかにかかり、20人から40人が亡くなっています。
 長く続く高熱や強いセキ・ハナ、結膜炎など、はしか固有の症状だけでもとてもつらい重症の感染症ですが、肺炎や脳炎など生命に関わる合併症を起こしやすい病気でもあり、はしかの流行はなんとしても防がなければならない重大問題です。

 典型的なはしかは次のように進行します。
 はしかにかかっている人と接触してウイルスの感染を受けると、8〜12日の潜伏期のあとに、38〜39℃の熱と痰のからむ強いセキ、沢山の鼻汁、結膜炎にともなう目ヤニなどで発症します。これらはいわゆる風邪症状なので、この時点ではしかと診断することはほとんど不可能ですが、2・3日後にほっぺの裏側や歯ぐきに「コプリク斑」というはしか特有の細かいプツプツが現れ診断可能になります。
 コプリク斑が現れた約2日後に一旦熱が37〜38℃に下がり、半日から1日後に再び上昇します。これもはしかに特徴的で、二度目の熱は一度目より高く39.5℃以上になります。二度目の熱とほぼ同時に顔や首から鮮紅色の発疹が現れ、3・4日かかってだんだん全身に広がります。この間は39.5度以上の高熱が続きます。
 発疹が全身に広がると今度は、現れたときと同じ順序で発疹が消え始めます。色合いもだんだん暗赤色に変わってきます。熱もだんだん下がってきます。合併症がなければこのまま回復に向かいます。
 完全に解熱したあとも発疹の跡が茶色になって残ります(色素沈着)が、1〜2週間で自然に消えていきます。

 インフルエンザに対するタミフルやリレンザのような特効薬がないため、治療はセキ・ハナを鎮めるクスリ、粘膜の炎症を抑えるクスリ、抗生物質(二次感染の予防・はしかウイルスには無効)、点眼薬などのいわゆる対症療法が中心になります。
 診断がついてすぐに症状を和らげる目的でガンマグロブリンという免疫物質を筋肉注射することもありますが、1歳前後の子で2〜3ml、6・7歳で4〜6ml、大人ですと約10mlもの大量を注射しなければなりません。もともととても痛い上に量が多いので、2・3か所に分けて注射しますが、注射されるほうも注射するほうもとてもつらい治療法です。
 静脈注射用のガンマグロブリンもあり、これは針を刺すときだけの痛みですみますが、健康保険が使えないので、量にもよりますが、2万円から6万円ぐらいの負担になるでしょう。
タグ:はしか 麻疹
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2007年05月08日

はしかにご用心!

 マスコミの報道やテレビのワイドショウなどで話題になっているように大人のはしかが流行の兆しを見せています。厚生労働省からは麻疹(はしか)の流行に警戒するようお達しが出ていて、私の地元の江戸川保健所からも麻疹と診断したらすぐにファックスで知らせるようにと連絡票のひな形が送られてきました。

 江戸川区では4月中に29人がはしかと診断された(保健所からの情報)そうですが、そのうちの77%は16歳以上の大人です。また、29人中はしかの予防接種を受けていなかった人は38%、受けたかどうかわからない人が45%です。予防接種を受けたにもかかわらずはしかにかかってしまった人は14%で、さすがに数は少ないのですが、それでもはしかの予防接種で得られた免疫は一生続かないことを物語っています。

 はしかは今でも日本全国で年間数十人が死亡するという重症化しやすい感染症です。年間患者数は20万人近いそうです。診断がついてすぐに症状を和らげる目的でガンマグロブリンという免疫物質を筋肉注射することもありますが、1歳前後の子で2〜3ml、6・7歳で4〜6ml、大人ですと約10mlもの大量を注射しなければなりません。もともととても痛い上に量が多いので、2・3か所に分けて注射しますが、注射されるほうも注射するほうもとてもつらい治療法です。静脈注射用のガンマグロブリンもあり、これは針を刺すときだけの痛みですみますが、健康保険が使えないので、量にもよりますが、2万円から6万円ぐらいの負担になるでしょう。

 こども診療所では、今年はまだ一人もはしかの患者さんは出ていませんが、何年か前に小学校高学年と中学生の何人かがはしかと診断されました。はしかの予防接種は1歳過ぎに行いますので、免疫が10年ぐらいすると消えてしまうものと考えられます。

 それを受けて今年小学校に入学した新一年生からははしかの予防接種を2回受けることになりましたが、それ以上の年齢の子(特に小学校高学年以上)や大人は、自主的に予防接種を受けることを考えた方が良さそうです。

 予防接種の料金はそれぞれの医療機関が独自に決めることになっていますが、4000円から5000円ぐらいでやっているところが多いようです。こども診療所は5250円(税込)でやっています。

 ただ、ホンモノのはしかにかかってできた免疫は一生続きますので、そういう人は予防接種を受けなくていいのですが、江戸川区では29人中一人だけ以前はしかにかかったはず(確かではない)なのにまたかかってしまった人がいます。確実にかかったと言えない人は予防接種を考えるべきでしょう。一度はしかにかかった人が予防接種を受けても特別副反応が出やすいということはありません。それでも心配だという人は血液検査で免疫の有無を確かめることもできます。免疫がなければ予防接種を受けたほうがいいでしょう。
タグ:はしか 麻疹
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